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劣勢。

飛来する瓦礫を防ぎながら何度か岩の魔物に近付こうとするが、あまりに激しく瓦礫が飛んでくる為に距離を詰めるのを諦めるしかなかった。


その場から少しずつ後ろに下がり、距離を開けて様子を見る。


「にゃろっ……! でも、周りの魔物の死骸やら瓦礫を集めて、何をしているんだ……?」


瓦礫が掠め、切れた頬から流れる血を指で拭い、観察をしていると、魔物の死骸の一つが岩の魔物のいた辺りに溶け込むように消え去った。その死骸が消え去るのと同時に岩の魔物の体が少し大きくなる。


消したと言うより、周りの死骸や瓦礫を取り込んでいる……?


「……やっべ、そういうことかよ……! アイツ周りのもんを吸収してやがる!」


それを見てから駆け出したが、続いて鳥形の魔物の死骸も同じように消え去り、また岩の魔物の体が肥大化すると、瓦礫で歪な翼を形成し、倒れていた場所から飛び立った。


空からこちらを見下ろすその姿は、先程まで戦っていた岩の魔物よりも大きく、瓦礫を使って産み出した不揃いで歪な翼を持ち、不自然に巨大化した右腕は、サイ型の魔物の形をしていたが、その角は更に鋭利になっている。


「……吸収して、強化か。さっさと倒すべきだった……! 眺めてるんじゃないよバカか!」


木刀を構えながら、歯噛みする。眺めていたのは自分の責任ではあるが、それでも、自分が動かなかったから起こったことだと突き付けられているのだから、呑気に眺めていた自分を無性に殴りたかった。


しかし自分を責めるのは後だ。今は先にあれを倒さねばならない。地面に降りてくる魔物を、油断なく目を向けていたが……


一瞬で距離を詰められ、鋭くなった角が振るわれていた。顔目掛けて突き出されるそれを避けようとして、体勢を崩す。


「うおっ、あっぶねぇ!?」


その角を何とか蹴り上げるが、ヒビ一つ入らない。体勢が悪いのもあるが、かなり力を込めたのに関わらずだ。


「これはキツイ、かもぉ……!?」


蹴り上げた脚を戻し、下がろうとした瞬間、足首を掴まれ持ち上げられ、体も同時に浮き上がる。この時、木刀も手から離れてしまったのを感じた。


下に顔を向けると、かなり高い所まで登っており、血の気がサッと引いた。すぐに脱出しようと手首を何度も蹴りつけるが、全く効果がない。


「丈夫になっちまってまぁ……!」


「ギ、ゴゴ……ゴガギゴ……」


何度も蹴りつけていると、突然、声のような音を発し始めた。機械のノイズのような感じで何を言っているのか全く分からない。ただ単語の羅列と思った方がいいだろう。


「悪いね、全然分からない! 俺にも分かるように話してくれないかな?」


「ゴー……!!」


そう言いながらも顔のような部分を蹴り続けたが、全く効果は現れなかった。それどころか怒らせてしまったような感じまでする。


足首を掴む力が上がり、足から痛みが伝わってくる。


「ぐううっ……ちょっとは加減しろよ……! この……うおおっ!?」


痛みに顔をしかめていると、突然地面に向かって急に動き始めた。目に写る世界が線のように引き伸ばされている中で、急に地面が視界一杯に飛び込んできた。


そこで、漸く地面に叩きつけられる寸前だと分かったが受け身等も取る暇もなかった。


凄まじい轟音が耳に入り、少しすると全身にじわじわと痛みがやってくる。掴まれていた足も解放されたが、体が思ったように動かない。


腕に力を入れて、何とか上体を上げる。顔を上げた時、頭から生暖かい物が流れ、地面に赤い華を咲かせた。


(ちくしょう、痛ぇ……! 体もなんか動かせねぇし、木刀は手から離れてどっか行っちまうし……でヤバいなこれ……)


何とか這って移動しようとするが、そうこうしているうちにも岩の魔物は近づいて来ている。背にある刀の紅蓮、短刀の火花では恐らく刃が立たないだろうし、拳ではもっと無理だ。


「グゴゴゴ……ハイ、ジョ……!」


(くっそ……無理だって、這って逃げ切れる訳ないだろこんなの……!)


考えを回している間に、追い付かれている上に、既にその豪腕から繰り出される拳が振り下ろされていた。


何とか地面を尾で叩き跳ね上がるが、地面に叩きつけられた時の衝撃波で吹き飛ばされ、木刀の近くに落ちる。


「ゼェ……ゼェ……これならまだ……戦えるな……!」


「ヒョウテキ……カクニン、ハイジョ……!」


木刀を掴み、それを杖代わりに何とか立ち上がると同時に、腕にあるほぼ刃と化した角をこちらに突き出しながら突撃してきた。


一度は横薙ぎに振るい、岩の魔物の顔を打ち据えたが全く響いておらず、少し欠けた程度だった。


すぐに調子を取り戻し、同じように角を突きだしてくる。


その角を木刀で防ぎ、受け止めるが力負けしており、その場から突き飛ばされるようにして壁に叩きつけられた。


「かはっ……! 力負けしてるか……スピードでも恐らく相手の方が上……だしな……」


壁を背にして立ち上がるが、その途端に巨体を生かした突きが顔の横に突き刺さる。何とか木刀で反らし、動きを止められたとほっとしている時だった。


その巨体で押し潰そうと、更に深く突き刺し始めたのだ。


「がぁ……! くそ、マジかよこいつ……!」


蹴りつけたり、左腕で殴る等さまざまな抵抗をしたが、岩の魔物は全く怯む気配すら見せずに押し潰そうとしてくる。


次第に圧迫感から息苦しさと、鈍い痛みを感じ始めて来た頃、突然頭を掴まれて放り投げられた。


地面を何度か跳ねながら転がり、立ち上がろうとするが、ズキリと腹部に痛みが走り膝を着く。


「ううっ……! 骨が逝ったか……? がぁっ!?」


膝を着いた瞬間、一瞬だが目を離してしまっており、その一瞬で距離を詰められ、右肩を角が深く貫いていた。


貫かれた状態で放り投げられ、木刀を手離しながら地面に落ちる。その場で肩を押さえ、立ち上がって逃げようとするが、ボロボロで速く動けず、岩の魔物は既に近くまで来ていた。


「やっばい……!!」


「ハイジョ……!?」


拳が振り下ろされる寸前、瓦礫が飛来して魔物を吹き飛ばし、立ち上がった岩の魔物がそちらを向いた。


自分も釣られてその方向を向くと、レオニが面倒臭そうな顔をしながら全力で物を投げた体勢でこちらを見ていた。

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