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足並み揃わず。

振り下ろした木刀は、魔物の脳を揺らし体勢を崩させた。ふらついている魔物を尻目に、地面を蹴って肉薄すると、木刀を横薙ぎに振るい、吹き飛ばす。


吹き飛んで家屋に衝突した魔物は、首をプラプラとさせながらその場に崩れ落ちた。


「首を折れば大体一発か……当たり前だよな、うん」


吹き飛ばした魔物を視界から外し、頭上を飛び回る鳥型の魔物を睨み付ける。


「じゃあ……こいつらもって、うん……?」


その鳥型の魔物がこちらに向かって来るが、その背後から弾丸のような勢いで獅子の鬣のような髪をした男が鬼のような形相でその鳥型の魔物を踏みつけ、地面に叩きつけた。


「うわぁ、容赦ないなぁ……」


「ガァァァ……!!」


そのまま近寄ろうとしたが、レオニはその憎悪に満ちた目をこちらに向け、豪腕を振るった。


当てないように振るったようだったが、それでもギリギリの所を掠めており、少しゾッとした。そしてすぐに、怒りが涌き出てきた。


「……っ、危ないだろうが! 敵味方の区別位しろよ!」


「ガアァァッ!」


「俺に吠えるな馬鹿野郎ッ! 怒りをぶつけるべきなのは魔物だろうが!」


互いに怒りを剥き出しにして、言い合っていると、力が篭ったのかレオニの足元の鳥型魔物が、苦しげな鳴き声を出している。


レオニはそれを聞くと、苛立ったように足元の魔物を掴み、再度地面に叩きつけた。何かが破裂するような音と共に、地面に赤い水溜まりを作り、魔物の足が痙攣を繰り返している。


「グオォォ……!」


「何言っても動く気はねぇからな、バーカ」


言い合っている隙を狙ったのか、サイのような魔物が突撃してきた。レオニが立ち上がり迎撃をしようとするが、間に合いそうにもない。


そう判断すると、立ち上がろうとするレオニの肩を勝手に借り、頭の上から木刀を振り下ろし、角をへし折る。


魔物は驚いたのかそこで停止し、もう一撃を入れようとした瞬間、嫌な予感がし魔物の上から飛び退いた。


地面を滑りながら、魔物の方を向くと、魔物の頭が地面に完全に埋まっていた。あの場にいたら、自分も巻き添えをくっていただろう。


「……逆に清々しい気がするほどに協力する気がないな君……まぁいいよ、その方がやりやすいし」


ここはレオニに任せようと後ろを向くと、鳥型の魔物が襲いかかろうとしていた。それに合わせて飛び上がり、翼の付け根に木刀を振り下ろす。


「ここから動かせる気は更々ないと、なるほどねー……数で押されるって本当にキツいんだな……」


今だって自分の周りに、二体程岩の魔物が現れ、ゆっくりと距離を詰めてきている。


岩の魔物の片割れが腕を掲げると、瓦礫が少しずつ岩の腕に集まっていき、腕が巨大なものに変化していく。


「瓦礫を強化に使えるのか……自分の片割れも使えそうだよな、あの調子だと」


魔物の腕を注視しながら、木刀の先を地面に擦れる程低く構えて走り出す。腕を強化しなかった片割れが地面を砕き、瓦礫を飛ばしてくるが、瓦礫の破片程度なら避けなくても支障はないため、瓦礫の雨の中を駆け抜ける。


時折掠り、肌が裂けるのを感じたが動けなくなるほどでもない。


「はあっ!」


魔物の懐まで潜り込み木刀を振るい、当てた所までは良かったが、小気味いい音が響く程度で全く響いた様子もない。岩の体では刃も通さないだろうと高をくくり木刀で挑んだが、その木刀ですらダメージを与えられない。


岩の魔物は、木刀と俺を一瞥してから腕をゆっくりと振り上げられていく。


「っ……かっ、てぇ……なぁぁ!!」


一端魔物の体から木刀を遠ざけ、体に魔力を巡らせ身体を強化する。そのまま片手で振るっていた木刀を両手で持ち、そこから力を込めて全力で魔物の体を打ち据えた。


岩の魔物の体は、幾つか家屋を突き破りながら勢いよく吹き飛び、瓦礫の中に倒れ込んだ。しかし、目に見える損傷はなく吹き飛ばされただけで、人間で言う脳震盪のような物なのだろう。


「刀じゃ多分弾かれるのがオチだろうしなぁ……うーむ、どうするべきか……」


予想よりも硬い魔物の体をどうするべきかと腕を何度か振りながらジッと見据える。魔物はもぞもぞと動いてはいるが、足が上手く動かせないのか立ち上がろうとしない。


あれなら暫くは大丈夫だと、もう一体の方を向くとゆっくりと距離を詰めてきていた。先程見たときよりも岩が鋭くなっており、掠りでもしたら出血間違いなしだろう。


その鋭くなった岩の腕をこちらに向けると、人で言う拳の部分を射出してきた。


「うわっ、凶悪過ぎやしないかなぁ……!」


腕を龍化させ、岩の拳を片腕を盾にして受ける。


激突した瞬間、硬い物体がぶつかり合った音が耳に入るのと同時に、衝撃で体が後ろに下がるのを感じた。


「血が出るのは防げた……けどっ! 一発がやっぱり重いわこれっ!!」


後ろに誰もいないことを確認すると、飛んできた岩を反らす。岩が地面に落ちるのを確認もせずに、木刀を投げ捨てて全力で駆け出した。


岩の魔物は片方の腕を同じようにこちらに向けているが、射出するよりも先にこちらが拳を構えて懐に入り込むほうが速い。


魔力を拳に流し、強く握る。炎が拳に集まり、大きく燃え上がる。


「……聞いてないだろうし、答えないだろうけどさ、一応言わせてもらうよ」


一番脆そうな部分を瞬時に目で探し、その部分に狙いをつける。


「……ここの人に迷惑かけるなってのっ!!」


狙いをつけた場所に全力の拳を叩き込み、岩の魔物の体が上に吹き飛び、宙に浮かぶ。


宙に浮かんでいる間に、体全体がひび割れていき、砕ける……ことはなく、そのまま落ちてくる。その状態でももう片方の拳がぎこちなく動いており、ここまで来るとその頑丈さに苦笑いが出てきた。


「やっぱり綺麗に砕けたりしないかぁ……うーん……まだまだ未熟だな」


結局拳を射出出来ずに落ちてきた岩の魔物に合わせ、尻尾での一撃を浴びせ、先程脳震盪に近いものを起こした魔物の方に吹き飛ばす。


岩の魔物同士が激突し、脳震盪らしきものを起こしていた個体の体がピクリとも動かなくなった。


「ふぅ……これで終わり、でいいかな? 一応攻撃入れとくけど……」


折り重なった岩の魔物の体に慎重に近付き、足で小突いた後に木刀を顔に向けて振り下ろしたが、全く反応を示さなかった。


「……うん、これなら死んで……死ぬのか? 岩の塊みたいなやつなのに。機能停止の方がしっくり来る」


動かなくなったのを尻目に、木刀を拾い上げて他の所に向かおうとしていると、軽い物が転がるような音と、何かが絶え間なく引き摺られるような音が聞こえ始めた。


「……新手かな」


木刀を構えて顔を上げたが、どこにもそのような影は見えない。強いて言うなら魔物の死体が転がっているような物だ。


「あれ? おかしいな……何かいると思ったんだけど……待って何だこれ」


足元を見ると、小さな瓦礫が音を立てて岩の魔物の体に向け動き出し、その幾つかが足に当たっている。そうこうしているうちに、周囲の他の魔物の死体も先程倒した岩の魔物に向かって進み始めた。


「何か良く分からないけど、とても嫌な予感がする……!」


片手に持った木刀を振りかぶって、岩の魔物に向けて振るうが、瓦礫が意志があるかのように動き、木刀での攻撃を防ぐ。


それどころか、瓦礫が飛来し反撃さえしてくる始末で、岩の魔物から距離を取るしかなかった。


「くそっ……どうなってるんだよっ!」


瓦礫を防ごうと木刀を振るいながら、どうしようもなく嫌な予感が頭からずっと離れなかった。

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