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炎の中で。

「あぁ…?あんたなめてんの?戦闘は喧嘩仕込みの荒い戦法、技量は明らかにこちらに分がある、魔法も相まって捉えられない相手に勝てると?」


目の前の男の言うことは、確かに的を射ている。確かに、僕の戦法は荒いのだろう。それこそ、達人レベルから見ればお遊びのような物だ。けれど…


「その通りだよ、僕はあんたでも勝てる。達人レベルならまだしも、あんたも達人なんてレベルじゃないでしょ?」


事実、先程の攻防で片足に致命的までとは行かないが、かなりのダメージを与えている。最初の速度で移動するのは不可能だろう。


「まぁ、確かになぁ…俺が達人レベルだったら、てめえとは直ぐに決着がつくしな」


「そうかい…じゃあ再スタートだ!」


拳を強く握り、思いっきり顔面に叩きつける。が、相手もさるもの、その拳に合わせて後ろに跳躍、ダメージを減らしながらナイフを投擲してきた。そのどれもが人体の急所に向かい、飛ぶ。


「危な!?…うわっと!?」


咄嗟に地面を転がり回避するが、その先にナイフが飛んで来た。


「正確すぎる…!」


「ははっ、こんなもんで苦労してんなよ?まだまだやれるんだろ?」


足の怪我など思わせぬ軽快なステップ。投げられるのがナイフじゃなかったら拍手喝采を送ってたよ畜生!…あの木箱って、何が入ってるんだろ?…試しに。


「ああ、まだまだやれる…よ!」


木箱を蹴りで砕くと、どこかでみたような筒が出てきた。


「あ、まず…」


「おい、これって…」


…瞬間、僕の視界は爆炎に包まれた。


──────────────────────


光牙が落ちていった穴の下から、爆発音が響く 。


「っ!?光牙さん!?」


「あ、魔導爆弾、炎海…だったかしら…暫く放って置いたのがまずかったわね…あまり時間が経ちすぎると、空気に触れただけで爆発するらしいから…」


「…そんな物を、何に…?」


ふと思った。こんな物を一介の盗賊が何に使うのだろう。…まさか!?


「…言わなくてもわかるでしょう?あなたと一緒に来たあの子が負けたら、あなた達の里に使うつもり…だったのよ。本当に危なかった。ギリギリで爆発する危険物なんか使えないもの…まだあるんだけどね」


…この戦いに光牙さんが勝てば、捕まった里の人を助けられる。負けたら里の皆にあの魔導爆弾の驚異が…私、何も出来てないなぁ…出来る事と言えばたったひとつ…


その覚悟と共に、薙刀を構える。


「…させるとお思いですか?」


「あら、やるの?私は手荒な事は好きじゃないのだけど?」


…相手もどうやら、準備が出来たようだ。私はそこまで強くないけれど、魔力の扱いは自信がある。近接戦闘の隙をついて高威力な魔法を撃つ!


「…たぁぁぁぁ!」


互いに全力で床を蹴り、こちらでも戦闘が始まった。


──────────────────────


「…っはぁ!!てめえ、本当に死ぬかと思ったぞ!?バカじゃねぇのか!?こんな空間で爆発物なんて使うなよ!?」


「そんな事…僕が知るか…!ぐっ…!?」


爆発の中心にはこちらが近かった為、ダメージはこちらの方が大きく、膝をついてしまった。


畜生…もう後は剣しかないってのに…しかもあいつはかなり速い、当たるかどうか…!


「あれ?あんたもう限界か?そりゃそうだ、魔力の爆発をあんなもろに…」


…魔力?そうだ、魔力だ!そういや、この世界の魔法は想像力が全てって雛も言ってた!何か考えろ…!この状況を打破出来る一手を…!


「これでも…」


「あん?」


「喰らえっての!!」


手の平から炎の波を放ち、空間の半分を覆う。ほとんど密閉空間なら、避けられないだろ!


「ぐっ、あああああ!!…熱い!!」


最初の余裕もほぼ消えたようで、体のほとんどに大きな火傷を負った状態で炎の中を転がり出てきたが、倒れ込んだ。ざまあみろ。


「うわぁ…お互いにひどい怪我だ」


「…バカ言え、まだ行けるっつうの!追跡者なめんな!!」


ほぼ全身が焼けているにも関わらず、まだ戦おうと立ち上がる。


…うわぁ、この人苦手なタイプだ。超が付くほど。プライド高い人は苦手。あと飄々とした人…あ、この人だ…道理で戦い難い訳だ…


「…ねぇ、もうやめましょ?もうボロボロでしょう?」


「うるせぇ…俺もお前もまだ立ってるだろうが!!」


その言葉が聞こえると同時に、目にも止まらぬ速さで鳩尾に拳を叩き込まれた。その衝撃でよろめいた後、何度も拳が僕の体をうち据える。


「ぐはっ…!!」


「まだまだ行くぞこらぁ!!」


内臓にまでダメージがいったようだ。血が口まで昇ってきた。止めと言わんばかりに、顎へのアッパーで体が浮く。


「これで…終わりだぁぁ!!」


「くっそ…!」


首を狙った回し蹴りが勢いよく飛んでくる。腕で防御するも、今までの攻防でダメージが溜まっていたか、鈍い音と共に吹き飛ばされ、木箱に突っ込む。


「ぐっ…腕が…!」


「その腕じゃ、剣も振れねぇな。チェックメイトって奴だ。諦めな。あんたの里は火の海になるな」


…何だって?あそこが?


「これと、それは、全く関係ないだろ…」


なんとか立ち上がる。さっきの爆弾を使うつもりだろうか。それならここにあるものは…


「あぁ?まだ立つの?もうやめとけって…左腕が粉砕されて、内臓にまでダメージがいってんだろ?それに爆弾はてめえが起爆させたもので終わりじゃねぇ、まだ沢山あるんだよ」


…なんだと…?無関係の人が巻き込まれるのかよ…


「…勝つしかねぇじゃないか、そんなの。ついでに…」


罅が入った壁を、全力で殴り抜く。別の部屋に繋がっているようで、そこには沢山の木箱があった。それを見て、僕は火種程度の炎を指に灯した。


「…っ!?おいてめえ、正気か!?マジでやるのか!?」


相手もこっちのやろうとしてる事に気付いたのか、こちらに向かって走ってくる。…だがもう遅い。


「マジもなにも…大マジさ。」


火種を火薬庫に落とした瞬間、全ての爆弾が火を関知し、爆破に必要な魔力を込め、光りだす。


「くっそ、逃げるしか…」


「逃がさないよ!」


腰に飛び付き、相手の動きを封じたその瞬間…


僕の視界は、光で包まれた…
















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