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誤解……?

互いに駆け出した勢いを利用し、拳を叩き込もうと考えたが、それは互いに狙っている為顔面に拳を叩き込まれるのは目に見えていた。なのでその脇を通り抜け、壁を蹴って背部に拳を叩き込む。


通り抜けた際、拳が風を切る音が耳元で聞こえ、その威力を想像して冷や汗が垂れる。


「一発受ければ頭揺れてはいおしまいってなりそうな威力してん、な!」


拳による一撃でバランスを崩した男に追撃として、再度蹴りを背中に叩き込む。


大きな体が地面に倒れ込むが、倒れたまま地面の煉瓦を拾い上げてこちらに投げつける。


「危ないなぁ、そんなもん投げつけるなよ!」


「ルガァァァッ!」


投げつけられた煉瓦をギリギリで避けるが、避けた先にも砕かれた煉瓦が投げられていた。体勢を崩してた為に避けられず、当たった際に粉が目に入る。


「うぐっ……! 目が……」


目を擦ったり、瞬かせている間にも男は迫ってきている。閉じる瞼の合間で、どんどん距離を詰めてきているのが見えた。


「グルァァアァァァ!!」


「くぅ……回避は難しいから、なんとか防げれば……っ!!」


丸太のような太い脚での蹴りをなんとか視認すると、無理矢理足の間に龍化させた右腕を捩じ込んだが、その防御を物ともせず吹き飛ばされ、壁に激突した。


「うぐぅ……あ゛ぁくそ、いってぇ……」


直ぐ様立ち上がり、激突した箇所を手で押さえようと右腕を動かした途端、鋭い痛みが走る。


痛みに顔をしかめてその場にその場に膝を付き、右腕を確認すると、鱗が砕かれ、あらぬ方向に曲がった腕が目に入った。


「ぐうっ……! 暫く使い物にならないな……」


再度立ち上がろうとした途端、頭を掴まれて壁に叩きつけらた。頭が揺れ、視界が眩む。近くの男の顔すら霞んで見えた。


そのまま無造作に放り捨てられ、受け身を取ろうとしたが体が上手く動かず、衝撃を殺しきれなかった。


投げ出された足に力を入れて立とうとすれば、足がぐらつき、その場に立つことすらままならない。男は近付いてきているというのに。


「ウゴォォォ……!」


……凄くカッコ悪いことだが、やるしかないようだ。


「……あー……降参。殺さないで……とは言わないけどさ」


なんとか左腕を肩より上に上げ、降参の意を示す。男にはそれが伝わったのか、持っていた縄できつく縛り上げられた。勿論、折れた腕への配慮なんてあったもんじゃない。


「あだだだだ……!! おい、ちょっと! 少し弛めてよ!」


俺の声は届かずに、きつく縛られたまま肩に担ぎ上げられた。痛みに耐えきれず、苦悶の声を漏らしながら運ばれていく。


骨折していること等知らぬと言わんばかりに運ばれ、その激しい痛みによりだんだんと意識が薄れていった。


──────────────────


突然、右腕に衝撃と共にまた痛みが走った。声にならない声を上げながら、その場でのたうち回る。


「~~~っ……!! 馬鹿じゃないの、折れてんだって……」


「すまんな、態とだ」


声の方向に顔を向けると、顔に傷のある厳格そうな女性と、先程運んでいった巨漢の男がいた。


「あっ、てめ……!!」


立とうとしたが、気絶している間に何かされたのか足に力が入らない。それどころか、指の一本も動かすことが出来なかった。


「薬を使わせてもらった。少し副作用で力が入りにくいだろうが、辛抱してくれ」


その言葉を聞き、腕の感覚が戻ってきているのを感じた。動かそうとしたが、やはりピクリともしなかった。それでも、右腕の痛みは和らいで来ているのを感じる。


「……敵ならそのまま放置しといた方がよかったんじゃないのか? 薬が効いてない振りをしてるかもしれないんだぞ」


厳格な女性の顔を睨み付けながら、何とか立とうともがいた。しかし、体は無情にも全く動かない。


「ふむ……勇ましいことだ。効いているかなど、お前のやっている行動を見れば一目瞭然だ。まず敵ではないことを理解して欲しい」


「襲われたのにか? そりゃあ無理な相談だと思うけどなぁ……まずミナスも信用出来ちゃいない。指示で向かった先でこれだからな」


何か妙に胡散臭いし、あいつ。そんなことを思っていると、戦った男が拳を強く握り、こちらに向かってこようとしたが、女性に止められていた。


「……それは本当にすまないと思っているよ。レオニは手加減が出来ないのが問題だな……」


厳格そうな女性は眉間を押さえながら、次は誰に任せようかと呟いてからこちらの顔を真っ直ぐ見据える。


「……はっきりと話した方が早いか?」


「あぁ、そうしてくれたら助かるし、互いの為になるだろう。まずここがどんな場所なのか、とかね。協力者がいるとしか聞いてなかったからさ」


見たところ、街のような物だが、人はそんなに多くない……と思う。気配なんて分からないし。


「そうだな……まずここはカーサラルドの地下に作られた地下街だ。いつもなら昼夜もしっかりとあるんだが……侵入者があると暗くなるんだ」


「あなた達がこんな所にいる理由は?」


「……ここを守る為だよ。地下街とはいえ、現状亜人が住んでも大丈夫な国はここしかないからな……」


……なるほど、要するにだ……これは骨が折れる厄介事の予感。もう折れてるけどさ。

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