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同胞。

突然現れた、スーツの男。俺は彼に連れられてギルドの建物に戻ってきた。


「光牙さん! 大丈夫でしたか?」


「大丈夫だったよ、なんとかね……大丈夫じゃないのはこの後かもしれない」


そう言いながら、手に付けられた手錠を見せる。この程度なら力を込めれば壊せないこともない……のだが、人目があるため派手な行動は控えなければいけない。


バレている人には兎も角、普通の人が見れば顔が真っ青になって化け物扱いだ。


「あなたにも同行してもらいます。何故ここに来たのか、その他諸々について話してもらいますよ」


そう言いながら、スーツ姿の男は雛の手にも同じものを着ける。雛は一瞬きょとんとしていたが、すぐに外そうと躍起になっていた。あのー……その、ごめんなさい……そうなった、原因は俺です……


「無駄ですよ、かなり頑丈にしてあります。あなたではまず壊せないでしょう……龍人でもなければ、ね」


スーツの男はそう言いながら歩きだす。雛と二人で顔を見合わせていると、後ろから鎧を着た兵士に小突かれた。


「いてっ……はいはい、小突かなくても歩きますよ! 急かさなくてもいいでしょう!? 全く……」


「本当ですよ、もう……」


スーツの男の後に続き、歩いていく。ギルドの中に入ると、こちらを見つけたのかディーンが駆け寄ってきた。


「光牙、それに雛も!? なんで捕まってんだよ、何やったんだ!?」


「あー……ちょっと首突っ込んじゃって……そっちの人に聞いてくれ」


比較的に自由に動かせる指で、スーツの男を指差す。ディーンはその方向に駆け出し、少し話し合うと唐突にスーツの男を殴りつけた。眼鏡が吹き飛び、地面に落ちる。


……え、何してるの?


「ディーン!? そっちが何やってんだよ!」


駆け寄ろうとするが、何かを察知した兵士たちに押さえ込まれ、地面に倒れる。


ディーンはその間にももう一撃と言わんばかりに拳を握りながら近付いている。


「簡単だよ、お前らは悪くねぇじゃねぇか! それなのに、こいつら……!」


ディーンがスーツの男の胸ぐらを掴み上げ、もう一撃拳を振り下ろそうとするが、その途端に複数の兵士に腕を押さえられ、地面に押さえつけられる。それだけに留まらず、押さえられた体に殴る蹴る等の暴力を加えられていく。


その隙に、スーツの男は立ち上がり眼鏡を拾ってかけるとディーンに近寄り、膝立ちで視線を近くに寄せて語りかける。


「……あなたは、とても短絡的な思考をしていますね」


「ぐぶっ……うるせぇ、おかしいことをおかしいって言って何が悪い……!」


それを聞いたスーツの男は、一端こちらに視線を向けると後ろを向き、歩き始めた。


「ついでにその白髪の男も連れて来なさい。暫く動けないのはは困るので屈強な兵士が必要ですね……」


ディーンも俺たちと同じように手錠をつけられ、ついでに体が大きな兵士に持ち上げられて同じペースで歩かされていた。


「ディーン……お前……」


「ははは……すまん、カッコわりいとこ、見せちまった……ごほっ……!」


「いいえ、カッコ悪くなんか……!」


そうしているうちに、ディーンの体から力が抜け、ガクリと項垂れた。その途端再度背中を強く押されて急かされる。背中を押した兵士を雛と二人して強く睨みつけ、スーツの男の後を追った。


───────────────


人目のつかない通路に入った途端、雛と俺は堪えきれずに捲し立てた。


「それで、どういうことなんだ!? 俺達に何を求めているっ!?」


「落ち着いて下さい、まずは……」


「落ち着け!? 落ち着けですって!? ふざけないで、あんなことをしておいて!」


雛がディーンの方を向き、ボロボロになったディーンを指差し怒りを顕にする。俺もその後すぐに首を掴もうと振り向くが、思うように手が動かせず力を抜く。


「……これを付けててよかったな、あんた。これがなきゃ、今すぐにでもあんたを八つ裂きにしてしまいそうだ……!!」


「……彼の傷は、しっかり癒します。ですから、頼むので今は落ち着いて下さい……その後なら殺してもらっても構わない」


その言葉の後に、奥にある部屋に入っていった。燻ったイライラをなんとかしようと、一度頭を壁にぶつけ、考えをリセットする。


生暖かいものが垂れたが、気にせずに兵士に声をかけた。


「……あんたはどうなんだよ、兵士さんよ」


「……私は、命令に従うだけだ」


そう言い、部屋に入り、ディーンをおいて部屋から出ていく兵士。


その顔は見えない上に、くぐもっていたが自分と話した兵士の声は……男にしては高めに感じた。


「……気にすることじゃねぇな」


頭の中に浮かんだ疑問を消し、部屋の中に入る。


部屋に入ると、ベッドには傷を癒す術式があるのか、少しずつディーンの傷が癒えていっている。


「さて……話の前にこの手錠を外してくれ。こんなの付いてちゃ、対等に話せないだろ」


「えぇ、分かっていますとも」


そう言うと同時に、手錠が音を立てて地面に落ちる。本人の意志が解除のトリガーとなっているようだ。


「しかし、あなた方なら壊せたのでは?」


「できるだけ壊さないようにしているんですよ、私達は」


雛がディーンのベッドの側から声を上げた。……知らんかったけど、そんなこと。


「なるほど、比較的友好的なのですね。龍人が全て敵ではないことが分かってよかった」


「俺は、あんたを信用できないけどな」


スーツの男の僅かな動きを見逃さないように、常に睨みつけている。こんな得体のしれないやつを信用しようと言うのが無理な話だ。


「……でしょうね……ですから、私も正体を見せましょう。私の名前はミナス。それでいて……あなた方と同じ龍人です」

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