目的変更、盗賊のアジトへ。
僕たちは、地面に向かって勢い良く降り地面を転がりながら戦闘態勢をとった。敵が何処から来ても互いに互いを守れるように。
「雛さん!どっから撃ってきたか分かりますか?」
「いえ、下からの攻撃だとしか分かりませんでした…」
「そりゃそうか、僕たちかなりの高度で飛んでましたし…」
しかし弱ったな…敵が何処から来るのか全く分からないうえに、数も分からない…知らない事づくしの戦闘になる。
ガサッ、と僕らの周りの草むらが動く。…囲まれてるみたいだ。数はざっと十人はいる…いかにも盗賊ですって見た目の方々だねぇ。
「…とりあえず、言えるのは…」
「そうですね…」
「「龍の怒り、その身に刻め」」
僕は剣を、雛さんは薙刀を構え、突っ込んで来る盗賊どもを迎え撃つ用意をした。
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「まずは男の方から狙え!そいつは前に仕留め損ねたやつだ、戦闘能力は─」
「そこまで高くない、って?馬鹿でしょ、あんな事があったら鍛えるよ」
命令を出そうとしていた奴を顔面に蹴りを叩き込んで黙らせ、浮いたところを叩きつける。うわ、えぐいねぇ。歯が殆ど折れちゃってるよ…やったの僕だけど。
「くそっ、なら女の方に…」
「あ、止めといた方がいいですよ?あの人…」
言葉の途中で、竜巻が吹き荒れ、盗賊達が吹き飛んで来た。あーあ、だから言おうとしたのに…
「僕よりも普通に強いので」
あ、盗賊の残った人の顔が顔芸みたくなってる。…面白い顔してくれるなぁ…おっと、前の不良どもを罠に嵌めた時の思考に近いなこれ。
「…あ、とりあえず拠点の場所とか聞けるんじゃないですか?」
…あ。そろそろ鬱陶しいと思ってたんだよね…
「…まず、捕まってる人を助けましょうか」
さぁ…キリキリ吐いてもらいましょうか。場所とか色々と…ね…
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「よし、大体分かった…意外と里の近くにあるんだな…道理で、飛んで直ぐに矢が飛んできた訳だ…雛さん終わったよー」
殴って情報を洗いざらい吐かせ、顔が原型を留めていないレベルに変形した盗賊の胸ぐらを離して地面に寝かせる。雛さんにはちょっと離れててもらった。…いやだって、拷問を見せる訳にはいかないって…
「…か、かなり殴ったみたいですね…」
ドン引きされた。解せぬ。なんでさ。っとその前に…
「捕まえた龍人が何処にいるのか、教えてね?」
あんたらが悪いんだからな、勝手に人様…いや違うな、龍の里の人を狙ったんだから…あ、気を失いそう、とりあえず腹パンかましてっと。
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「それで…やって来ました本拠地に…何寝てんの、起きて」
「ぐふっ…」
「…あの、ストレスでも溜まってるんですか…?」
「いんや?ただこういうのは徹底的に潰した方がいいかなぁ…って」
襟首を掴まれ、引き摺られている男の腹に蹴りを入れる。雛さんが本当にドン引きしてるけど、こういうのは潰すって決めてるんだ。
…僕みたいな、死に方をする人がいないように。
「見張りがいる…さーて、どう入るかな…あ、そうだ」
指先に魔力を収縮させ、高温の炎を集める。そしてのその炎を五つ合わせ、手の平に球体を作り出し、それを入り口に向けて投げる。
「伏せてて…名付けて…《バースト・プロミネンス》!」
僕が投げた炎の球体は、大きな爆発を起こし、見張りの盗賊に大きな傷を負わせると共に、入り口にも大きな穴を開けた。
「威力上々、準備に少しかかるな…」
「あんなのなかなか撃てませんよ!?あ、じゃあ私も撃ちますね、《テンペスト・ストライク》」
雛さんの手の平から放たれたのは、まさに嵐。荒れ狂う嵐が盗賊達を吹き飛ばし、立ち上がれなくなる。…やっば、僕より威力高いかも…
「よし、大体散らせって…ボス以外全滅?…以外と少なかったんだな…よし入ろう」
半壊した拠点の入り口から、中に入る。トラップのような物も置いてあるが、そこまで脅威になるようなものは無かった。…最初のうちは。
「これ絶対に死者出てるって…何この量…」
刃が振り子のようにところ狭しに置いてある部屋があった。これは炎で溶かし、効果をなくした。面倒くさくなったし。
それで、歩く事十分程…
「迷ったって言ったらどうします?」
「シバきまわします」
怖いよ!?…迷ったなんて言えなくなってしまった…!
「冗談ですよ。…そうですね…嵐をぶつけます」
どっちにしろ、僕は死ぬ…!なら次に適当な扉に入って、ボス達を見つけるしか…!
「…ここだ!」
扉を蹴り壊し、部屋に入る。そこには…
「よぉ、やっぱ生きてんのか。あんたは」
「前逃がしちゃったからねぇ、本気で遊んであげるわ」
青色の目の茶髪の伊達男と、白髪で透き通るような赤い目をした女がいた。こいつら、前に麻酔撃ち込んでくれた奴等だな…!
「前回の雪辱、晴らさせてもらう!」
…それとは別に、雛さんの魔法が僕に向けて放たれる事が無くなった事に、僕は安堵していた…仕方ないじゃん。あの威力諸に喰らったら死ぬよ!?