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呪法

 フフフ、何を仰るかと思えば今更ですね。


 先程からのご説明の中にある、魔封石を開発したご先祖様譲りの()()ですが、私は人間や万物が持つ魔力の代わりに“呪力”という物を持っているのです。


 それにより“呪法”が使えるのです。


 簡単にご説明致しますと、魔力が動力源となる魔法は、魔法詠唱する事で攻撃魔法を放ち、相手を外側から物理的に攻撃します。

 それに対して、呪力が動力源となる呪法は、呪法詠唱する事で相手を病にしたり呪い殺したりして、目標を体の内側から攻撃します。

 でも何故かしら? この説明をすると、何時も動物の腰から尻尾を連想させる七つ星を思い出してしまいますわ。

 それはさておき、また呪法は、飛ばす相手との間に、距離、方向、障害物は関係御座いません。故に、防ぎようも御座いません。

 本当に何故かしら? この説明をすると、何時も「波○疾走(オーバード○イブ)!」という言葉が頭に思い浮かびます。


 まあまあ、さておき、ご先祖はこの呪法を用いて初代ランダース王国の外敵を呪い殺し、王家の方々には呪詛返しの加護を与えてらっしゃったのです。

 呪法は、使用者が任意で敵を呪い殺す事も出来ますが、逆に加護を与えた人には、鉄壁の防御を(もたら)します。

 誰かが悪意を持って、加護を与えた人に危害を加えたとしましょう。すると、危害を加えた人達も似た方法で害されてしまうのです。

 もし、死に至る程の攻撃を加護を持つ相手に加えると、自分もそれに似た方法で自殺してしまいます。

 例え、剣で斬りつけたとしても、毒を飲ませたとしても、魔法で攻撃したとしても、はたまた事故に見せ掛けて他殺を偽装したとしてもです。

 呪詛返しが、全ての因果を読み取って、主犯、共犯、実行犯全員を呪うのです。

 つまり、呪詛返しによる加護を与えられた人を害したければ、己の命も掛けなければなりません。

 言葉通り、人を呪わば穴二つという事ですね。


 お爺さん賢者達が私の屋敷へ訪れるようになったのも、元々は耳にした私の評判と共に、呪力の調査をしたかったからなのです。まぁ、調査と言っても別に魔改造される訳でもなく、一緒にお茶しながら心理テストに答えるといった物でしたが。

 その後、私を可愛がってくれる彼等や各国の要人の方々にも呪詛返しの加護を与えて上げていたら、私の外交術やルックスも手伝い、何時の間にやら皆のアイドルみたいになってしまったのです。

 それでも、私の実家であるクルー家が、私とは関わりを持たないよう()()()()()()()()()()()()()()()()()()、私の評判は()()()()()()()()()()()()()()()()()()、国王陛下も私と呪法の存在を()()()()()()()()()()()のです。


 ああ、屋敷の使用人達が()()()()()()()()()()()()のも、()()()()()()()()()()()()()()()()()ですよ。

 中でも、夫のDVに悩んでいたメイドなんかは、涙を流して喜んでくれました。お陰様で念願だった離婚も無事成立したとか。

 一応ランダース王家の方々にも加護を与えていますよ。寄越せと仰られたので。

 でも、これだけの効果が有るなら、家族も私の加護を上手く利用すれば良いと思うのですが、そこはまた話が変わってくるのです。

 その辺りの話は割りと有名なのですが、ロミオ殿下は独自の解釈をなさいます。


「初代クルー家当主は建国の魔女と呼ばれているが、彼女も自分の夫どころか身内全員を呪い殺した! クルー家の面々は王族の血を引き継ぐ高貴な存在だが、魔女だけは別!魔女は邪悪な存在でしかない!」


 あらあら、それだと初代国王様の決定に異を唱える事になりますね。

 と言っても、今のご説明だと、悪いのは初代国王様やクルー家ではなく魔女だけと受け取れるものね。


 やはり呪力を持っていたご先祖様、初代クルー家御当主様も私と同じく女性で、ランダース王国では“建国の魔女”とまで呼ばれています。

 彼女は、建国に際して呪法を用いた多大なる功績により第一王子という王族を伴侶に迎え、女性で唯一、当主としての公爵位を賜れました。

 けれど、この第一王子が曲者だったのです。

 普通なら、国王の嫡男が王太子となり、二代目国王となります。又は、公爵家の当主ともなるのですが、彼は徹底的に素行が悪かったのです。

 建国に際しての領地を巡る戦闘では逃げてばかりで録に戦わず、敗北の責任を全部部下に押し付けていました。

 更には、マトモに働かないのに金使いが荒く、女遊びが酷かった。しかも、飽きた遊び相手を捨てようとしても、相手がしつこかったりした場合、最悪殺してしまっていた程の極悪人。

 この悪癖は、ご先祖様と婚姻した後も全く改善されませんでした。

 それどころか、本来なら自分が王太子になる筈なのに、臣下に婿入りさせられ当主にもなれないという思いから、ご先祖様の身内を唆し、建国したばかりのランダース王国に大規模な反乱を巻き起こそうとしたのです。

 ご先祖様さえ味方にしてしまえば、敵が何処に隠れていようとも確実に呪い殺せるし、呪詛返しの加護があれば自分に危害を加える大元の国王様ですら手は出せません。

 第一王子は仲間に引き込んだ身内全員と一緒になって、産まれたばかりの我が子を人質に取り「私の妻なら私の側に付け」とご先祖様を脅しました。

 王家に忠誠を誓うが故に、婿入りした夫の横暴に耐えていたご先祖様でしたが、流石にこの所業には我慢の限界を迎えました。

 遂に()()()した建国の魔女は、身内に与えていた呪詛返しを止めてしまい、その場で我が子以外の全員を呪い殺してしまったのです。


 初代国王様も、元々は厄介払いの意味から第一王子をご先祖様へと嫁がせました。初代クルー家は女性を当主にしたので、婿入りしても大した権力が持てないからです。

 ご先祖様が第一王子を含めた身内を皆殺しにしたという報告を受けた初代国王様は、逆に反乱を未然に防いだとして、褒美を取らせました。

 王家としては、ご先祖様を敵に回すと厄介な存在となります。ならば、今迄通り王家に呪詛返しの加護を(もたら)す味方である方が良いと判断したのです。


 この件で、クルー家は更にランダース王国貴族内での地位を確固たる物としましたが、一連の顛末を知る子孫達にしてみれば、ご先祖様と呪法は恐怖の対象となってしまったのです。

 クルー家に産まれた子供達は、親から「悪い子は、建国の魔女が殺しに来る」と言って躾られます。

 流石に大人になればそんな子供騙しは通用しませんが、何の因果か今代になって、初代クルー家御当主様と同じ呪力を持つ()()()()()()が本当に産まれてしまったのです。

 建国の魔女の恐怖を一番良く知る身内しては、少しでも私の機嫌を損ねてしまうと誰であろうと呪い殺されてしまうと思っているのです。逆に()()も効果覿面ですが。

 当然、私自身にも呪詛返しが掛けられているので、暗殺も出来ません。

 これこそ、家族が私を忌み嫌い、私だけが家族とは別の屋敷で暮らしていた理由なのです。


 でも、馬鹿ですね。例え私を専用の屋敷に押し込めても何の意味も無いのに。

 だってそうでしょ?押し込めようが幽閉しようが、私が呪法を使えば何もかもお仕舞いなのだから。

 本当に魔女の恐怖から逃れたいのなら、勇気と自己犠牲に溢れる家族の誰かが自発的に私を殺せば良いだけなのに。そうすれば、呪詛返しの被害者は一人だけで済むし、後に残された者達は心安らかに魔女から解放されるのにね。

 まぁ、家族の誰もが勇気も自己犠牲も無く、私と離れる事で呪法の恐怖から目を背けるしか出来なかったという事ですね。

 因みに1つだけ()()()()()()()()()()()()()()()が御座います。

 と言っても、私はそんな()()()()では御座いませんが。


 そう、柔ではない私をご存知の筈のロミオ殿下なのですが、誰からの反論の間も与えず更に畳み掛けます。

 今度は()()()()()()()()()()()()を大声で叫びました。


「幸いフローネ嬢は常時、魔封石を持っておりましたので、魔女セーラのの呪いは効きませんでした。魔封石が呪法を防いでくれるという事実は、此処にお集まりになられている皆様も既にご存知でしょう」


 そりゃそうですよね。()()()()()()()()()()()()()()()

 更には、自分が有利になる嘘の証言をなさいます。


「私は、王太子妃の地位を欲する魔女セーラから無理矢理捩じ込まれた婚約話などずっと反対しておりましたし、婚約が成立した後に、その旨を本人にも伝えました」


 ……初めて伺いましたね。婚約は王家側から打診ですよね?


「すると「秘密にしていたが、呪いは最近世に出回っている魔封石で防げる」と白状し「だから私を捨てないで」と泣いて(すが)りました」


 いやいや、秘密にしてなかったし、泣いてませんし、縋ってませんよ。


「私は、お前の元に訪れる皆にもその事実を広く伝えるならという条件の元、王太子の婚約者を名乗る事を許してやるし、お前との婚約も公表してやるとも約束しました!」


 あくまでも私が恋慕したと言い張るのですね。見事なまでの自意識過剰ですよ。


 確かにロミオ殿下の仰る通り、私の呪法、呪詛返しは、魔封石を持つ者には効力を(もたら)しません。

 相手を呪い殺そうとしても、魔封石が呪力を吸収してしてしまい、身代りとなって粉々に砕けてしまうのです。

 そうなると、元々使用人達が私に忠誠を誓っていた理由が無くなってしまいます。彼等の忠誠は、私から呪詛返しという恩恵を与えられていたからこそ存在していたので。

 その代わりに今度は、()()()お金で恩を買ったという訳です。私が居ないと莫大な給金が入って来ませんからね。


 呪法を防げる魔封石が世界中で売り出されたのが()()()()、ランダース王国内ではクルー家が秘密にしていたせいで、私の存在を()()()()()()ランダース王家が婚約を申し込んで来られたのが10()()()()()です。

 この事からも分かるように、王家が私との婚約を打診して来られた時には既に、()()()()()()()は無くなっていたのです。


 私は開発当初から魔封石の効果を全て分かっていたので、開発者という事を秘密にしていながらも「魔封石さえ持っていれば、私の呪法は意味を成さなくなる」と、屋敷を訪れる各国の方々には発売されて直ぐに、ランダース国王陛下には婚約が成った後、進言致しました。

 ランダース王家の方々は、魔封石が売り出された頃どころか、ずっと私の屋敷へ訪れなかったので伝えようが御座いませんでしたので。

 呪法の防ぎ方を知らないランダース王家は、呪法を使える私の存在のみを知り、自国の強みを生かして直接実家に婚約を申し込んでしまいました。

 王家の最も求める物が既に何の意味も持たないのに、全ての情報を他国より遅れて知ったが故に婚約が成立してしまったのです。


 私としては、王太子妃にも腹黒王子様にも1ミクロンの興味も無いので、電撃的に成ってしまった婚約を円満解消する為に、直ぐ様魔封石による呪法の防ぎ方をお伝えしましたよ。

 暗に『呪法を使える私の利用価値は、もう王家には御座いません。この事は各国の方々もご存知です。だから、婚約を無かった物にしても構いません』と、ご説明したのですが。

 それでもその時は、婚約破棄ないし、婚約解消はして下さいませんでした。

 だからこそ、私が建国の魔女と同じ呪力を持つ事を表向きの理由にしていながらも、()()()()()()()()()()()こそが本当の狙いだと思っていました。実際に、そうなのかも知れません。


 しかし、ロミオ殿下は“婚約が成立した後に、魔封石が呪法を防げると私が広めた。その後にロミオ殿下本人より、私が真の婚約者だと認められたので公表した”と受け取れる発言をなさいました。

 これだと、私が魔封石で莫大な財を築く前に、既に婚約は成立していたとも受け取れますし、魔封石が呪法を防げると広めたのは自分の手柄だとも受け取れます。


 でも腹黒王子様、貴方がどこをどう情報操作しようと無駄ですよ。

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