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壮絶な最期

 ランダース・コネクションは、庶民貴族問わず人々を拐って奴隷として売り払い、襲撃した家の家財をも根刮ぎ奪っていくという極悪人の集まりです。


 こんな無法を行う畜生等、クルー家同様私が許す筈も御座いません。

 そうです、ランダース王国の滅亡と共に、私と新愚王率いるランダース・コネクションとの戦いの火蓋が切って落とされたので御座います。


 第二幕の開催に当たって先ず私が行った事は、奴隷として売られた被害者達を救う事でした。

 奴隷の使役、又は奴隷商を容認している国には、魔封石と魔力膨張症の特効薬の販売はしないという圧力を掛けたのです。内政干渉などクソくらえですわ。

 こうする事によって、人を奴隷として売り捌くという連中の財源を元から絶つのです。

 更には、拐われた方々を救いだした者には、多額の賞金を与えるとも提示致しました。


 ここまでやっても、まだ悪しきシステムを大切に守り頑強に奴隷を容認する国が少数御座いました。

 そんな国々を屈服させる為、私はあえて自信が恐怖の対象だと強調する意味で魔女だと名乗り「私と賢者様方と世界中から敵認定された末、ランダース王国の二の舞になりたいか! 死にたくなければ被害者達を探し出せ!」と警告し、彼の国々の王族や貴族達に死なない程度の呪法を飛ばしました。

 当初の圧力を掛けられた国々には、魔封石も魔力を鎮静化させる特効薬も御座いません。故に、呪法の防ぎようも御座いませんので、効果は絶大でしたよ。

 連中は速攻で私の元へと使者を飛ばし、直ぐ様奴隷禁止に被害者達の捜索を始めると伝えて来ました。

 他人の痛みには鈍感なのに、いざ自分が痛みを伴うと直ぐ様敏感に反応して簡単に屈服してしまう方々ですね。

 私本来の目的は、被害者達を助けたかったのであって、結果的に関わり無い奴隷も解放してしまっただけなのですが。

 行き場の無くなった奴隷達が路頭に迷わないよう、財団やレミ商会での雇用も致しましたよ。世界進出に伴い幾らでも人手が欲しかったから本当に丁度良かったわ。

 そのお陰もあって、新たに人材派遣サービスという部所を儲ける事にもなりましたし。


 それに、古い連中が私に煮え湯を飲まされたからと言っても、私へ報復する事など出来ません。

 下手に手を出すと、全世界に存在する魔封石は砕け散って使い物にならなくなります。

 私の大切な方々を襲っても結局は同じです。私が報復として(から)の呪詛返しを飛ばせば、やはり全ての魔封石は砕け散ってしまいます。

 そして、最初の一個を作れるのは私だけ。

 実際あの夜会後、新たな魔封石が世に出回るまで人々の行動範囲や活動時間は狭まり、魔物被害も増え、全てが手仕事手作業となってしまったので殆んどの国々の生活水準は一気に数世紀まで遡ってしまいました。その経済的、国家的打撃たるや凄まじいものでしたからね。

 今更、世界は魔封石の無い生活など考えられないでしょう。

 魔封石が無くとも奴隷や庶民の痛みを引き替えに、平気でいられる一部(マイノリティ)古い体制(カースト)の国が、本当に私を殺してしまうと、怒り狂ったお爺さん賢者達や魔封石を必要とする先進的な世界中(マジョリティ)の国々から総攻撃を食らいますもの。


 でもこの一件で、その一部の国々の王族や貴族達からは畏怖の念を込め、元奴隷達からは解放者という意味から、建国の魔女と相反する“亡国の魔女”という異名が定着してしまいました。

 まぁ、致し方御座いませんね。だって色々とやらかした自覚御座いますもの。


 また、被害者達を救助すると平行してランダース・コネクション壊滅作戦も行っておりました。

 お爺さん賢者達が各国の王家と連携して専用の特種部隊を組織、間者を使ったおとり捜査と潜入捜査、部隊の電撃的な突入作戦でアジトを次々と叩き潰していったのです。

 更には、Dead or Aliveで、コネクションメンバーを捕らえた者には懸賞金を与えるとも致しました。

 これにより、屈強な冒険者達が懸賞金目当てに此方側へと付いてくれたのです。

 新愚王のカリスマと手腕で急成長したランダース・コネクションでしたが、私達の徹底した壊滅作戦が功を奏し急降下するもの早かったですね。


 そして遂に、行方を眩ましていた新愚王の所在を突き止める事に成功致しました。

 彼は偽名を用いて商会を営む裕福な会頭だと名乗り、某国に建つ古城を買取って、その中から手下達へと指示を出していたのです。

 被害者宅から盗んだ美術品、骨董品、調度品の全てを己の城へと運び込ませてもいました。

 確かな筋からの情報を手に入れた私は、自らその国へと乗り込み、王家より軍隊を借り受けて圧倒的戦力で新愚王が潜む古城の敷地を取り囲んだのです。

 最早コネクションは壊滅寸前、敷地内にも人影は見られません。どうやら残り少なくなった手下達もとっくに逃げ出したようでした。

 しかしそんな中、ランダース王家の王冠を被った新愚王ただ一人が、その身を大量の魔封石と共に古城の頂上から晒したのです。

 その時、彼のカラクリに漸く気付きました。そうです、私は新愚王へ向けて何度も死に至る呪法を飛ばしていました。

 ですが、何度呪法を連発しても私の中に浮かび上がる新愚王の姿は平然としている。

 何故なら、彼はひたすら自分の城に閉じ籠り、夥しい数の魔封石と共に暮らしていたので、常に呪法から守られていたのです。

 とは言え、今度ばかりはそうもいきません。例え無数の魔封石に囲まれていようとも直接武力を行使すれば良いだけなのだから。

 それに、攻撃魔法を強化する魔封石は此方側にも腐るほど御座います。


 私は最後の降服勧告として新愚王へ「大人しく盗品を明け渡し、素直に投降して法の裁きを受けるか、あくまでも私の敵としてこの場で討ち取られるかを選びなさい!」と申し上げました。

 それに対する返答は、我々の想像を遥かに越えるものでした。

 独りぼっちの裸の王様は歪に笑い「盗んだ物を返して欲しくば地獄まで取りに来い!」と叫び、自分を取り囲む魔封石に向かって爆裂魔法“強炎爆(メガバースト)”を放ったのです。

 当然、強炎爆(メガバースト)を受けた全ての魔封石が大爆発。

 そのせいで、盗まれた貴重な品々が古城と新愚王共々木っ端微塵に吹き飛んでしまいました。

 彼は最後の最後で己の命と引き替えに、盗品を取り戻したいという私に一矢報いたのです。


 新愚王……いえ、ロミオ・ランダースは産まれてくる時代が遅すぎた。もし、彼が戦乱の世に産まれて来たのなら、絶対的な支配者になれたかも知れません。

 まぁ、それでも録な死に方はしなかったでしょうが。

 足下へと転がって来た歪んだ王冠を眺めながら、そう思いました。


 これにて全ての懸念が片付き、元ランダース王国領土は無事近隣諸国へと分割統合されたので御座います。

 一時は、反逆者達の代表としてゼーゼマン王朝を立ち上げようかという話も御座いましたが、当の本人が「反逆者と言えども私も騎士、簒奪者にはなりたくない」と仰られたので、やはり皆様領地領民ごと其々の隣国へと亡命なさいました。

 その際、お爺さん賢者達がちゃんと口添えをなさったので上位貴族は伯爵へ、下位貴族はそのままの爵位でという約束が保証されたのは言うまでも御座いません。


 たった三年、されど三年、本当に目まぐるしい三年でしたね。






 そして三年が経ち、本日は大切な仲間達が屋敷の庭で私の二十歳のバースデーパーティーを催して下さっています。

 二十歳と言ったら十分行き遅れです。今も恋人がいないまま。

 過去、私を思って下さっていた王子様方も、もうとっくに他のご令嬢方とご婚約やご婚姻されております。

 それでも、年下の王子様方からはアプローチを受けますけどね。

 でも、私を見張るお爺さん賢者達が攻撃的な魔界のオーラを出してらっしゃるのでアプローチ止まりになってしまいますが。


 私は、このまま一生独身で終わるのかしら?


 そんな事を考えていると財団の敷地内、遠くの方から此方へと近付いてくる男性の姿が目に止まりました。

 彼の豊かな漆黒の長髪と、漆黒の長いマントは風でたなびき、その身には纏うはポリアンナ帝国帝室御用達である漆黒の礼服。

 全身を黒でコーディネートされていますが、多少色素の濃い肌の色をされているので、全くもってミスマッチでは御座いません。

 そしてそのお顔は、女性ならば誰もが見惚れてしまいそうなワイルド系イケメン、正しく黒を擬人化したような殿方で御座います。

 何方かしら?帝国帝室の方なら見覚え有る筈なのだけれど。

 そんな私の内なる疑問など分かろう筈も無く、彼はひたすら微笑みながら此方を目指して歩み続け、遂に私の眼前へと到達致しました。


「セーラ、久しぶりだな」

「あっ……あの……ご無礼を承知でお尋ね致しますが……貴方様は何方でしょうか? 何処かでお会いしたでしょうか?」

「ああ、ヤッパリか」


 そう答えた彼は、背中から何かを取り出しました。


「これに見覚えは無いか?」


 彼が取り出したのは、年期の入った立派な(ロッド)

 その(ロッド)には、十分過ぎる見覚えが御座います。


「そ……それは……インジャン様の(ロッド)……何故貴方様がそれを? インジャン様のお身内の方ですか?」

「おいおい、まだ分からんのか? セーラにしちゃ鈍いの~」


 彼の口調を耳にして、まさかと思いはしたなく目を見開いてしまいました。


「えっ!……もしかして……インジャン……様……ご本人ですか?」

「漸く気付いたか。 そうじゃ、儂じゃ」


 なんという事でしょう。今、私の目の前に立つ漆黒のイケメンは、自らをツルッパゲで皺くちゃだったインジャン様その人だと名乗ったのです。

 彼の返答を耳にした方々も驚愕の表情を晒け出し悲鳴のような叫び声を上げております。

 インジャン様はご高齢のご老人だったのに、余りにも違いすぎるお姿になって皆の前に再び現れたのです。信じられないのも当然。私だってそうなのですから頭が真っ白になり何も考えられなくなりました。


「おいおい、先ずは落ち着け。何でこうなったのか全部教えてやるから」


 インジャン様を名乗るイケメンに諭されハタと気付き、一つ深呼吸を致しました。

 その途端、伺いたい事が山のように溢れて来ます。


「本当に……インジャン様なのですか?」

「ああ、信じられんのも無理は無いが、正真正銘この儂じゃ」

「今まで何処で何をなさって……それに、どうしてそんなお姿になってしまわれたのですか?」

「そうだな。一つ一つ順を追って話していこう」


 そしてこの三年間、行方知れずとなったいたインジャン様の軌跡が明かされ始めました。


「三年前、儂は予てよりの目的を果たす為、お主等と別れて一人でペリーヌ島へと渡ったんだ」

「ペリーヌ島って……あの灼熱のペリーヌ島ですか?」

「その通りじゃ」


 彼の仰るところのペリーヌ島とは、巨大な火山が幾つも聳え立つ赤道上にある小さな島で、その気候と風土の厳しさからまさにこの世の地獄と呼ぶに相応しい場所。当然島民など一人も住んでおりません。


「何故そんな何も無い酷しい地へと赴かれたのですか?」

「何も無い事は無いだろ」

「えっ?」

不死鳥(フェニックス)がおるだろ」

不死鳥(フェニックス)ですって!」


 確かに冒険者すらも近寄らないペリーヌ島の火山火口には、炎の化身とも呼ばれる不死鳥(フェニックス)が住んで居ます。

 しかし、不死鳥(フェニックス)は魔物などと比べられる代物では御座いません。

 寧ろ神の使い、神獣とも呼ばれ人語すら理解してしまいます。

 迂闊に近寄り一度炎の鳥の逆鱗に触れてしまうと、人間の王国など一日を待たずして文字通り火の海となるでしょう。到底人が触れて良い存在では無いのです。

 なのに、インジャン様は飄々とした口調で話を続けられます。


「まぁ、驚くのも無理は無いな。儂の真の目的は、不死鳥(フェニックス)の血だったんじゃからの」

「まさか!」

「そう、儂は不死鳥(フェニックス)の血を飲んで若返った」


 その衝撃の言葉で、彼の本当の目的に気付きました。

 その昔、魔王にちょっかいを掛けられ怒り狂った不死鳥(フェニックス)が、様々な被害を世界中に齋し始めた事が御座いました。

 そこで、勇者ナナミがペリーヌ島へと赴き、不死鳥(フェニックス)に怒りを鎮めてくれと懇願したのです。

 すると不死鳥(フェニックス)は「ならば我と戦い我を倒してみろ」と言いました。

 それから、勇者パーティーと不死鳥(フェニックス)との半年にも及ぶ激闘が繰り広げられます。

 最終的には、勇者ナナミの必殺の剣が不死鳥(フェニックス)の心臓を穿ったのです。

 その際、勇者ナナミの直ぐ後ろに控えていた老齢の大賢者スフナキンに不死鳥(フェニックス)の血が浴びせられました。

 途端、スフナキンの全身が炎を包まれたかと思うと、炎は直ぐ様鎮静化。後には青年にまで若返った大賢者の姿が現れたのです。

 更に、不死鳥(フェニックス)も勇者ナナミへ礼を言うと、小鳥のような姿へと変化致しました。


 不死鳥(フェニックス)には、その名の通り死が御座いません。しかし、長く生きれば生きる程その身の持つ膨大な力を押さえ付けられなくなります。

 最終的には辺り一帯を吹き飛ばし、再び然程力の無い小鳥にまで生まれ変わるのです。

 けれども、その時の衝撃で大災害が発生し、世界中が大きな被害に見舞われてしまいます。

 不死鳥(フェニックス)の真の狙いとは、世界中に大災害を齋す前に小さな被害を与えて自分を討伐出来る者を誘き出し、己を殺させて穏便に生まれ変わりを果たそうというものだったのです。

 とは言え、不死鳥(フェニックス)の方としても神獣とも呼ばれるプライドが有りました。本気で戦い実力で自分を倒せる者でないといけなかった。

 勇者ナナミは見事その役目を果たしたのです。

 その副産物として、全身に不死鳥(フェニックス)の血を浴びたスフナキンは若返ったのです。


 しかし、猛毒でもある不死鳥(フェニックス)の血は、若返りの見返りとして、元来スフナキンが持つ寿命の半分を削りました。

 ですが、その時のスフナキンは既に124歳、寿命が半分削られたとしても、次の人生62歳までは確実に生きられます。寧ろ普通の寿命に戻ったとも言えるでしょう。

 そして魔王討伐後、勇者ナナミと大賢者スフナキンは婚姻して夫婦となり、特に魔王魔物被害の大きかったポリアンナの地に王国、後の世界最大の大国であるポリアンナ帝国を建国致しましたとさ。めでたしめでたし。


 でも、こんなお伽噺を本当に実行してしまわれたのでしょうか。(にわか)には信じられません。

 それに、不死鳥(フェニックス)は勇者ナナミ率いる最強パーティーだったからこそ討伐出来ました。

 いくらインジャン様と言えども、お一人で不死鳥(フェニックス)と対峙なさるなど、自殺以外の何者でも無いように思えます。


不死鳥(フェニックス)の血を飲むなんて、そんな無謀な真似を……それに十中八九、いえ、普通に考えれば確実に生きては帰れないのに……」

「そうでも無いぞ」

「と、仰るには、何か勝算がお有りだったのですか?」

「ああ、セーラよ。儂がポリアンナ帝国の相談役を担っておるのは知っておろう?」

「はい、存じ上げております」


 ここで、またまたお思いも寄らなかった衝撃の事実が明かされました。


「儂の本名は、インジャン・ポリアンナ。五代前のポリアンナ帝国第三皇子だったんじゃからの」

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