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ステージ2

父さんは僕が話終えるまで、うんうんと何も言わず、相槌のみで話を聞いてくれた。

僕が家についてから聞いた話を父さんに一気に話終えると、父さんはうん、うん、と首を縦に二回振った。

「状況は分かった。話してくれてありがとうヨージ。これからは大人で話を進めていく」

「大人ってどういうこと?」

「知り合いに警察がいるんだ。ちょっと内々ではなしをしてみようとおもう。ヨージは母さんについていてくれ」

なんだか父さんに「大人で話を」と言われ、僕は力不足だと、要らないと言われた気がした。

「警察が犯人だったら?」

思わず父さんに反抗的な言葉か出た。

「どういことだ?」

父さんは今にもその警察のひとの知り合いに電話を掛けようとスマートフォンの画面を指でなぞっていた。

「確かに、それもある」

父さんが僕に向き直って、真っ直ぐ見て言った。

「そのときはそのときだ」

父さんが力強く言う。

「それに犯人がわかる方が嬉しいじゃないか、ヨージ」

父さんの目元がまた皺で緩む。

一瞬スマートフォンの画面を一瞥して、知り合いの電話番号が見つかったのか、画面を耳に当てた。

そして、

「犯人がわかったら、あとはそいつを二度と世の中に出れないように教育してやるだけさ。汚い仕事は大人に任せておけよ、な、ヨージ」

目元に皺を作り、白い歯を覗かせて言った。

僕は背筋がすっと凍るような気分を感じた。

「あ、もしもし?俺だけど…」

父さんは警察の友人らしきひととそのまま玄関で話始めた。

僕は気を遣って、その場を離れた。

リビングには母さんがいるから、一旦父さんが協力してくれることを報告しにいこう。

ソファに座る母さんの後ろ姿を見た。

髪を後ろで団子にひとまとめにしている。

長い黒髪や健康的なうなじは間もなく40歳を越える女性のものとは思えないほど、洗練されていた。

昨日見た可南子のうなじにそっくりだ、やっぱり親子なんだなと思った。

そのとき、僕の頭の中で何かが弾けた。

何かが引っ掛かる。

なんだ?この違和感は?

喉元まで来ているのに、出ない餅のように、確実にそこにあるのに出てくれない。

なんだ?

考えるんだ。

なんだなんだ?

思い出せ、絞り出せ、考え出せ。

1分ほどだった。

後ろで父さんの声が玄関を反響して聞こえる。

母さんは変わらずきれいなうなじを僕に見せていてくれている。

寝ているのか、びくとも動かなかった。

その瞬間だった。

「…あれだ…」

思わず声が出た。

頭の中のイメージが繋がった。

やっぱり、そうだ。

これが決め手だ。

僕は出てきたイメージに興奮をしていた。

顔が紅潮しているのが分かる。

ポケットに入っていたスマートフォンを急いで取り出し、画面に写し出されている画像フォルダをすぐにタップした。

そこには、先ほど見た監視カメラの映像よりもかなり鮮明な画像が何枚も入っていた。

(アイリ、すごいぞ、お前天才だ)

犯人の顔もしっかり分かる。

きっとアイリことだから、もう顔認証で誰かと照合を取っているはずだ。

(…その前に)

僕はこの背の低い娘が可南子である確証が必要だ。

震える指で画面に触れる。

画像を人差し指と中指で拡大をする。

拡大しているのは、顔ではなく…

(やっぱり…ビンゴだ…!)

可南子らしき女の子は映像の中でも終始カメラの方を見ることなく、真っ直ぐカメラとは逆の方向を向いているため、顔は全く分からなかった。

(…これは、可南子に間違いない)

僕はスマートフォンをスリープモードにして、急いで部屋に向かった。

父さんはまだ電話で話し込んでいるようだった。

部屋に入るなり、ドアを閉めるのと同時に僕は声高に言った。

「アイリ、ありがとう。この監視カメラにいるのは可南子で間違いない。犯人の居場所とか、正体とか分かったら教えてくれ」

「ヨージなんでこの子が可南子ちゃんだとわかったの?」

「それはな」

僕は画像をまた拡大しながら言った。

「首の湿疹だ」

「首の湿疹?」

「そうだ、昨日可南子は友達と歩行者天国に行くと言って、母さんに頼んでお洒落にポニーテールにしていた。そのとき僕は可南子の首に2つ湿疹があるのに気づいていたんだ」

「そんなの、偶然かもしれないわよ」

「そうだ、そうかもしれない。だがいまは夏だ。蚊もそんなにいない。二ヶ所刺されるなんて偶然だ。それにまだ証拠はある」

「証拠?」

「可南子は父さんと同じところにほくろがあるんだ」

「なるほどね」

「父さんと可南子のほくろは珍しいんだ。父さんの遺伝だと思うけれど、両耳の耳たぶの後ろのところな一点ずつほくろがあってね、よくピアスをしているように見えるって言ってるんだ。学校では友達に自慢できるけどねって。父さんも昔は先生に注意されてたみたいだけど」

画像の中の女の子の後ろ姿からしっかりと捉えることができる、2つの耳のほくろ。

「これで、可南子が連れ去られていることは立証できた。次は犯人探しだ。警察が早いか、僕らが早いか勝負だな」

「楽しそうね、ヨージ」

「不謹慎だな。でもなんだか興奮が止まらないなんだ」


そして僕らの捜査はステージ2に向かう。



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