海に伸びる蔦
美しい神々の海に身を投げる夢
細かな泡が眼球を撫でては
流木のような爪先に酸素を灯す
嗚呼 あの日君は死んだのだ
何の美学も哲学も持たない事故で
可哀想な事故で
夢のような一言だったよ
「助かりません」
脱線事故のニュースが国中に降りかかる
放射能のように降りかかる
彼女は電車に乗らない
腕の中の彼女は完全だ
泥のように眠る彼女
子兎のようにやわらかな彼女
その呆れるほどに長い内臓や血管
もう立てない足、足りない指
足りない心臓
疲れて眠る彼女
僕達は身を投げた
神々の海に 深海に届くだろうか
ひとりと半分は海になったよ