41話 早すぎる解決
社長と歌姫、二人がそこから出たころには僕はもう事件を解決、『犯人』を追い詰め、連行していた。
歌姫はものすごい驚いていたけど、社長は片眉を上げただけだった。まあ、とうぜんったら当然か。
先生も『奇跡的に』助かったようで、歌姫たちとは別に運ばれていった。
『そういうことになった。』
僕は出てきた二人を向かえ、少しだけ仲の良くなった二人を少しだけ微笑むと、先生のもとへ、『監視室』へと歩いていった。
「で?こんな筋書きでいいんですか?先生。」
最初に来たときにおっさんが座っていた古ぼけた回転式のいすに座りながら振り向いたのは先生―――『K』だ。
その姿は、無傷。さっき見た血だらけ、穴だらけの姿とはまるで違う、凛としたいつもの先生だ。
「ま、多少強引だったが目的は達せられたんだ。これでいいだろう。」
そうですか、とつぶやくと、僕はため息混じりに背伸びをしてこきこきと首の骨を鳴らす。
「・・・・それにしても。」
先生が僕を見てつぶやいた。先生も少々ため息混じりに僕に聞いた。
「どうやって気づいた?『この事件がやらせではったり、ある意味でのドッキリ』だと?」
「別に、たいしたことじゃないですよ?」
いいからいってみろ、と促されたので、先ほど考えていた僕の推理を・・・推論を説明することにした。指を一つ折って、
「まず第一に、先生と社長の事件への取り組み方。まじめさが足りなすぎですよ、特に僕ら子供の安全を守る必要のあるはずの年長二人だってのに。第一本気で探そうって言うなら探偵を呼ぶ暇があったら、他にたよるほうが手っ取り早いです。」
まぁたしかにな、と先生は笑った。
中指を折って、
「第二に、社長の話し方。話に詰まると、先生に説明を預けようとする姿勢がちらほら見えた、ってとこですね。状況を一番詳しく知っているはずの社長さんがまるで関係のないところまで『話をあわせていたかのように』話をふっていたってところですかね。」
よく観察してるなと先生がふふ、と笑ったままいった。
僕はもう一つ指を折って、
「第三、これが一番、てわけでもないですね、でもかなり僕の中では重要な要素です。先生が、警察に捕まるレベルの犯人ごときに不覚を取るはずがない、ってことです。」
絶対にありえない、と僕は断言しよう。
「・・・・・・それは、・・・まぁうれしいが、なんだかな、それ自体が理由にはならないだろう。」
「まぁそうですけど、一番疑う要素になったのはたぶん、それですよ?それに、ここは最新の死体や映像を流せるところ、でしたしね。」
「待てよ?・・・・だが、今までのことで疑うといっても、この答えは出ないはずだ。ヒントなどないぞ、その中には。」
いぶかしげに先生は言う。
「はい、ないですよ、その中には。・・・四つ目、これがブラフ、はったりだって言う証拠でしたね。」
「・・??・・・言ってみろ。」
僕はこの監視室のある映像を指差す。
「僕は一度ここに来てですね、見ちゃったんですよ。ニュースで犯人、木下 輝明が、警察に再逮捕されてるのを。」
指差したのは普通のテレビ。おっさんが暇つぶしに見ていた、ただのテレビだ。僕が見たちょうどそのとき、その番組で、やっていたのだ。
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・。」
沈黙―。
「ここには電波が通らないから携帯も使えないし、テレビも置いてはいないと聞いていたんだが・・・・。」
「なんだか知らないですけど、監視のおっさんさまさまでしたね。僕としては。」
・・・・あ、先生がへこんだ。ずーんてなってるね。
「・・・・。まぁ、お前にはばれたが、目的自体は達成されたからよしとするか・・・。あぁ、目的について説明してなかったな、聞きたいか?」
「いえ。そっちも大体予測ついてますし。たぶん、社長と歌姫のため、でしょう?」
「・・・理由は?」
「確証はまったくないんですけどね、今日は歌姫の誕生日で、歌姫はお化け屋敷が大好きで、父親と離別しているらしい。んで、社長と歌姫はなんか仲悪くて、社長は何の関係もないはずの、歌姫を招待した。他に招待されたのは僕らだけだってのにね。」
言葉を切ってここで整理。追加要素を導き出す。
「ここに、社長が意図的に歌姫をだまそうとしている、って言う要素を加える。そのうそは僕的にはすごく嫌いなうそだけども、お化け屋敷で怖がらせる目的での嘘。お化け屋敷という場所をもっと面白くする、怖いっていう要素をつくった。」
んでこれらを足す。
「ってなると、あとは推論を当てはめてけば、確証はないけども推論は出てきますね。社長が歌姫の父親で、歌姫を誕生日に大好きなお化け屋敷で楽しませようとしている。・・・・・つまりはたぶん、復縁を望んでるってとこかな。少なくとも、仲直りしたいっていう意味は入ってると思うんですけど。」
「・・・・・・・・・・大正解だよ、まったく。」
はぁあ、と先生は息を吐いた。
「先生にしてはお粗末な感じでしたけど、何でですか?」
「私としてもこの案は没にしようと思っていたんだが、エニシダ、社長がこれが言いの一点張りでな。しかたないからそれに私が少しずつ修正を加えたら、ああなったわけだ。」
頭を抑えて先生はぶつくさと社長に対する文句をぶちぶちといっていた。なんつうか、板面に失敗した悪がきみたいな感じで、とても大人には見えない。
「まぁいい、今回は私の負けだな。・・・・。・・・・久しぶりに負けたな、私も。」
負けとは言いつつも、監視カメラに映る親子を眺め、息を吐いた。
「・・・・帰るか、狂人。」
「そうですね。」
僕らは、二人に気づかれないようにひっそりと姿をくらました。
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お父さん、ところでさ、あのキョウジンて人ってばどういう人なの?
気になるって言うか・・・、うん、まぁ私としては嫌いじゃない、むしろ好感持ってるけどって落ち着いて!?別に何があったて分けでもないからね!!なんかもうどこにいるかもわからないんだから!!
ふう、やっと落ち着いてくれたわね・・・。なんかもう、いまさら父親がましいって言うか、出てけっ!!!とか行って私を追い出したのはそっちの方だってのに・・・。
え?実はよくわからない?・・・・ふ〜ん。
いやいや、別にへんなこと考えてるわけじゃないのよ?ただ・・・
うん、なんかね、あの『K』さん?・・・が怪我しているの見たときね、キョウジン、彼の目がさ、・・・。
あ、お父さんも気づいてた?そうだよね、『黒い瞳が真っ赤に染まって』て、暗い中ですっごい目立ってたのよね。
ほんと、何者なのかしら・・・。あの人。ちょっと怖いけどね、知るの。
・・・でも、いつかもう一回会いたいかな、キョウジンさんに。結構いい人だったような気がするし。
ほらほら、ぶーたれてないで帰ろ、家にさ。
・・・っふふ、子供みたい。
はぁ、今日は一日、すっごい派手な一日だったな・・・。一生忘れられそうにないな悪い意味でも・・・・いい意味でも。
五日目、終了
夢への思い、変わらず
現実への絶望、減少
自分への絶望、変わらず
狂エル者≪思考の高速処理≫覚醒
::::::思考速度が数倍に跳ね上がる。使用時、瞳が真紅に染まる。::::::
むむむむ、なんだかこの教人エピソード、教人の影が薄いですねぇ…。
おっかしぃなぁ。歌姫を前に出しすぎましたね…。まぁ脳内プロット通りなんですがね。
まだこの長編の始まりなだけなのにくじけそうです。いやいや、頑張りますよ?時間かかりそうですけど。
さて話は変わって次は夢の話。
いやはやこの夢の世界、説明不足なんですよね。よってここで説明しときます。
面倒だなぁって思う人は読み飛ばし推奨。
夢の世界、世界観。
サンサたちのいる大陸はオーストラリア型で、大きさは関東地方くらい。日本と同じく四季があり、ヴァンがくるのは夏の白い花の咲く時期。サンサたちが住んでいるのはその大陸の半分を統べるバルクホン帝国、その中央都市から少し離れたとこにある街の郊外。
常識。
エンシェント以外に魔法は存在しない。よってゴーレムを日常に生かして生活しているため、エンシェントを習う人は多い。しかし才能に左右されるため、うまく使える人は少ない。母親やクロサムが戦ったように戦争にもよく使用されており、エンシェント使いはよくかり出される。
まぁこんなとこですかね。他は少しずつ入れていきます。