35話 黒き影踊る屋敷へ
オオオオォォォォォォォォォォォォォォォ・・・・・・・・・・・・・
さっきの場所から少し歩いた僕らは黒々しい洋館の前にたどり着いた。窓の端から黒い何かがゆっくり立ち上って消えていっているのがとっても印象的だ。なぜかその煙には現実味がなく、薄ら寒い何かをかもし出していて、心なしか洋館のほうから人間のものでも機械で作ったでものでもないような底冷えする音が響いてきている。
「先生・・・、マジでここに入るんですか?」
「当たり前だ。なんだ、怖くなったのか?」
「それ以前にまず、黒いオーラが立ち上ってる気がするんですけど。しかも得体の知れない効果音がしてますし。」
「最新のバーチャル映像技術と音響技術を駆使してますからね、臨場感たっぷりです。楽しそうでしょう?」
ふふんっと社長。いらないことを・・・・・。
「だ、そうだぞ?狂人。楽しそうだろ?」
いやむしろですねぇ・・・。
「・・・ぶっちゃけこのバーチャル映像を取っ払ったほうが見つけられるんじゃないですかね?犯人。」
割と正論を言ってるはずなんだけどなぁ・・・。なんだろうこの反応。
「あの、みんなして、えぇぇ・・・って感じの目線で見ないでくださいよ。事実そうでしょうに。」
「狂人さんって・・・・臆病なんですね。見損ないました。」
「ありえませんね、仮にも男の子でしょうに・・・。顔は女の子みたいにかわいいですが。」
おい、そこの二人、仲悪いんだか良いんだかどっちかにしてくれよ。つかかわいそうなものを見る目で僕を見ないでくれよ、正論は正論なんだし。
なんてため息をついていたら『K』が僕に声をかけてきた。
「ふふふ、狂人。バーチャル映像を取っ払わない理由はきちんとあるんだぞ?・・・・・・・・・・まず第一にだ、止めてしまえば犯人に気づかれる恐れがある。・・・第二に、犯人の隠れるところを誘導したい、ということだ。」
「一つ目は・・・・まぁわかりますけど・・・。その二つ目の理由ってばどういうことですか?」
と社長、確かに誘導っていうとわけわからんね実際。ま。、大体予想つくけど。
「そのままにしておけば、少し頭の回る人間ならあの映像たちにまぎれているほうが見つからないと踏むだろう。身を潜めるといったって、壁の隅とかそういうところに隠れているわけにも行かないしな。お化けの中に人型がいたとしても不思議はない。そして隔離されたお化け屋敷という空間から離脱するために客にまぎれて逃走をはかる、とそういう形に持って行きたい訳だ。」
自信満々に先生が演説をする。え〜っと・・・ま、いっか。
「・・・・・まぁ・・・はい。わかりましたよ、行けばいいんでしょう?行けば。」
このまま先生と話していても埒が明かない気もするし、そのうち洗脳とかしてきそうなのでとりあえずここらであきらめる。どうせ先生のことだから僕らには言わない何かを隠しながらの説明なんだろうし。その辺は慣れっこさ〜・・・はぁ。
社長と歌姫が二人そろって先生にナイス!!って感じの顔をしてたのは気のせいだろう・・・・と思っておくことにした。
ギギギィィィィ・・・・・・・・と地獄への摩天楼は開かれ、僕らはそこへいざなわれたのであった。