32話 夢 サンサの苦悩
「はぁ・・・・・・・。」
・・・お?・・・・・・・夢か。しかもこのため息は・・・・サンサだな。どうやら僕の肩に乗って考えごとをしているらしく虚空を見つめている。とっても憂鬱そうだ。
・・・あれ?なんで僕寝てんだっけ・・・・・、おっかしいなぁ、思い出したくないと僕の魂が叫んでるやぁ・・・・・・・あはは・・・・。あ〜、空が青いなぁ・・・・。
「ねぇ、ヴァン。」
横合いから声。サンサだ。どうやらこの場にはサンサ1人のようで、独り言をつぶやくように言葉を発している。
「意識がないのはわかってるけどさ・・・・、聞いてくれるといいな。」
ふぅ、と下を見てため息をもう一度ついた。どうやら悩みの相談に来たらしい。・・・返事を返してやりたいがなぜか声を出せないので観念する。
「私、エンシェントの才能ないのかなぁ・・・て思って。どの練習もクルが勝っちゃうし、クルなら教えられたことすぐ理解しちゃうの。私は良くわかんなくてもたついちゃうし、お父さんも私に教えるの大変そうなの・・・。」
うう・・・っと、軽く涙目になってきているサンサ。
すぐ近くで見てるとわかるのだが今の年齢は中学生程度・・・・13歳ぐらいだ。初めて出会ったときは肩までの髪だったけど、今では腰までの髪を背中辺りからリボンでまとめている。いつのまにかこんなに大きくなってしまったようだ。・・・・まぁ1日=1年の比率で時間が流れているようで、その事実を今はじめて実感できた。
僕はクロサムと同じように、ゆったりとした優しい気持ちで見つめる。できれば相談に乗ってあげたいけど・・・・・
「ごめんね?愚痴ばっかりで・・・。ってヴァンは聞いてないんだもんね。・・・・・・。・・・・・・。・・・・。帰ろっかな・・・・。」
と言って肩を降りる。そうは言っても、サンサの目には涙がたまったままだった。そんなサンサに声をかけたくて、僕は必死に思いを伝えようと躍起になる。
(・・・。僕は・・・。)
(僕はここにいるよ・・・。)
(君の話を聞いているよ・・・・。)
伝えたい言葉も意味をなさず、頭の中をよぎるだけ・・・。こういうときに何もできない僕にいらだつ。
それでも、伝えたくて。
無責任だけど、それでも僕の精一杯の言葉を・・・・・
(・・・・がんばって・・・・・。)
「・・・・・・・・・・・・・ヴ・・・・ゥーン・・・・・・・。」
小さな、小さな、よもすれば聞こえないであろうヴァン特有の声がこだまする。・・・・サンサにも聞こえたようで、僕のほうを振り向いた。
「ヴァン?・・・・・・・・・・・・・・。あはは、ありがとね、ヴァン。」
サンサは優しく笑ってそうつぶやくと、草原を去っていった。