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 27話 夢『エンシェント』




夢。


慣れたもので、一目で見分けがついた。体が動かない感覚ですぐにわかってしまう。まぁ布団にはいったとこまではちゃんと覚えてるし、目が覚めたときにそこが僕の部屋じゃないならそりゃ見分けもつくものだ。


・・・けぇ!・・・・・・!!・・・・・だぁ!!!


・・・ん?今日はなんだか騒がしい・・・。・・・サンサとクルがいつもと違った口調で何かを叫んでる、みたいだな?これは・・・・クロサムみたいな・・・『エンシェント』?


目線を下げてみると、そこでは2人が5メートル程離れて立っていた。その間には・・・、人形?5体の人形がその間でもつれ合うように踊っていた。・・・あんまり人形が動いてるのを見ても驚かない自分に気づいた。まぁ僕自身がその人形と同じ存在なんだからそんなに驚けるわけもなく、とりあえずその人形を眺め続けた。


人形たちは・・・・戦ってるみたいだな。それぞれ持ってる武器が違ったりしている。


『行っけ〜!モモちゃん、ナナちゃん!!突撃ぃ!!!』


『なんの!槍兵、迎え撃て!!剣兵、囲めぇ!!』


やっぱりエンシェントらしい。どうやらクロサムは教える許可を出したみたいだ。見てるうちになんだかクルのほうが優勢なのがわかってきた。動き方がサンサより精密で、たぶん作戦とかを考えて動かしているんだろう。扱ってる人形は少ないのに確実に一体一体倒していっている。


ぱきゃらっ


「あぁ〜!また負けたのぉ!?」


「へへん!楽勝〜!!」


ガッツポーズするクルに頭を抱えるサンサ。


「・・・・む〜。」


なんてサンサがかわいらしく頬を膨らませている。


「?・・・・・ヴァン!!やっと来たんだぁ!!!」


「ヴゥン!」(ちわ〜!)


「ほんとだぁ!!ヴァ〜ン、今の見てた〜!?私たちねぇ」


「エンシェント、習えることになったんだ。あの狼とかの一件で父さんが考え直してくれたんだよ。」


「あぁ!私のセリフとった!!ひどい〜。」


「ヴ、ヴゥ〜ン・・・・。」(あははは・・・。)


笑うしかない。完全にクルにおちょくられてるサンサは、またいっそう膨れている。


「さっきも見てただろうけどさ、ボクは今んとこ勝ちっぱなしなんだぜ〜!!」


「で、でもね、私はクルよりももっとたくさんのゴーレム操れるもん!!全部つかったら私が勝つもん!!!」


「ん〜!?言ったなぁ!?じゃあ後でもう一回勝負だ!!」


むむむ、と2人でにらみ合い。顔立ちがどちらもかわいらしくてそんなに怖いって言うか、嫌な雰囲気には見えない。といっても別にけんかしてるわけでもなさそうだしね。いや、でも一応止めとくか、年長者だしね。


「ヴゥンヴゥン。」(まぁまぁ。)


「「ヴァンは黙ってて!!」」


「・・・ヴゥン。」(・・・はい。)


「じゃあほら、そのゴーレム5体も使っていいからさ。もう一回勝負しようじゃん。」


「いいわよぉ。『ほら立って。モモちゃんたち、ナナちゃんたち!』


カタカタカタ、と音を立てて人形たちが立ち上がる。合計で8体のゴーレムを使うようだ。対するクルは3体。全てクルの前で整列している。比べてサンサのゴーレムは少しだけふらふらしているようにも見えるが、数が多いだけにどちらが勝つかはわからない、というのが僕の見解だ。


「ヴゥ〜・・・・・ン、ヴゥン!!!」(位置についてぇ・・・・始め!!!)


『行けぇモモちゃんたち!!ナナちゃんは右から攻撃ぃ!!!』


剣を持った兵隊、通称モモちゃんが大きく迂回して攻める。そのまま直進した槍を持つナナちゃんとちょうどクルの人形たちのところで交差するように進んだ。


「う〜ん、そう来るか・・・『全兵後退!』


目標が下がってしまったせいでサンサの人形たちがそれぞれぶつかる、といってもそれだけで人形たちがやられてしまうわけではないらしく、サンサの人形たちは一塊になってしまった。


「えぇ〜!?逃げたぁ!?む〜、『そのまま追撃!!』


かたかた、とゆれるとクルの人形を追ってひとつの固まりになった人形たちが追い始める。クルとの距離はすぐに追いついた。


『みんな!行っけ〜!!!』


勢いづいたサンサがさらに追撃の命令を出し、突撃体制に移っていった。


「やばぁ!!『迂回しろ!』


と言ってさらに下がる。・・・クルは勝つ気あるのか?逃げてばっかだし。今回は少しだけ斜めに下がり、またそこから直角に下がった。


サンサはそのまままっすぐ追わせ・・・







ばきゃらっと音を立てて人形たちが崩れ落ちた。


「あぁっ!?」


「はい、もう僕の勝ちはきまったもんだね。いや〜、残念だったね。」


・・・・どうやらそこに穴ぼこ(たぶん前に僕が暴れてあけた穴だ)があってサンサの人形たちは誘い込まれ、そこに落ちたらしい。地形をうまく使ったクルの作戦勝ちというわけだ。クルはそのままあがってくる人形たちを掃討し、当然のように勝利した。


「うぅぅぅぅ・・・・・。せっかくヴァンにいいとこ見せようとしたのにぃ〜・・・。」


・・・泣き出したしまった。クル、大ピンチ。いじめっ子の構図が完成してしまった。さっきの作戦勝ちもなんだかむしろ卑怯、というニュアンスが似合う感じになった。


「お、おい。泣くなよぉ・・・・。うう、ボクが悪かったからさぁ・・・。」


「・・・・・ヴゥ〜ン」(・・・・・大人気ないなぁ。)


「・・・・よくわかんないけどヴァンに抗議されてるような気がするよ〜。」


「クルなんかもう知らない!!」


って言って駆け出すサンサ。・・・クル、不憫な・・・。


「ま、待ってくれよぉ〜。・・・ごめん、ヴァン。僕も行くよ!!」


と言いつつさっきまで使ってた人形をきちんとエンシェントを活用して担いでいく。



(苦労してんだなぁ・・・、クル。)









(・・・・あれ?僕めッちゃ暇になったじゃん・・・。もしかして起きるまでこのまま?)







(・・・えぇ〜。)








しばらく空を眺めてぼ〜っとしている僕に声がかかった。


『ヴァン、来てるらしいことを聞きました。久しぶりですね。』


・・・クロサムだ。・・・そういえば確かに最近は見てなかったような気もする。


「ヴゥ〜ン。」(お久しぶりです。)


『・・・2人のこと、ありがとうございます。すみませんでした、あの子達を助けてくれたらしく・・・。』


「・・・・・ヴゥ〜ン・・・。」(・・・それは、まぁ。)


助けた、と言っても僕はあの子達にひどいことをしたのに変わりはなくて。

どうしても歯切れの悪い返事になってしまう。そんな僕を察したのかクロサムはそのまま話を続ける。


『私も今の仕事が忙しくて。あの子達を置いて城に出かけなくちゃならなくなってしまって。仕方ないからエンシェントを教えて自分の身を守らせることにしたんです。』


「ヴゥ〜ン・・・。」(そうなんですか・・・。)


『・・・・・・。申し訳ない。今のは忘れてください、嘘なんです。』


「ヴ?」(え?)


『本当は私はあの子達に教える気なんてなかったんですよ。ヴァン・・・、私の妻の名なんですけどね?ヴァンはエンシェントを使えるばっかりに戦場に駆り出され続けて、その果てに死んだんです。・・・・・・あの子たちにはそんなことになってほしくないんです。』


「ヴゥ〜ン。」


やっぱりその考えに変わりはなくて、今でも後悔しているらしい。


『でも、あの子達に聞かされたんですよ、私が記憶の中に埋もれさせてた妻の遺言みたいな言葉を。』


・・・・。


『・・・・・、私はエンシェントが大好き。・・・もちろんあなたたちも大好きよ?でもね、私はエンシェントが一番好きなの。エンシェントは私をクロサムに出会わせたし、そのおかげでサンサとクルが生まれた。・・・・私の幸せはみんな、エンシェントが連れてきたのよ。・・・だから、絶対あなたたちにもエンシェントをやってもらいたいの。そして、好きになってほしい。私みたいに、エンシェントを大好きになってほしいの。と、いうことです。』


いったん切って、クロサムは続けた。


『サンサがそう、私に思い出させたんですよ。・・・。・・・・。サンサはもう、妻にすごい似てまして・・・。まるで本当にヴァンから言われたような気がして・・・。』


はぁ、とため息をついてその後復帰田笑みを見せた。


『結局、私の根負けです。違う道、歩ませたかったんですけどねぇ・・・。』


「・・・・ヴゥ・・・ン。」(・・・そう・・なんですか。)


その後、ぽつぽつと2人について話してくれた。


白い髪は母親譲りで顔立ちはクルがクロサム似、サンサが母親似。サンサは赤ん坊のころから元気が良くて困らせられた。ヴァンが死んだのがクルが5歳でサンサが4歳のころ。もう7年も前のことで、そんなに月日が経ったんだな、とクロサムは遠い目をし、続ける。


『・・・そうだ。知っていましたか?』


「ヴゥン?」(何のことですか?)


『あの狼のことです。実はクル、あの子が狙ってやったことなんですよ。・・・・私がエンシェントを教えないことを心変わりさせるために自分たちが襲われて大変なことになれば、自衛のために教えてもらえるようになるだろう、っということらしいです。』


え゛?・・・・どういうこと?あんなに大変で、切羽詰ってたのに・・・。


『・・・あそこまでいっぱい集まるとは思ってなかったし、そもそもどうやって助かるか考えてなかったらしくて・・・。結局はヴァンに助けられたのでことなき事を得ましたが。・・・・まぁ、思いっきり叱っときましたから、許してあげてください。』


・・・はぁ。・・・、クル・・・。なんて無茶するんだよ・・・。本当に、助かってよかった・・・。・・・はははっ。


『あの子は昔から頭はすぐ回るのに、変なところで失敗しやすくて・・・、そうだ、こんなこともあったんですよ。あれは・・・・・』




・・・クロサムは本当にあの子達のことが大好きなんだなぁ、と僕は話を聞きながら思った。




もうちょっとかかってしまうんでお待ちください。

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