1話 平凡な少年の夢
暖かい日差しが草原を照らしている。白い花が咲き誇っているその場所で、6〜7歳だろう小さな男の子と女の子が走り回っているのをゆっくりと眺めた。
少し高いところからそれを眺めているせいかな、子供たちがすごく小さく見える。
(・・・それにしても、本当・・・ここはどこなんだろ、見たことのない場所だなぁ。)
さっきまではベットで寝ていたはずなんだけどが、気がついたらここにいた。体は動かないし、声も出ない。やることといったら考えることと子供たちを眺めることだけ。
状況的に夢なのかなぁ、なんて思う。実際花畑なはずなのに匂いはしないし、子供たちの服を揺らすやわらかい風も太陽の光も実感することができない。でも、視界全体に広がる草原、花、子供たち、青空すべてが現実に近しい存在感を放っている。それに、今感じている意識もいつもの僕のもので、この終わらない夢に不満を持っている。・・・・・・・う〜ん。いったいどういうことなんだろう。なんなんだろうな、ここ。・・・まさか僕、現実に飽き飽きして夢に逃避してたりするのか!?いや、・・・そこまで思いつめてはないと思うんだけどなぁ・・・。・・・うう、それにしても・・・。
・・・はぁ、そろそろこの状態になって一時間たつんじゃないかなぁ。
(・・・暇だ・・・。)
暇があったらゲームばっかりやっていた僕にとっては実はかなりつらい。その辺のおじいさんに言ったら最近の若い者は・・・と嘆かれそうなほどの耐久力のなさ。RPGならスライムにすらなすすべなく倒されるぐらいのHPだってのに・・・。むごい。
考えに耽っていたボクの目の前に女の子の顔がアップでうつる。
(のわあ!?)
なんなんだ!?この子?!いったい何なんだ!??・・・って、何をあせってるんだろう僕は・・・。別に6〜7歳の子供をわけのわからない夢だからってそこまで驚かなくってもよかったか。うーん、失敗失敗。
(・・・・・・)
(・・・・・・)
(それにしても・・・)
きれいな娘だなぁ、と思う。小さな子供特有のかわいらしさが満面の笑みから伝わってくるし、その顔にはシミひとつない。辺りに咲いている白い花のようなきれいな顔は今まで見てきたどの顔よりもきれいに見える。肩までかかる髪はしなやかで、その色は白い。染めている・・・のかな。
(う〜ん、それはないかなぁ・・・見る限り地毛なんだよなぁ。)
女の子は、後ろを向いて何かを言っているようだ。よく聞こえないが、もしかしたら男の子のほうを呼んでいるのかもしれない。
少しすると、男の子が隣に並んで僕を覗き込んだ。その男の子も髪が白く、顔立ちが整っている。こちらはやっぱりかわいらしさもあるけど、少年らしい快活な笑みを浮かべている。双子・・・もしくは兄妹なんだろう。髪の長さは違うけど顔はそっくりなんだし。
二人とも僕を見ながらにニコニコ笑うと視界の端、おでこ辺りだろうか、そこにキスをしてきた。
感触なんてないのにおわっと内心声を上げた僕を置いて二人とも笑いながらその場を離れていった。
二人の消えた少し寂しそうな草原の風景の中で、
・・・ゆっくりと眠るように・・・
僕の意識は・・・・・・落ちていった。




