16話 夢 語らう者と
(・・・・・。)
来てしまった・・・・。できれば、もうサンサとクルの前には現れたくなかったのに・・・。ぞわと昨日の光景がフラッシュバックして僕の背筋を凍らせる。・・・2人はまだ10歳かそこらで、何かが死ぬなんてほとんど見たことがないはずなのに、僕は殺した。たくさん殺した。殺して、血を浴びて、2人にも血がかかって。2人は震えて縮こまっていて。トラウマになってもしょうがないことをしてしまった・・・。
たぶん・・・、あの子達がここに来ることはなくなってしまったんだろうな・・・。
きぃん・・・・
『・・・・後悔?』
違う、後悔なんてしていない。僕はあの子達を助けられたんだから。
『・・・・恨んでる?』
誰を恨めるってんだよこんな僕が・・・。いや・・・そうだな。・・・狂ってる僕自身のことは・・・・すごく恨めしい。
『・・・これから、どうする?』
・・・何にもやらないし、できない。もともとクロサムの『エンシェント』がなくちゃ動けない体で、あの人ももう来ないだろう。そんなこと考えても無駄だ。
きぃん・・・
『でもね・・・』
『あなたのせいなんかじゃない・・・。』
『すべての原因は私・・・・・。』
『だから、ね。・・・・あの子達を信じてあげて・・・・。あなたも、あの子たちも・・・何も悪くない・・・。』
『あの子達を・・・・お願い・・・ヴァン・・・。』
きぃん・・・・
信じろって・・・・そういう問題じゃない・・・。僕が嫌われるのはどこも同じで・・・。サンサもクルも離れていったんだ。
『・・・じゃあ、・・・・あのあかるさんは?あなたの先生は?・・・あなたが嫌われることが当たり前なんて・・・・そんなこと、ないのよ・・・?』
うるさい・・・・。うるさい・・、うるさい、うるさいうるさいうるさい!誰だか知らないけどあんたなんかに何がわかるってんだよ!!僕だって・・・僕だってそう思いたいけどさぁ!
(あんたは僕がどんな思いをしてきたかだってわかんないだろ!!)
『わかるわ・・・。あなたは、優しい・・・。それに、ほら。』
「「・・・・・・・・ヴァン・・・。」」
・・・・サンサと・・・クル?どうして・・・?
「・・・・僕ら、1年かけて後悔してたんだ・・・。」
「私たち・・・・ヴァンにひどいことした。」
「ヴァンに助けてって言ったのは僕らなのに・・・。」
(・・・・・・どうしてだよ・・・。)
「ヴゥ・・・・ン・・・。」
「ごめん・・・、ヴァン・・・。」
「ヴァン・・・・ごめん・・・・な・・さい・・・・・。」
(悪いのは僕なのに・・・・・・。)
どうして2人が泣いてるんだよ・・・・・。2人は・・・ぜんぜん悪くないのに・・・・。
「だから・・・・私たちから・・・。」「だから・・・・僕たちから・・・。」
「離れていかないでよ・・・・家族がいなくなるのは・・・・もう・・・たくさんなんだ・・・。」
「ヴァン・・・お願い・・・・。」
『本当に・・・本当にいい子達に・・・育ったのね・・・。』
『ヴァン、この子達を・・・許してあげて・・・。そして・・・自分を責めないで・・・。』
『あなたは、弱すぎるから・・・・。』
きぃん・・・
「・・・ヴゥ・・・ン。」(僕・・は・・・)
『ヴァン・・・それじゃあ・・・伝わらない。』
『抱きしめてあげて。そして・・・これからも・・・・』
「ヴァン・・・・・。」
「ヴァン・・・・ごめんね・・・。ごめんね・・・。」
腕の中で、2人は震えていた・・・。あの時とは違うのは少しだけ・・・、心があったかくなる、この気持ちだった。
『私は・・・そろそろ行くわ、時間もないし・・・。』
『ヴァン・・・もう一度だけ、言うわ・・・。』
『この子達を・・・助けてあげて・・・・。』
『この子達には・・・・・・あなたが必要なのよ・・・。』
ありがとう・・・ヴァン。この子達の・・・お母さん。
『・・・わかってたのね・・・。ふふ、・・・じゃあ・・・さよなら、ヴァン。』
三日目、終了。
夢への絶望、ほぼ消滅。
現実への絶望、大幅に減少。
・・・・自分への絶望、・・・変わらず。