13話 夢でも僕は
薄く延びる青い空・・・・・、に白い花で草原、夢だな。
はぁ、なんかここに来るのも慣れちゃったなぁ。そんなに大事件が起こるわけでもないし。(この夢自体が大事件だってんなら別だけど。)こっちのほうが現実だったらいいのに・・・。
あ、そうだ。サンサ、サンサたちはどうしたのかな?まだ・・・来てないっぽいけど。
(今日は来ないのかなぁ・・・。)
なんて落胆しかけたとき。
・・・・・・・・・きゃぁぁぁ!・・・・・・。
少し遠くから悲鳴が聞こえてきた。
(サンサ?)
・・・声?・・・しかも、サンサの?何、いったい何が?初めて聞いたサンサの悲鳴にすこしあせりはじめた僕をよそに、体はいつもどおり動かないし視界は誰も映らない。もどかしさでいっぱいな僕は内心地団太を踏んだ。
・・・うう、どうしようもない・・・。
・・・・・・サンサ、はやく・・・こっちだ・・・・
クルの声も聞こえた。一緒に・・・?何があったんだ?
「がぁぁぁぁぁ!!!」
なんか見えた?って犬?・・・・にしてはデカイ・・・。狼・・・だってこんなにでかくないだろ!!?・・・モンスターとか!?
「「ぐるるるるるぅぅ!!!」」
しかも1、2、3、4・・・・10匹以上いる!?・・・・サンサとクルが・・・危ない!?・・・動けないとか、言ってられない・・・!?くぅ・・・、動け!!頼む!!!うごけぇ!!!!
(くう・・・!!!!!)
やっぱり命令がないと・・・クロサムがいないと・・・動けないのかよ!?
「がぁ!!!」
「うわっ!」
「クル!?・・・きゃっ!?」
クル!!サンサ!!!・・・くそぉ・・・頼むよぉ・・・動けぇ・・・。頼むからぁ・・・。動け動け動け!!くそっくそっくそぉ!!!
「ヴァン・・・そうだヴァン!!ヴァン助けて!!クルが死んじゃうよぉ!?」
「ヴァン!!僕はいいから・・・サンサを・・・。くそ、こいつ!!」
僕にどうしろってんだよ!!!くそぉ!!!!!動いてくれよぉ!!!!!動けぇぇぇぇぇっ!!!!
きぃん・・・・
『サンサとクルを・・・、助けてあげて・・・。』
『ヴァン・・・、お願い・・・。どうか・・・、どうか・・・』
『お願い・・・。』
きぃん・・・・
誰の・・・声・・・だ?なんか、覚えてる・・・。・・あれ?・・か、体が・・・動く?動く・・・んだよな!?なら・・・そこの化けモンどもぉ!!!!!!
「オオオオオォォォォォーーーーーーーーン!!!!!!」
(どけぇぇぇぇぇぇ!!!!!!)
ズドンッと僕のいた場所の土がえぐれた。そりゃそうだ、僕がそこから跳んだんだから。サンサに向かっていこうとした狼もどきにおもいっきり岩でできた腕をたたきつける!超重量でたたきつぶされた狼は一瞬で絶命した。
(まず一匹ぃ!)
「きゃぃぃぃぃん・・・。」
クルの上にいたやつは僕に驚いてクルから一歩離れた。離れた、から。
どしゃっ!!と叩き潰す。はみ出た血が周囲に飛び散って僕の視界の端を汚す。
(次ぃ!!!)
近くで威嚇してるやつに横からフルスイング、ごぼっと音がして近くの森の幹に直撃して絶命。
大きな体を最大限利用して狼たちを殴り飛ばす。
その横のやつも同じく、今度は木に当たらず森の中に消えた。ぎゃふっと嫌な音が聞こえてきたのを尻目に次へ。
もう一匹は叩き潰して、次を潰して踏みつけて踏みつけて踏みつけて、今度は弾き飛ばして、磨り潰して磨り潰してちぎり捨てて!叩く、叩いて叩いて叩いて叩いて潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す!!
粉々に粉々に粉々に粉々に粉々にチリも残さないように粉みじんに跡形もなくこの場から消え去れ!消え去れ!消えてなくなってしまえ!!死ね!死ね!死ねぇ!!!!
(・・・サンサたちを傷つけられて・・・・・・・たまるか!!!)
しんと静寂が訪れる。この場にはもう、危害を加える敵はいない。
(・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・・・・、倒し、た?全部?)
「ヴ・・・ゥーン・・・。」
もう・・・いない?安全・・・か?あれ・・・・頭・・・痛い。なんだろ、あんまり動きすぎると頭痛が?いたたたたた・・・・。ううううううう・・・。
(そうだ、クルと・・・サンサ・・・。)
振り向いてサンサたちに手を差し出して・・・。
・・・。
・・・。
・・・・・・・。は、はは、は・・・・。そうか、・・・僕の差し出した無骨な手は血みどろで・・・。辺りの白い花はえぐれて血が飛び散って真っ赤になって・・・サンサとクルは僕が殺した狼の血をもろに浴びて・・・体中真っ赤になって僕を見てる・・・。・・・お、・・・おびえ・・・てるんだよな・・・そりゃそうだ・・・僕は『狂人』で・・・血まみれで・・・。あれ?ここじゃあ『狂人』なんて関係ない・・・?それで・・・も?やったことは・・・同じ・・・だもん・・・な。あ、はは、はははは・・・・・・。
2人を直視できない・・・。2人して僕を見て震えてる姿なんか・・・見れない・・・。
振り向いたすぐそばにあった湖を覗くと・・・赤黒い血にまみれた岩の巨人がいて・・・。頭にある不可思議なマークが僕をよりいっそう地獄の鬼のようなまがまがしさを出していて・・・。あの子達の下へはもう、いけないのかな・・・?僕は・・・
(・・・・・・。)
戻ろう。最初に座ってたところへ・・・。元の場所・・・現実に・・・。
『はぁ!?あいつがぁ?』
(・・・。そっか。・・・あっちも、同じだったんだっけ・・・。)
・・・は、はは。現実にも夢にも、居場所、なくなちゃったな・・・。
「・・・ヴゥ・・・ン。」(・・・僕は・・・・・・。)
2日目、終了。
現実への絶望、肥大化。
夢への絶望、肥大化。
・・・自分への絶望、肥大化。
実はひとつ書いてためてたやつを投稿という回りくどいやりかたしてたりします。
そのかわりにまあ、品質を上げていきますんで、どぞよろしく。