協力
「あー笑った。高木さんのことを本気で狙うなんてやっぱり信じられないわ。」奈緒はそう言いながら、残ったパフェを食べ終わる。
「で、これからどうアプローチしていくのよ?」
「えっ?」
「だってこれから本気だすんでしょ?高木さんめっちゃ人気あるから、うかうかしてたら他の男子に取られちゃうよ。」
確かに男子人気が学年トップクラスの麻衣さんだし、早く手を打たないと彼氏ができる可能性もある。しかも春休み中だし、アプローチするとしたら連絡して何かしら口実作って誘い出すしかないと健人は思った。
「いや、付き合うまでに絶対に超えないといけない壁だし、頑張るよ!」と健人は答えたが、「それじゃ健人はすぐ諦めると思うよ。」と一蹴された。
健人は少しムッとして、「いやいや、今回は本気だってさっきも言ったじゃん。」と返した途端、
「私、協力してあげようか!」と、唐突に奈緒が言ってきた。健人は、そう来ると思っておらず、「えっ?」としか返すことができなかった。
「私と同じテニス部の友達が高木さんと仲良いから、そこからお近づきになれると思うんだよね。私もその友達伝いで高木さんと遊んだこともあるし、いいと思うんだけどなあ。」と、奈緒はまるでセールスマンのようにアピールしてくる。
「確かにそれはありがたい。でもなんでそんなに俺に協力してくれるん?」
「健人の好きな人知ってるの私だけだし、運命共同体てことで!」
なんで私だけってなるんだ、と健人は思ったが、そこは間違えていないため、ツッコミは入れなかった。
先ほどの話を聞く限り、奈緒と麻衣さんは面識あるらしいし、いきなり二人で会うよりは何人かで遊ぶところから始めるほうが自然だなと健人は思った。ホント、おまじないの話抜きにしても、ここで話しといてよかった、と健人はホッとする。
「サンキューな。じゃあ協力頼むわ。」
「ちょっと、せっかく健人のお願いを受け入れてあげるんだからもうちょっと嬉しそうにしなさいよ。」
「かたじけない。」
「侍か!まあ良しとしよう!」奈緒は笑いながらそう答える。
健人は一通りのやり取りを終えた後、目標も達成したしそろそろ帰ろうかなと思い、スマホの時計を見た。時刻は17時前。奈緒と会って1時間半以上は喋っていることになり、こんな時間喋っていたのかと、改めて奈緒と喋っている時の時間が過ぎるスピードに驚く。
「もういい時間だし、そろそろ帰ろうか。」健人がそう言い、伝票を持って椅子から立ち上がろうとしたとき、
「ねえ。さっき協力するって言ったけど、やっぱ待って!条件つけるわ。」
「ん?条件?」奢ってとか言われるのかなと健人は思ったが、予想とははるかに違う答えが返ってきた。
「二人の様子をこれから観察させてほしいの。」