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没個性人健人の決心

 僕は高木麻衣さんのことが好きだ。


 当時、15歳だった少年春坂健人がこのように思ってから、もうすぐ半年が過ぎようとしていた。


 高木麻衣とは、健人と同じクラスの女子だ。常に笑顔で人当りが良いため、彼女は人の輪の中に溶け込むことが上手で、男女問わず友達が多い。しかもパッチリとした目で整った顔つきをしており、黒髪のセミロングで背が低く、いかにも清楚という単語が似合う女性である。男友達といっても、やはり彼女と恋人関係になりたいと思っている輩が多く存在していることは確かである。


 そんな眩しい存在の彼女とは逆に、春坂健人はどこにでもいる没個性的なイチ高校生だ。運動も勉強も特に取り柄がなく、誰からも第一印象が優しそうといわれる地味な顔である。そんな対照的な二人の関係といえば学校で話すきっかけがあった時におしゃべりするくらい。たとえば日直が同じ日になった時とか掃除当番が被ったときとか。

 だが、健全で単純な男子高校生である健人は、この数少ないおしゃべりで少しずつ恋心を抱き始め、時には麻衣さんは俺のことが好きなのでは?と勝手に錯覚してはそんなことあるわけないと勝手に諦めたり、気づけば彼女のことばかり考えるようになった。


 しかし、季節は既に3月の春休み直前。2年ではクラスが別々になってしまうこともあり、このままではいけないと思った健人は未だに聞いていない連絡先を聞こうと決心する。この日は二人で日直だったため、誰からも気づかれずに連絡先を聞ける絶好のチャンスである。しかし、どうしても勇気が出ない。教室で悶々と日直日誌を書いていると、


 「そういえば私、健人君の連絡先知らないんだよね。クラス別々になるし良かったら教えて!」麻衣が明るい笑顔で話しかけてきた。


 「えっ!?あ・・・まあいいけど」

 突然のことに一瞬きょどってしまったが、なんとかクールに応対することができたな、と全然クールではないにも関わらず健人は自画自賛していた。それと同時に麻衣さんは俺に気があるのかも?といつも通りの勝手な妄想。


 だが、一気に近づいたこの距離感。絶対に逃さない。健人は日直の仕事を終わらせ、教室に鍵をかけながらそう決心する。

 しかし、恋愛経験ゼロのこの世に生を受けて16年の若輩者。帰りの電車に乗りながら、どうやってお近づきになるか?デート場所は?告白のセリフは?様々な疑問点は出るものの、答えはさっぱり出ず、健人は自宅にたどり着いてしまった。


 自分の部屋に向かい、制服を脱ぎ捨てながら考えても、一向にわからない。しかし、このまま恋愛経験ゼロなんて嫌だ。せっかくの青春を甘酸っぱく過ごしたい。健人は自分でキモイなと思いつつもそう考えずにはいられなかった。


 とりあえず恋愛経験値は友達と相談して蓄積していこう。智道や義和なら彼女持ちだし色々教えてくれるはず。健人は恋愛経験豊富な友人たちに恋愛について伝授してもらおうと考えた。

 しかし、他に何か自分でできることはないだろうか。恋愛のテクニックとかではなく、それ以前に下地を固めるような何かをやっときたい。そう思った健人はあることを思いつく。

 恋に関するおまじないを試してゲン担ぎをしよう。まずは運勢アップからだ!

 ・・・これが健全な妄想人、健人が行き着いた自分の力でできる何かである。

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