退魔師訓練1
朝の眩しい日差しを受けて、私は目を覚ました。
「んっ...」
眠たい目を擦って、半ば無理矢理に体を起こす。今日は支部長から地下訓練場に呼ばれているので、支度をして向かわねば。
洗面所で顔を洗い、歯を磨いて、着替えをして、トーストと目玉焼きで朝食を済ませると、私は部屋を出た。
「えっと...確かこのエレベーターだよね」
昨日通った道を思い出しながら歩いていると、やがて昨日の訓練場に着いた。そこにはすでに支部長と何故かアヤト君が座って話していた。
「お、来たね。ユウヒちゃん、こっちこっちー」
支部長は笑顔で手を振っている。アヤト君はこちらをチラっと見ると、すぐに目をそらしてしまった。
「おはようございます、支部長。それと、アヤト君」
「おう、おはよう」
アヤト君はそう返すと、席を立ち上がった。
「じゃあ、俺達は教室の方へ向かいます」
「え?教室?」
何のことかわからず、私はアヤト君と支部長を見やる。
「あぁ、訓練もそうなんだが、お前は敵や魔力についてまだ知らないことが多過ぎる。だから、俺がそれらについて教えることになった」
「あぁ、なるほど」
それはそうだ、何も知らないまま訓練を受けてもあまり意味が無い。
「じゃ、よろしくね。アヤト君」
支部長はニコニコしながら小さく手を振る。
「面倒だが、まあ引き受けますよ」
アヤト君は少し渋い顔をしたが、すぐに真顔に戻った。
「じゃ、行くぞ、教室は東棟の三階の奧だ」
それだけ言うと、アヤト君はスタスタと先に行ってしまった。
「あっ、ま...待ってよ〜」
私もすぐに駆け足で追いかける。
どうやらこの支部内は西棟、東棟、南棟、中央棟の四つに別れているようだ。西棟に私達の部屋などがあり。南棟に訓練場、東棟にこれから向かう教室があり。中央棟には支部長室や受付などがある様だ。
渡り廊下を渡って東棟に移動して、教室があるという場所に向かうと、まるで普通の学校の教室のような場所に着いた。
「ここだ。さ、入ってさっさと始めるぞ」
アヤト君はドアを開けて、教室へ入って行く。
「し、失礼しま〜す」
私も続いて入る。まあ予想はしていたが、中には私とアヤト君以外に誰もいなかった。
「適当な席に座ってくれ」
「う、うん」
私は教卓の目の前の席に座った。
「さて、それじゃあ最初に魔力について説明する。まあ昨日支部長から聞いたかもしれないが、魔力ってのは人間誰しも持ってる物だ、それどころか、正しい知識さえ知っていれば誰にだって扱えちまう。まあ扱いに多少の才能は関わるがな」
アヤト君は特に板書をするわけでもなく、ただ話を続けている。
「んで、今からお前に魔力の使い方ってのを教える。まあ魔力っつっても普通は簡単な魔術を使う時とか、武器の威力を強化する時くらいにしか使わないがな。まあ中には魔力の弾丸を発射する魔銃なんてのを使う奴もいるが、それは武器に精霊って奴が宿ってる特殊な武装だ。俺とかお前には多分関係のない話だから、そこは省く。」
「あ、アヤト君、一ついいかな」
「ん?なんだ?」
「アヤト君はどんな武器を使ってるの?」
「あぁ、俺のはこいつだ」
そう言って、アヤト君が右手の指で何もない空間をなぞると、そこに亀裂が入った。その亀裂に手を入れて、アヤト君は一振りの日本刀を取り出した。
「こいつは退魔刀・滅炎って言ってな、俺の家に昔から伝わる刀らしい。ここに来る時に屋敷の蔵からかっぱらって来た」
状況が飲み込めずに、私は口を開けてそのままぼーっとしてしまった。
「え、え?え?なに?今の」
私が混乱したまま聞くと、アヤト君は申し訳なさそうに頭を少しポリポリとした。
「あー、悪いな、これはまあ、俺の固有能力みたいなものだから、あんまり気にしなくていいよ。多分今話してもさらに混乱するから」
「そ、そうなんだ...」
「んで、さっき話した魔術ってのは、まあ簡単に言うと、よくある魔法みたいなもんだよ。例えば」
そういって、アヤト君は一枚のお札のような形をした紙を取り出すと。
「燃えろ」
アヤト君がそう呟いた瞬間、アヤト君が手に持っていた紙が突然燃え始めた。
「おお、なんかすごいねそれ」
「...前々から思ってたんだけどさ、お前適応能力高すぎじゃないか?」
アヤト君は少し困った様な顔をしながらそう言った。
「あ、あはは...私も不思議だよ...」
「まあ、それは置いといて、次は敵、つまり鬼の連中についての話をするぞ、俺達が戦うのは、鬼って呼ばれる化け物達だ。さてこの鬼達だが、こいつらには段階って言うか種類がある。まずはその種類の話をするぞ」
「い、いよいよだね...」
「うむ、まず、一番弱っちい奴ら、餓鬼についてだ。こいつらは鬼の初期段階だ。実は鬼ってのは元々人間なんだが、人間が鬼に喰われる、もしくは噛み付かれるとそこからウィルスが入って、段々と鬼化が始まって、やがて死に至る。それで死後しばらくすると、餓鬼となって蘇る。まあこんな感じだ。餓鬼の連中は力も強いって事も無いし頭がいいわけでも無い。まあ怖い部分は皆無だ。そんで、一部の餓鬼が運良く生き残って、しばらくすると今度は戦鬼って言う次の段階に進化する、こうなると力も強くなって、俺達人間なんて簡単に捻り潰せる位になる。しかも知能もついてかなり厄介になる。お前と会う前に殺った奴は、戦鬼になって結構時間のたった頭のいい奴だった。まあ、そりゃ置いといてだ。戦鬼の奴らが進化すると、今度は吸血鬼ってのになりやがる。こうなっちまうと俺らには手が負えない、力や知能はもちろん、固有能力なんてものまで使うようになりやがる。そう言う奴は、基本的に本部の連中が相手をする。んで、この吸血鬼の親っていうか、大元に鬼神ってのがいやがる。まあ幸いにも鬼神の奴らは無闇に人間を襲うような連中じゃない、人を襲うのは餓鬼とか戦鬼とか、そう言う奴らだけだ。吸血鬼の連中も基本的には温厚な奴らが多いんだが、まあ例外ってのはどんな事にも存在するもんでな、昔の習性で襲い続ける奴もいる。...おっと、そろそろ飯の時間か。んじゃ、この辺で休憩にするか」
そう言われて外を見ると、いつの間にか陽が落ちかけていた。
「えっ!?もうそんなに時間たったの?」
「お前随分熱心に話を聞いてたな、まあ適当に聞き流されるのはムカつくからいいんだが」
アヤト君は少し笑うと、教室のドアに手をかけて...
「んじゃ、飯食いに行くぞー。今日は奢ってやるから、食堂で食おうぜー」
アヤト君はドアを開けて、またもやスタスタと先に行ってしまった。
「ちょっと、待ってよ〜!」
私もまた駆け足で追いかける。
その日の夕食は、ラーメンでした。
みなさんヾ(*´・з・)ツ ばーんちゃ♪
ユウピヨですです。
えっと、まずはじめに...
遅れて申し訳ありませんでした!_|\○_
こんな調子で不定期になるかもですが、ちょくちょく更新して行きますので、気付いた時にでも読んでいただければ幸いです。
それでは皆様、また次回お会いしましょう!ノシ