救助:きまして
続きです~。
俺の期待に応えるように、林の中から馬に乗った数人の男女が現れた。
その集団が胸当てや鎧を装備し、剣や弓矢を携えてる者がいることから、今自分がいる所は元々自分がいた地球ではないことを認識する。……まぁ、ドラゴンを見た時点でそんなことはわかっていたが。
正直、剣や弓矢を持っていることが分かったときは一瞬、頭の中に”逃げる”のコマンドが現れたが、相手はこちらの場所を把握していて、尚且つ乗馬していることからその行動は無駄だと思い諦めた。
いい人だということを祈るばかりである。
距離が縮まり、次第に明確になるその姿。
人数は四人……と一匹? 一匹?は、一応馬には乗っているが明らかに体毛が濃い。それに頭からは己の存在を主張するかのように赤茶色い体毛に覆われた耳が生えていて、背後には雄々しい尻尾が生えている。だが、背中には上半身より長い大剣を携えていることから、これは俗に獣人と呼ばれる者だろうと結論ずけた。
「ねぇキミ、さっきここに白いドラゴンが飛んできたよね? どこに飛んでいった?」
今喋ったのは他の四人のうち一人。肩口まで短く切りそろえられた紅髪が明るい印象を与える女の子だ。腰に携えているのは髪と同じ紅色の鞘に入った二本の短剣。柄には黒色の石が埋め込まれていて、その石からは不思議な力を感じる。
「え、いや、あの~……」
「ああぁん? いいから早く教えろやガキ!」
そう言って俺の服の襟を掴み上げたのは四人のうちの一人。長い金髪をオールバックでまとめ、顔つきは、中学の頃俺に対して金品をたかってきた奴に似ている。その時は、ちょうどお金を持っていなかったのでありのままの事実を話したら「この貧乏人がぁ!」と言って殴られたことは今でも覚えている。許さんからな村山。
因みに、装備は弓矢だ。紅髪の装備と同じく弓の中心には黄緑色の石がはめられている。
「まぁまぁ、落ち着いて。そんな怖い顔で詰め寄ったらこの子も話したくても話せないでしょ?」
柔らかい声色で金髪を窘めるのは黒髪をポニーテールにまとめ上げた巨乳のお姉さん。容姿端麗でその御淑やかな物腰は場所が場所なら男どもの視線を掴んで離さないだろう。まぁ、俺はどちらかというともう少し胸は控えめな方が好みだ。誤解の無いように言っておくがロリコンではない。
チラリとどんな武器をもっているか確認しようとするが見る限りどこにも武器らしき武器はない。すると、お姉さんは俺の動向の意味を微笑みながら見抜く。
「あら、アタシの武器を探してるの?」
「えっ! いや~そんなことは~……はっはっは~」
無理に笑ってなんとか誤魔化そうとするが、巨乳は更に言い寄ってくる。
「嘘が下手ね坊や。別にアタシは坊やの行動に文句を言うつもりはないのよ? ただ坊やの身なりを見る限り、とても戦う者のそれとは違う。それなのにアタシ達の武器を確認するってことは、恐らくアタシ達の隙をついて武器を奪おうって腹ね」
「……」
「そして、ここから一番近い村でも徒歩で向かえば優に三日はかかるわ。見事アタシ達から武器を奪ったら、そのまま誰かを脅しの材料にしてアタシ達の馬を得ようって算段だったんでしょう?」
そういって巨乳は俺に優しい笑みを浮かべた。ただ目だけが笑っていない。
俺は背中に大量の冷や汗を流す。
実際に言っていることは合っている。俺が5人の装備を確認しようとしたのは巨乳が言うとおり、武器の特徴を把握し、隙を見て奪いそのまま脅しの道具に使おうとしていた。バレてしまってはしょうがない。だが、俺にはまだ策はある。
「た、確かに俺はお前達の武器を見てたけど、それはただ純粋に武器に興味があっただけだ。それに、実は俺、記憶がないんだ。どうして俺がここにいるかわからないんだよ」
嘘は言っていない。実際に俺は普通に生きていたら見ることもなかった武器に興味があった。それに、俺がなぜここにいるのかわからないということは事実だ。ただ、ホントのことも少しだけ言っていないが。
すると、巨乳は何かを察したような顔をした。
「ふふん。成程、嘘は言ってないね、嘘は」
鋭いな。
「まぁ、事情は分かったわ。それじゃあ、ドラゴンがどこに向かったか教えて貰える?」
「わかった。ただし条件がある」
「条件?」
ここが勝負所だ。
「俺がドラゴンの情報を教えるのを対価にここから一番近くの村まで俺を連れて行ってくれないか?」
どうだ?
すると、巨乳は「ふふっ」と笑った。
「この状況下でまさかアタシ達に条件を出してくるとか。ふふっ、面白いね坊や。わかった、坊やのその勇気に免じてその条件飲んであげる」
よし! これでとりあえずは何とかなりそうだ。
お話を最後まで読んでいただき至極感謝の極みです!
日本語がおかしいのはご愛嬌♪
誤字・脱字などありましたら優しくお教えください。作者豆腐メンタルなんで(笑)