第二章 capter-1 「シックザール」
「先行していくのはダリゼルディス、順、イフット、須賀谷……そして篝火2号だな。後発で生徒会メンバーを大会場に潜り込ませ、ある程度情報収集をするつもりでもある」
「……ちょっと待ってください。あの、自分以外全員女だと物凄く俺が居辛いんで……藪崎さんは来てくれないんですか?」
何も言わないでいるといきなりそう決められそうになり、慌てて異議を申し立てる。
イフット以外がずっと近くにいるのはどうにも息苦しいし、まず後方支援との連携の取り方に関する話がないというのは怖いというのもあった。
「そういう破廉恥な事を考えてると後ろから焼き払いますよ」
篝火2号がカリカリ音を立てながら口を挟んでくる。そういう意図ではないのだが……。
「そうしたいのは山々だが、荷物をフルに積むと6人は厳しいのだよ。特にこの篝火2号は、やたら重いから帰りにリーブラ鋼を持って帰るときに重量オーバーになってしまう可能性もある」
残念そうな顔をした藪崎は、なぁに俺も後で別口で向かおう、俺は現場が好きだからなと言うと、何かあれば篝火2号には通信機が付いていると言って、彼女の機能マニュアルを遣してくれた。
「まぁとりあえず寮に帰って色々支度はしますが……苦労はしたくないですね」
「それでも、頑張ってくれ。とりあえず報酬として飯を奢るくらいは約束しよう」
「リーブラ鋼については順が知っているんですか?」
「あぁ、だからそれについては問題ない。明日の向こうからくる手紙を待ってから、それ次第でシックザールを出すつもりだ」
「最近の子供の誘拐事件といい、練成試合を兼ねた偵察といい……やる事が沢山ですね」
「世界情勢は刻々と変化をしている。手を打てるうちに打っておくのが賢いやり方だ。……手遅れになってからでは、取り返しが付かないのだからな」
藪崎は何か意味ありげにちょっと下を向いてそう言うと、それではとりあえずこの場のミーティングはお開きにする、と語った。
それでこの場は皆、解散になった……。
「なぁ、イフット」
「なぁに?」
「俺は……いつになったら一人前になれるんだろうか」
帰り道で手を繋ぎながら、イフットに問いかける。
色々自分ひとりで悩んできたというのもあるが、自分の実力不足さに嫌な気分になってくる。
物哀しさというか、自分の見識を広げたことによる哀しさだ。
騎士というものは格好いいものだと昔教わり育ってきた自分にとって、この世の中……養成所の渡辺といい、そういった人間が普通に幅を利かせていたことに対する嫌悪感というか憎さというものさえもある。
……今思えばこれが昔に聞いた順の理想に裏切られた行為というのものに近いのだろうな。
「そんな顔しないで」
ふと、唐突にイフットが横から抱きすくめてきた。
「……すまんな、色々至らなくて。気を使わせてさ」
須賀谷は軽く謝ると、頭を下げる。
「うぅん、こっちこそ色々気遣い出来なくてごめんね」
お互いにもどかしさもあるが、言いたいことが分かる。
……今日は帰って、飯にしよう。
それから沢山、話そう。