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第一章 capter-2   「レーザー・ストラクション」

「こちらイフット。上空からのサテライトによると犯人は南24区8番街を逃走中。やはりターゲットは予測通りサイバネティック技術を仕込まれていました!」

 イフットの通信を受け、犯人を追跡する。

「須賀谷、逃がすな! 私は分裂して逃げたB班を追う! イフットは須賀谷の援護に行ってくれ!」

「了解!」

「分かってる!」

 新生騎士団ヴァルヴァロスが結成して3日目。初代メンバーは一応須賀谷 士亜、イフット・イフリータ・イフリート、そして群雲 順の3人に落ち着いた。

 というより、まだまだ以前の大会での怪我からアルヴァレッタが回復せずに、ニリーツの奴はそちらに付き添うといった事を選択されたからだ。

 今はこうして街の以来を受け、異界の民からの技術供与を受け街を破壊するサイバー不良を鎮圧しにきているという事なのだが。

「待ちやがれってんだよ!」

「誰が待つものか!、ひよっこの餓鬼が!」

 ヒオウ市街の中で治安が悪い南24区。全速力で走る須賀谷の前を、ローラーブレードを履いた銀色リーゼントの男が逃げ去っていこうとしている。

 マクシミリアン式甲冑装備の須賀谷とは機動性が歴然で、追いすがってはいるものの巧みに障害物を利用して逃げる男と徐々にその差は開いてきていた。

「イフット、道を塞げ! このままじゃ逃げられる!」

 通信で悲痛な増援希望を送ると、

「分かってるわよ!《紅蓮獣 クリムゾンノヴァ》!」

リーゼントの男の逃走先を目掛けて空を飛んでいるイフットが上空から魔方陣とともに炎トカゲを召喚し、道を思い切り塞いだ。

「あぁん!?」

リーゼントの男のまん前に強面の炎トカゲがどっしりと着地し、その爪とブレスを出す仕草で威嚇をする。

「もう、逃げられんぞ!」

 そして一瞬たじろいだ男の背後に須賀谷は追いついて立ち塞がり、紫色のビーム剣……タマチルツルギを抜いた。

「はははは、クソ餓鬼が調子に乗りやがってよぉ!、俺の邪魔すんならバラしてやるよ!」

 サイバー不良の男は目をかっと見開くと、擬態していた人間の腕からカギ爪のようなモノに手首をモーフィングさせる。

 奴らは力欲しさに魂を売り渡し人攫いや略奪をする、クズどもだ。

 両替詐欺なども足元に及ばないような吐き気のする、ゴミである。

「お前のような人間としての最低限の品性すら捨てた男にだけは言われたくないな!」

 須賀谷は言い返すとそのまま切り掛かり、鍵爪と切り結ぶ。

「ファハハ! それが今度の追っ手の武器かい! 少しは楽しめそうだがなぁ!」

 鍵爪の不良の男はニヤリと笑いながらやすやすタマチルツルギを受け止めると、鍔迫り合いの体勢で笑ってみせる。

「余裕を持っていても無駄だ! お前達が攫った子供の在り処を言え!」

 須賀谷が問い詰めると、

「だぁがひよっこはひよっこだぁ! 俺に勝ったら教えてやるよぉ!」

『リーゼントカノン!』

 その瞬間に銀のリーゼントの中から爆発する光弾を放ち、須賀谷を至近距離から打ち飛ばした。

「ぐあぁぁぁっ!?」

 マクシミリアンに穴は開かないものの須賀谷は吹っ飛び、近くの水色のゴミ箱を吹き飛ばしビルの壁に叩き付けられる。

 そしてさらに壁に叩き付けられた須賀谷に対し追い討ちでリーゼントカノンを5連射され、爆煙と共に追撃をされた。

「ファハハ! これで死んじまったなぁ!」

 不良は銀のリーゼントを揺らしながら笑うと、チラリと上空のイフットを見る。

「娘ちゃんも帰りな、相手してほしいんなら別だがよぉ」

 そしてフッと煙草を取り出し火をつけようとした時ーー。

「士亜はこれくらいじゃやられないよ」

「あぁ。対ビームコートマント……順に言われて装備して正解だったな」

 黒いマントを羽織った須賀谷が煙の中から姿を現した。

「ファハ! 咄嗟に身を守ったってか! やるじゃねぇか!」

 不良はにぃと笑うと胸の中に再び煙草を仕舞い、再度臨戦態勢をとる。

「……銀のリーゼントの男は強い、そう事前に聞いてね」

「素直に死んだ振りをしていればいいものを……だが二度はないと言う事を教えてやるよ!」

 リーゼントの男は再度リーゼントカノンを装填すると、髪から強烈な一撃を吐き出す。

 ーーだが!

「舐めんなッ!」

 リーゼントから出たビームを瞬時に切り払ってタマチルツルギで打ち返し、そのまま男のリーゼントを削った。

「ピッチャー返しだと!?」

 そしてそのまま男の前髪をふっ飛ばしながら距離を詰め、刀身を開放したまま右腕に魔力を集中させる。

「何をする気だ!?」

《エンチャント! ナックルッ!》

 直後に瞬時に男の腹に拳を叩き込み、不良を無力化させて黙らせた。

「がっ……かくぁぁぁ」

 男は地面に涎を出し、悶絶しながら倒れこむ。

「イフット、縄をこっちに」

「……はい、どうぞ。……でもちょっと見ててヒヤヒヤしたよ。無闇矢鱈に接近戦はやめてね、士亜」

「俺に遠距離武器がないからしょうがないだろ。まさかでも、敵さんがリーゼントを武器にするとは思いもしなかったけどな」

「サイバー化した人間による犯罪……やっぱり怖いわよね」

「あぁ、こんな人間がいっぱいいて子供を連れ去ってるとか……嫌な予感がするよ」

 須賀谷と上空から降りてきたイフットは顔を見合わせると、頷きあった。



「おいてめぇら、俺を誰だと思っている? 離せよこのアマにガキ」

 クラン・ヴァルヴァロスの詰所にて、縛られたリーゼントの男が怒鳴ってくる。須賀谷は、五月蝿いといった顔をしつつも横を向いた。

「……何故、貴様達は異界の人間に加担したのだ? 他人の子供を連れ去り売り飛ばすなど、まともな心のあるものならばしないだろう」

 順が声を張らせつつも、尋問をしている。先ほど彼女が追っていたほうは既に4人程のして、治安局に引き渡した後だ。

 なのでこちらの捕まえた男をどうするかという事になり、順が尋問を行うことになったのだ。

「……」

「言え」

「あぁ?」

 直後にゴキッと、手首の折れる音がした。

「ぎゃあああああ!!」

「人道を外れた者に情けは不要と認識している」

「がっ……!」

「まだ黙るのなら……膝の皿を両方割ってやろうか?」

「そっ、それは……」

「ならば吐け!」

 順はさらに強く睨むと男をさらに詰った。今日の順はどうやら虫の居所が悪いようだ。

「……チィ。腐った世の中の人間などどうなったって知らねぇだろうがよ!」

 すると男は観念したかのようにそう話してくる。

「どういう事だ?」

「こんな時代、人のことなんて人間どうも思いやしねぇ、だから俺達だって自分が生きる為に人の命を吸ってんだよ、文句あるかよ!?」

「……だからといって正気でもない者に加担するというのか?」

「あぁ、腐った世界よりはマシだね! こんな時代壊れてしまえ!」

「恥を知らないのか……破廉恥な!」

「破廉恥とかどうでもいいんだよ、俺らは金になればそれでいいのさ」

「それが未来の自分の首を絞めるとしてもか?」

「そんなもの恐くもない!」

「やられた側の気持ちはどうなる!?」

「知った事か!」

 そこまで言った瞬間、順が徐に右腕を振り上げた。

「止めろ、順」

 そこで須賀谷は言ってやる。

「お前が切れたところでここはどうにもならない。今できることは子供達の運ばれたルートを洗うことと彼らを取り戻すことだ、それが依頼のはずだ」

「……分かっているさ。ただ、受け入れられないんだよ」

 順はすると苦々しそうな顔をしながら、横に首を振った。

「俺らだって金の為にこの任務を受けたが……それでも人の命を救いたいとは思っている。この不良達とは根本的に違うさ。だから……今は落ち着くときだよ」

 須賀谷は背後からそう告げ、軽く諭して見せた。

 

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