エルフである夫は100歳となった人間の妻の最後を看取った。
エルフの里の隅にある小川のほとりには、一軒の民家がある。
これは、エルフである夫が人間である妻の人生の終わりの住み家として建てた民家である。
エルフである夫と人間の妻が共に70歳である時に建てられた。
この世界のエルフは20歳になるまでは人間の体と同じ成長速度と体の成長が著しく遅くなり、長い年月を若々しい姿で過ごす事になる。
この2人が出会った当初は誰から見ても釣り合いの取れた恋人同士であったが、年月を重ねるうちに2人は子と母親、孫と祖母のような外見になった。
2人は人間の町に繰り出してデートをする事を楽しみにしていたが、人間である妻は恥ずかしがってデートをやめるよう言った。
そして、エルフである夫は人間である妻を人目のつかない民家へと引っ越したのだ。
そして、人間である妻は危篤状態にある。
彼女は誤嚥性肺炎を発症してしまったのだ。
町の医者に治療を頼んだが人間である妻は既に寿命であり見送るしかないという。
柔らかいベッドの上で苦しむ妻を見て、夫は無痛の即死魔法を使用した。
息絶え苦悶の顔を浮かべる妻の顔を優しく撫で、妻の瞼を優しい手つきで閉じた。
そして、夫は妻の体を湯を含んだ布で洗い、棺に納めた。
棺の中には数々の美しい花で満たされている。
子供達に葬式はしないのかと聞かれたが、夫は首を縦に振らなかった。
人間の妻である彼女が入った棺は、エルフの国にある世界樹の木の根の下に埋められた。




