表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

婚約破棄とアンニュイな犬の話

作者: 山田 勝
掲載日:2026/06/07

「エリザベーター、婚約を破棄する!」



 ご主人がショックでうなだれている。俺は近くに寄り添うしか出来ない。

 何故ならば、犬だからだ。


「クゥ~ン」

「まあ、シェパード・・・」


 そうだ。俺をなでろ落ち着け。



「おいこら、何だその犬は!」

「お義姉様、狼みたいな怖い犬を二匹飼っているのよ・・・怖いわ」



【追放だ!】



 オスから追放刑を受けた・・・

 そうか、ご主人も捨てられたのか・・・・



 ☆☆☆



『旅行行くからお世話出来ないでしょう!』

『そうだ。筋男、旅行行きたかったら捨てるよ』

『うん。旅行の方が大事だから良いよ』



 俺と相棒のハスキーは車に乗せられて山の中に行った。

 俺は雰囲気で分かったよ。ダムに捨てられるのかな・・・


『はあ、はあ、はあ』(お出かけ、お出かけ)



 相棒のハスキーは喜んでいる・・・どうしたものか?


 と悩んでいたら。


『キャア、筋男、ウンチもらさないの!』

『だって、我慢出来ないよ』


 キキキー!


 車が谷底に落ちた・・・




 ・・・・・・・・・




 どうやら、虹を渡ったらしい。気がついたらご主人の屋敷の庭にいた。

 俺とハスキーはご主人に拾われたのだ。



 追放刑を受けたので。

 ご主人とハスキーと俺で大きな家を出た。


「はあ、はあ、はあ、はあ」(おでかけ、おでかけ)

「・・・・・・・・」


 弟分のハスキーは大喜びだ。


「クゥ~ン」(ご主人)

「シェパード・・・今、お仕事を探すわね。お食事、何とかしますわ」


 俺はこの世界の文字が読めるようになった。


 冒険者ギルドにいるらしい。

 俺でも出来る仕事の紙を前足で指した。




「え、ドックマスター?」



 なんやら犬使いが募集されていた。



 ご主人はチラチラ俺とハスキーを見て。


「やってみるしかないかしら」


 と言ってくれた。仕事内容は。

 羊100匹の世話だ。



 牧場で面接を受けたクライアントは不思議そうな顔をしていた。


「え、女の子とその馬鹿そうな犬?」

「はあ、はあ、はあ」(ごはん?ごはん?)


 依頼主は良い顔しないが・・・


 俺は遠吠えをした。



「ワオオオオオーーーーン」(我はここに存在しているぞ)



「メェ、メェ!」(狼だ!)

「メェ!」


 羊たちに俺の方を見させる。



「ワオオオ~~~ン」(俺の言うことをききがれ)


「な、何だ。羊が一斉に見ているぞ・・・」




 俺はご主人に一瞥をして羊の群れに向かう。



 血が騒ぐ。

「ワン!ワン!」(ケンカ禁止!)



 ケンカを仲裁したり。


「ワン!ワン!」(ほら、群れはこっちだ)

「メェ」


 迷える子羊を案内したりする。




 そうだ。俺の先祖は牧羊犬だ。

 これが犬生だ。


 ハスキーは。




「はあ、はあ、はあ」

「こら、ハスキーちゃん。縄を食べてはいけませんわ」


 ご主人に世話をされている。

 それで良い。棲み分けだ。


 時々、狼が来そうだな。



 三体で牧場に住み着いた。


 ご主人はモテモテだ。

 いや、俺か?



「お嬢さん。その茶色と黒の犬、売ってくれないか?」

「金貨100枚だすよ」



 俺はジィとご主人を見る。

 ご主人は躊躇せずに。


「売りませんわ!」


 と言ってくれた。

 嬉しい。



 ハスキーは牧場を走り回る。


「ワン、ワン」(遊びに行ってくる!)

「ワン!ワン!」(遠くに行くなよ)


 ご主人は、はまったハスキーを助けたり。

「クゥ~~~ン」

「ハスキーちゃん」


 食事の用意をしてくれたりする。


「もお、ハスキーちゃんたら」


 正直、ハスキーが羨ましい・・・毛繕いをしている。

 何故、働かないあやつが?


「シェパードもおいで」

「ワン!」(もちろん)


 毛繕いしてくれたら疲れも嫌な事も全て吹っ飛ぶな。


「ワン?」

「いつもご苦労様」


 膝だっこだ。まあ、犬冥利に尽きるのではないか?

 しかし、俺は子犬ではないぞ・・・まあ、少し抱っこされてやろう。




 そんな中、楽しくすごしていると、旧ご主人がやってきた。




「見つけた!この犬はうちの犬よ」

「そうよ。牧場で活躍している珍しい犬がいるからときたのよ」

「普通に僕の犬だよ!」



「「「返して下さい!」」」


 やつれている。旧ご主人もこの世界に来たのか・・・


 ご主人は。胸の前で手を組み震えている。


「そ、そんなハスキーちゃんとシェパードは大事な友人ですわ・・・そんな」


「はあ?名前じゃなくて犬の種類じゃん。ハスキーが犬一号でシェパードが二号だよ」



 そうだ。俺は犬二号と呼ばれていたのだ・・・


「え、鑑定したら、そのように犬種が出ていましたわ。前のご主人がつけた大事な名があるかもと思っていたから、その名で呼んでいたのに・・・そんな変な名前・・・」



 俺はご主人の目を見た。


「ワン」


 ハスキーは・・


「はあ、はあ、はあ」


 あいからわず舌を出して「はあはあ」している。

 だが、気持は伝わっている。


 ご主人は・・・


「返すのもやぶさかではありませんわ。でも、ハスキーちゃんとシェパードちゃんの気持を知りたいですわ。一緒に仕事をして下さいませ。絆を見せて頂けたら返しますわ」


「簡単じゃん。僕がやる」

「筋男、頑張れ」

「筋男なら出来るわ」



 スジオ、ご主人一家の子供だ・・・時にすごく残酷だ。


 その時、ハスキーが遠吠えをした。


【ワオオオオオーーーーーーン】


 その遠吠えで・・・山から狼がやってきた。


「あら、ハスキーの群れ?」

「まあ、これは売れるかしら」

「やったー、異世界でブリーダーだ」


 ハスキー、馬鹿だと思ったが・・・シベリアンハスキーと狼を間違えている。

 あの馬鹿主人達を狼の群れに連れて行った。


 キラリとハスキーの目が光った。


 やっぱりこいつは馬鹿だ・・・自分を犠牲にするつもりだ。



 その夜。ハスキーは帰って来た。口にはクズオだっけ?ご主人の帽子をくわえていた。

 狼に食われたのか。


 ハスキーは遊んでいる風を装って。近隣の狼の群れに接触して若リーダーぐらいになっていた。


「ワン、ワン、ワン!」(兄さん、ご主人をヨロ!)



 ハスキーは山に行った。もう帰ってこない予感がする。

 ご主人は・・・寝ているか。


「グスン、グスン、ハスキーちゃん・・・どうかご無事で」


分かっているのか、別れの予感で夢を見ていたらしい。


 これから俺が支えなければならない。




 それから、ご主人はドッグマスターとして名をはせている。

「クゥ~ン」

「はい、シェパード君、そろそろ名前をつけようかしら・・・ね」



 名声が広がり。俺に見合いの話が出てきたぐらいの時に、ご主人の元番もとつがいがやってきた。



「エ、エリザベーター、母上に怒られた・・・お前は何故追放と言って追放されたのだ」



 犬から考えても意味不明だ。



「まあ、王妃殿下に怒られましたの?」

「そうだ!つれて来いと言われたのだ!俺の人生は滅茶苦茶だ。お前が婚約破棄をされるから!」



 俺は犬、寄り添うことしか出来ない。何故ならば犬だからだ。


 と思ったが、ご主人の方から俺に寄り添ってきた。



「そのような心根ならばお帰り下さいませ」

「な・・・」

「私にはこんなに頼りになる相棒がございますの」


「ワン!」



「何故なら、私はドッグマスターですわ」



 ご主人が強くなっている。

 オスの方はうなだれている・・・

「そんな、母上が、母上が・・・!」


「まあ、お母様・・・貴方はまるで王妃殿下の犬ですね」



 俺はその言葉で耳がビクンとなった。


「ワン?」

「シェパードちゃん・・・譬えが悪かったわ・・ごめんなさい」



 そうか、こいつも所詮は犬だったのか・・・

 俺はうなだれているオスの肩に前足を置いて・・・



「ワン!ワン!」(出直してこい!)

 と言ってやった。


「え、私が序列一番低いのか?」

「ワン!ワン!」(群れに入れねえ!)



 そう、人は何かしらの犬なのかもしれない。


 俺はご主人エリザベーターの犬だ!

 それは譲れない。






最後までお読み頂き有難うございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ