あんちゃんレンジャー
杏、中学生のお話。
「あんちゃん、ただいま!!」
「おかえり、こうきくん。」
久しぶりの声に私は弾む。
「あんちゃん、あのね~、きょうね、、、、、」
うんうん、と話を聞く。
こうきくんは小学一年生。
こうしてたまにしゃがんでいるときに仲良くなった。
きょうはどうやら卒業式用に飾る花を作ったらしい。
「こうきくん、がんばったんだねー。」
「うん、がんばったよー、あ、そうだ、はい、あんちゃん。」
「あ、こうきくん、あぶないよ。」
こうきくんから慌てて受け取る。
「あんちゃんはきょうはなにしたの。」
「今日はねー、、、、」
思い出した、テストが42点だったんだ。
再テストを考えて気が重くなっていると、
こうきくんが気づいたらしい、
「あんちゃん、だいじょうぶー?なんかあったの?」
「テストの点数が低かっただけだよ、わたしも頑張るね。」
そうなの、とこうきくんは言った後
「あ!思い出した!この前あんちゃんイエローがいたよ。」
「あんちゃんイエロー??」
じぶんでじぶんをあんちゃんと言っちゃったよ。
「うん、そう。」
何を聞くべきなのか。
あんちゃんイエローの意味からか、
もしくはあんちゃんイエローの存在か。
返す言葉をえらんでいると、先にこうきくんが続けた。
「ここでくぎ拾ってたから聞いたの。あぶないから拾ってるみたい。」
「そうなんだ。」
同じく気づいた人がいるんだ。
でも、あんちゃんイエロー?
自分で言ってたらたぶんやばい人だよね、うん。
「ここで拾ってるあんちゃんの仲間って。」
「な、なかま。」
そんなの知らない。
「だからね、あんちゃんイエローってつけた。」
こうきくんが付けたのか。
だいたい見知らぬ人があんちゃんと言うわけがない。
この子たちは変な人に絡まれたわけじゃないんだなとほっとする。
ん、
てことは、
「うん、じゃあ、わたしは、、」
「そのときゆうきくんがあんちゃんをレッドっていってたから。」
わたしはレッドなのか。
「ぼくがブルーで、ゆうきくんがグリーンで、ももちゃんがピンク。」
レンジャーだ。
しかもあんちゃんレンジャー。
、、しかもしかも確実にブルーをこうきくんとゆうきくんで取り合ってる気がする。
まあいいか。
「イエローどんな感じの人だった?」
いちお、不審人物じゃないか確認しとかないと。
「イエローはねー、こんなかおだった。」
といって目を細めた。
「きつねさんみたい、?」
「うん、でもまゆげはこんなの」
うん、太いらしい。
「でもおめめはももちゃんのにほんせんなの。」
二重ね。
「身長は?」
「あんちゃんよりたかいよ。」
「ふくはあのふくきてた。」
指さした先には、
南中の学ラン。
ちょっとびっくり。
サラリーマンのおじさんと思ってたから。
「りよーかい。」
「あんちゃんのなかまじゃなかったの?」
やばい、いろいろ聞きすぎたかな。
「イエローと会ったのはだいぶ前だからね、あんまりしっかりおぼえてなくて。」
ふーん。
なんとかごまかせたかな。
「さっ、そこまで一緒に帰ろうか。」
「りよーかい、レッド!」
こうきくんが笑って、
わたしも笑う。
もうすぐ卒業だ、
3月21日は北中の卒業式。
ここもマンションも内装だけなのだろう、
ほとんど拾わなくなった釘。
もうすぐあんちゃんレンジャーも解散かな。
あんちゃんイエロー、
いつか会えるかな。
いや、
もう会えないだろうな。
こうきくんたちと会える日を数えながら
そんなことを思った。