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かたにくん中学生秋 その2

それから俺は朝練の時期になるとたまに佐井田さんを見かけるようになった。




「なにしてんだ、あれ、、、」


周りにいたオトナたちが2、3人振り向いたが、

思わず口をついて出た俺を見逃してほしい。





猛スピードで漕いでいた青いチャリをいきなり止め、しゃがみこみ、ポケットに手を突っ込んで、また猛スピードで去っていったら。



「金でも落ちてたのか、、。」






思ったのたが、それから毎日来る日も来る日も同じ場所で彼女は同じ行動を取り始めた。




さすがに毎日銭は落ちてないはず。



        

「なにしてんだ、おれは。」

また周りにいた2、3人が振り向いたが気にしない。





彼女が走り去った後、俺はその場に向かった。


「なにもねえな。」



当たり前だ。彼女が拾った後だから。

なくて当たり前だ。


結局その日は分からずじまいだった。



その後気づいたことと言えば、彼女が立ち止まる場所がややまちまちだということくらいだった。






二週間くらい経った後だろうか。



「香谷くん、最近朝早いね。」

「あ、ああ。試験期間だしね。」

その後朝練が終わってからも俺は相変わらずの時間に家を出ていた。なにしてんだ、、、俺、。


眠い。


「香谷、今日アイス食いいかね、みんなでさー。」



「今日はパス。」



まじ眠い、、、。











で結局食って帰ってる。

ぽかぽか陽気が恨めしい。まじ眠い。



2時ごろなので下校時間の児童がぎゃーぎゃー言いながら帰ってる。体育会祭じゃない、運動会が近いのか、体操着で帰る子も多かった。





そこに背の高い人影を見つけた。


佐井田さんだ。



下校中に見たのは初めてだ。



なので俺は若干動揺した。






もしかしたら今なら、、、





という思いはいつもの彼女の行動に消えてった。



彼女はまたいつもの場所でしゃがみこんだ。







なにしてんだ、

と思うより先にその意味が分かった。


『お兄ちゃん、あげるー。』



なんだこれ?


く、


釘?




そこではっと気づいた。




彼女が拾っているのは、、。



同じく釘だった。






工場現場になっていたそこにはたまに道路にも釘が落ちる。



田舎の学校だから小学校の子ども、とくに運動会の時期は裸足でそのまま帰るこだって多い。




彼女はそれを見ていたんだ。






でも下校中の子が自分が拾うのを真似ないように


そっと。










「おーい。靴履いて帰れ。」



俺ができるのはこれくらいか。


「やだもん、あついし。」


あー大変だな。これは。


「おいおい、そんなこと言っていいのか?」


お、こっち向いたか?


「早く大人になりたいんじゃないのか?」


「なりたい!!」「なりたいよ!!」


よし!


「じゃあ靴はけ。靴履くのが‘’オトナ‘’の‘’ステータス‘’なんだよ、分かるか?」



オトナ?ステータス?と言いながらも子どもたちは靴を履く。‘’オトナ‘’の威力は大きいらしい。




残念ながら、


彼女はそのやりとりに気づかず、去っていった。


気づかなくていいと思う彼女と気づいてほしいと思う俺。



やましいな、と思いつつも



自分だけが彼女の行動に気づいたことにほくそ笑んだ。








それから月日は流れーーー。



「香谷、生活委員やらないか。」

「結構です、山口せんせ。他の方に回してください。」

「つれないこと言うなよ。お前にぴったりじゃないか、挨拶活動。しかも部活入ってないだろ?」

「、、、。」


結局俺は早起きの癖が抜けなくなってしまっていた。



「いえ、俺部活はないけどピアノの練習とか、忙しいんで。てかせんせがいちばん分かってるじゃないですか。俺がそういうの向いてないって。」


新入生代表でピアノを弾くことになった俺だが、

まあ、その、山けんの言う通りに練習はせず、、。



まあそういうのが苦手だから仕方ない。


「じゃあばらそうかな。」

!?!

「な、っ!?!」

「入学式のこと。四組の子に話そうかな?」

「?!?やっ!ちょっ!!なっにいって!って!やります!やります、ぜひともやらせてください!!や、山口せんせ、待ってくださいって!!!!」




てなわけで入学式の話はそれはまた別のところで。

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