誰も知らない木曜日
人の恋路にあたまっつっこむやつなんて豆腐の角に当たってしんじまえ、
といわれるように、
二人の仲を裂こうなんて滅相もないし、
学年1位を争う人気の男子と付き合うほどの器量も、やさしさも、性格のよさも、機転も、頭のよさも持ち合わせてはいない。
勇気果敢なチャレンジャーでもない。
だからといってうじうじ悲観して引きこもる偽善者にもなりたくない。
だったら
どうしたらいいーーー?
ーーーいつものことだよ、
佐井田杏。
すべての気持ちを沈めて、きれいに流してしまえばいいーーーーーーー。
嘘。
綺麗事だ。
(こころがわりしてほしい。)
(わたしにふりむいてほしい。)
(ずっととなりにいてほしい。)
いいえーーー
(わたしにはむり。)
(こんなあさましいこころのわたし。)
(なんてみぶんふそうおう。)
ごっちゃになって堂々巡り。
真っ赤な気持ちと真っ青なこころが入り混じって。
醜い色
わたしには
とうてい
偽善者にもなれない。
ただーーー
ただ
その中で
はっきりと浮きだってることがある。
『香谷くんが泣くのは見たくない。』
だって泣くって
笑うより、怒るより、ずっと
強い声。
わたしに分かるのは
「いつもとちがう」
ただそれだけ。
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「なぁ、
お前、
いいんか?」
「あぁ。」
「後悔するぜ。」
「しないよ。」
「、、即答だな。」
「決めてたから。」
「、、、
そうか。
そういうとこ、
お前らちょっと似てんな。」
「、、、。」
「決意は固いの、ね?」
「、、ああ。」
「わかった。」
「なぁ、ひとつだけ
言っていいか。」
「、、、。」
「あの噂、
佐井田さん知ってたよ。」
「そうか、それは、
『役に立つ』な。」
「だろ?じゃあ、」
「、ああ、じゃあまたな、高橋。」
「おい、待てよ、まだ時間あんだろ?」
「悪い、次また移動だから、
またな。」