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第六話 初任務

強能力者の訓練は、学校の中だけでは終わらない。

どれほど優れた力を持っていても、

実際の現場では想定外が必ず起こる。


だから、この学校では早い段階で任務が与えられる。

それは実戦ではあるが、まだ“守られた戦場”だ。


――だが、油断した瞬間、

それは本物の危険へと変わる。


これは、二人が初めて

「訓練ではない責任」を背負う物語である。

第七話 初任務


任務の通知は、突然だった。


朝の授業が終わった直後、

教室の端末が一斉に光る。


「一年固定ペア、前に出ろ」


教師の声に、教室がざわつく。

僕とリクは顔を見合わせ、そのまま立ち上がった。


「初任務だ」


その一言で、空気が変わる。


「内容は、市街区での監視任務。

反応が確認されたが、危険度は低い」


低い。

その言葉が、逆に不気味だった。


「目的は対処ではない。

状況確認と、被害の抑制だ」


僕はリクと並んで、頷く。


「行くぞ、相棒」

「ああ」


移動車両の中は、思ったより静かだった。


窓の外には、いつもの街。

人がいて、音があって、生活がある。


――ここが、守る場所。


ヴォイスが、頭の奥で囁く。


「訓練とは違う。

力の使い方を、間違えるな」


「分かってる」


現場は、商業区画の裏路地だった。

人払いは済んでいるが、完全ではない。


「風で様子を見る」


リクが先に動く。

微風が路地を抜け、空気の流れを探る。


「……いるな」


影が、歪んだ。


悪魔契約を悪用した存在。

完全な敵対行動まではしていないが、

力の制御が壊れかけている。


「どうする?」

「近づかせない」


僕は一歩前に出る。


音を、鳴らす。


低く、抑えた振動。

影から煙が立ち上がり、空間がわずかに揺れる。


相手が動こうとした瞬間、足が止まった。


「今!」


リクの風が、相手を包み込む。

押し倒すのではない。

逃げ道を塞ぐ。


「落ち着け!

抵抗するな!」


相手は呻き声を上げ、膝をついた。


……終わった?


その瞬間、別の反応が走る。


「もう一体いる!」


ヴォイスの声が鋭くなる。


建物の上。

見落としていた。


「くそっ!」


リクが動こうとするより早く、

僕は音を広げた。


今度は、少しだけ強く。


街全体が壊れない、

けれど“逃げられない”範囲。


振動が、上空の影を捉えた。


空中で、動きが止まる。


「……何だ、これ」


相手が呟く。


落下する前に、リクの風が受け止めた。


二人目も、制圧。


沈黙。


数秒後、支援部隊が到着した。


「状況終了、か?」


確認を終えた隊員が、僕たちを見る。


「被害ゼロ……

一年生で、これは異常だな」


その言葉に、リクが苦笑する。


「異常って言われたぞ」

「慣れてきた」


帰りの車両で、僕は手を見つめた。


震えていない。


怖くなかったわけじゃない。

でも――逃げたいとも思わなかった。


ヴォイスが、静かに言う。


「今のは、まだ序章だ」

「分かってる」


リクが前を向いたまま言った。


「なあ」

「?」

「俺たちさ、

これからどこまで行くんだろうな」


答えは出なかった。


ただ一つだけ、確かなことがある。


この二人でなら、

どこまででも行ける。


――まだ誰も知らない。

このペアが、

やがて“手がつけられない存在”になることを。


それを知るのは、

もう少し先の話だ。

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