第五話 一年の契約
強能力者は、一人で戦う存在ではない。
どれほど強い力を持っていても、判断を誤れば被害は広がる。
だからこの学校では、力そのものよりも
「誰と、どう戦うか」が重視される。
一年間、同じ相手と組む。
逃げ場はない。
相性が悪くても、結果は出さなければならない。
これは、少年が“相棒”を得る物語。
そして、その関係が試され始める物語だ。
第六話 一年の契約
ペア訓練から数日後、全クラスが講堂に集められた。
普段よりも空気が重い。
誰もが、今日の話の内容を察している。
教師が壇上に立ち、短く告げた。
「本日より、一年間の固定ペアを決定する」
ざわ、と空気が揺れる。
「このペアは、授業・訓練・校外演習、すべて共に行動する。
変更は原則なし」
一年。
思っていたより、ずっと長い。
「理由は単純だ」
教師は続ける。
「戦場では、即席の連携など通用しない。
相手の癖、判断の速さ、迷い――すべてを理解して初めて、命を預けられる」
視線が、僕のほうにも向けられる。
音の能力。
制圧型。
扱いが難しい。
組みたい者もいれば、避けたい者もいるだろう。
「ペアは、学校側が決定する」
その一言で、場が静まった。
名前が、順番に呼ばれていく。
組み合わせが発表されるたびに、
安堵の声や、押し殺した不満が漏れる。
そして――
「音系能力者。編入生」
一瞬、心拍が跳ねた。
「風系能力者、リク。
以上の二名をペアとする」
……一瞬、何も聞こえなくなった。
隣を見ると、リクが驚いた顔をしている。
「……マジで?」
「決まりだ」
教師の声は、揺るがない。
「制圧と機動。補完関係にある。
一年間、その組み合わせで結果を出せ」
ざわめきが、今度ははっきりと僕らに向いた。
「やっぱりな」
「相性はいいけど……危険じゃないか?」
「音の制御、まだ不安定だろ」
ヴォイスが、静かに言った。
「覚悟はいいか」
「ああ」
講堂を出たあと、リクが頭をかいた。
「一年、か」
「嫌なら――」
言いかけて、止まる。
リクは笑った。
「嫌なわけないだろ。
むしろ、面白そうじゃん」
「……本気で言ってる?」
「当たり前だ」
歩きながら、リクは続けた。
「俺さ、派手な一撃とかないんだよ。
でも、君の音があると、動きやすい」
その言葉に、胸の奥が少しだけ熱くなる。
「俺もだ」
「え?」
「一人だと、制御に集中しすぎる。
でも、誰かが前に出てくれるなら……」
言葉にすると、初めて分かった。
僕の力は、
誰かと並ぶことで完成する。
ヴォイスが、低く呟く。
「一年あれば、十分だ」
「何が?」
「――世界を驚かせるにはな」
僕とリクは、校舎を見上げた。
ここから始まる。
一年間のペア。
逃げられない時間。
でも、不思議と不安はなかった。
隣に、同じ方向を見る相棒がいる。
それだけで、
前に進める気がした。




