第四話 合格と距離
人と悪魔は、共に生きる存在だ。
力は祝福であり、同時に重荷でもある。
契約によって生まれる「じんま」は、
その能力によって期待され、恐れられ、時に距離を置かれる。
特に、攻撃系の力を持つ強能力は――
人々の希望であり、異物でもあった。
これは、その境界に立たされた少年の物語。
力を持った瞬間から、孤独と向き合う物語である。
第四話 合格と距離
合格発表は、思っていたよりもあっさりしていた。
巨大なモニターに、番号が順番に表示される。
ざわめきと、息を呑む音が混じる中、僕は黙って画面を見上げていた。
――あった。
自分の番号を見つけた瞬間、胸の奥が少しだけ熱くなる。
でも、飛び上がるほどの喜びはなかった。
「……通ったな」
ヴォイスの声は、いつも通り静かだった。
周囲を見ると、歓声を上げる者もいれば、膝から崩れ落ちる者もいる。
喜びと絶望が、同じ空間に同時に存在していた。
その中で、僕に向けられる視線は、少し違っていた。
「編入生の……音のやつだろ」
「攻撃してないのに全部制圧したって」
「正直、気味悪くないか?」
聞こえないふりをしても、耳に入ってくる。
悪意というほどじゃない。
でも、距離を取られているのは分かった。
強能力。
期待される存在であると同時に、理解されない存在。
「気にするな」
ヴォイスが言う。
「お前は、お前のやり方でいい」
そのときだった。
「なあ」
後ろから、気の抜けた声がした。
振り向くと、少し背の低い少年が立っていた。
明るい色の髪に、眠そうな目。
どこか緊張感がない。
「さっきの試験、すごかったな」
「……ありがとう」
短く答えると、少年は笑った。
「俺、リク。能力は風系。攻撃力はそこそこ」
「君は?」
一瞬、間が空く。
名前を名乗るだけなのに、なぜか慎重になる自分がいた。
「……音だ」
「音?」
リクは目を丸くした。
「へえ! それ、めちゃくちゃ面白そうじゃん」
「怖くないのか?」
思わず聞いてしまう。
リクは首をかしげた。
「何が?」
「俺の力。変だって言われる」
「あー……まあ、変ではあるな」
一瞬、胸が沈む。
でも、リクは続けた。
「でもさ、強いってことだろ?
それに、守るために使ってるなら、別にいいじゃん」
その言葉に、少しだけ救われた気がした。
「これから同じクラスだろ?」
「たぶん」
「じゃあさ、よろしくな」
そう言って、リクは自然に手を差し出した。
僕は少し迷ってから、その手を握った。
――初めてだった。
力じゃなく、僕自身を見てくれた人は。
ヴォイスが、静かに呟く。
「……良い人間だな」
「お前が言うなよ」
小さく笑う。
合格はゴールじゃない。
むしろ、ここからが始まりだ。
期待と警戒の中で、
それでも僕は、前に進く。
隣に、一人の友達を連れて。
質問があれば気楽にお声掛けください。




