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第三話 実戦試験

人と悪魔は、対立する存在ではない。

この世界では、はるか昔から共に生き、共に文明を築いてきた。


人間の家系と悪魔の家系は、生まれた瞬間から結びついている。

人間が生まれれば、対応する悪魔も同じ日に生まれる。

それは偶然ではなく、血と運命による“対”だ。


10歳になると、人と悪魔は初めて顔を合わせ、契約を結ぶ。

契約を結んだ者は、人間悪魔――通称「じんま」と呼ばれる。


じんまの力はさまざまだ。

生活を支える力、補助の力、そして攻撃のための力。


攻撃系の能力を持つじんまは希少で、人々は彼らを特別視する。

それが、この世界で「強能力」と呼ばれる存在だ。


これは、その強能力の一人――

音の悪魔と契約した少年の物語である。

フィールドが、音を立てて動き出した。


地面が分断され、足場がせり上がる。

壁が現れ、通路が閉じ、視界が一気に変わった。


――街だ。


ただし、誰も住んでいない。

戦うためだけに作られた、空の街。


「実戦試験を開始する」


試験官の声が、上空から響く。


「この試験では、能力の強さだけでなく、判断力、制御、そして悪魔との連携を見る」


緊張が走る。

周囲を見ると、他の受験者たちも構えていた。


次の瞬間、フィールドの各所に黒い影が現れた。


「模擬敵体、出現」


影は形を変え、人型になる。

悪魔を模した存在――だが、動きは本物に近い。


「……来るぞ」


ヴォイスの声が、頭の奥で低く響いた。


影の一体が、こちらに向かって走り出す。


速い。


考えるより先に、身体が動いた。

僕は地面を蹴り、距離を取る。


「音を使え。ただし、出力は抑えろ」


「分かってる!」


息を吸い、音を“鳴らす”。


その瞬間、足元の影から煙が立ち上がった。

空気が震え、低い共鳴音が広がる。


影の動きが、一瞬だけ止まった。


――今だ。


振動を集中させる。

直接壊すんじゃない。

“崩す”。


音の波が、影の足元を揺らし、体勢を崩させた。


影は地面に倒れ、そのまま霧のように消えた。


「一体、撃破」


放送が淡々と告げる。


周囲がざわついた。


「今の、何だ?」

「音だけで……?」


僕は答えない。

いや、答えられなかった。


自分でも、完全に理解していない。


二体目、三体目が現れる。

今度は挟み撃ちだ。


「焦るな」


ヴォイスが言う。


「音は“線”じゃない。“面”だ」


その言葉に従い、僕は一気に範囲を広げた。


低い音。

目には見えない波が、煙と共に広がる。


影たちは一斉に動きを乱し、互いにぶつかり合った。


その隙に、僕は一体ずつ処理していく。


息が荒くなる。

制御が、ぎりぎりだ。


「……十分だ」


最後の影が消えた瞬間、フィールドが静かになった。


「実戦試験、終了」


試験官の声が響く。


沈黙。

そして、重い視線。


僕は、何かをやってしまった気がした。


試験官の一人が、記録端末を見ながら呟く。


「攻撃判定なし……だが、制圧能力が異常だ」

「音で空間を支配している……?」


ヴォイスが、楽しそうに言った。


「な?

壊さなくても、勝てるだろ」


僕は、まだ震える手を握りしめる。


これが、実戦。

これが、強能力の世界。


――そして、ここからが本当の始まりだ。

質問があれば気楽にお声掛けください。

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