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第17話 走り出す準備

ヒーローに必要なのは、力だけじゃない。

戦う場所へ向かうための“足”もまた、生き残るための武器だ。

訓練を終えて教室に戻ると、まだスーツの余韻が残っていた。

背中の模様は透明に戻っているけど、

確かにそこに“何か”が刻まれた感覚がある。


席についた瞬間、先生が手を叩いた。


「よし、次だ」


その一言で、教室の空気が変わる。


「次は――ヒーロー用の乗り物を作ってもらう」


一瞬、静まり返ってから、


「ええ!?」「また作るの!?」

という声が一気に上がった。


リクが手を挙げる。


「先生、

俺たち作る系多くないですか?」


教室が少し笑いに包まれる。


先生は肩をすくめて答えた。


「いい質問だ」


そして、少し真剣な声になる。


「今は、そういう時期だ」


モニターに街の映像が映し出される。

過去の災害、事件、暴走した契約者。


「これから、お前たちは実際にヒーロー活動に関わる」


ざわっと空気が揺れた。


「現場では、移動が遅いだけで人は死ぬ。

だから――」


先生は、はっきり言った。


「自分の能力に合った“足”を持て」


作業が始まる。


俺は設計台に向かい、

音の伝導、振動、反発――

頭の中で条件を組み立てていく。


【ヴォイス】

「速さだけじゃないな、響。

“止まれる”ことも重要だ」


「ああ、分かってる」


リクはリクで、

安定性と地形対応を重視しているようだった。


「派手じゃなくていい。

戻ってこれるやつを作る」


その言葉が、妙に胸に残った。


時間はあっという間に過ぎ、

形になった乗り物が並び始める。


完成度はそれぞれ違う。

でも、どれも“生き残るため”に考え抜かれていた。


そのとき。


教室のドアがノックされる。


「月城 響、リク。

校長室に来るように」


教室が一斉にこっちを見る。


「……今?」


リクが小声で言う。


「たぶん、

作り終わるの待ってたんだろ」


先生が静かに頷いた。


「行ってこい。

ヒーローとしての“次の段階”だ」


俺とリクは、乗り物をその場に残し、

校長室へ向かう廊下を歩き出す。


【ヴォイス】

「……騒がしくなりそうだな」


「だな」


まだ何も聞かされていない。

それでも分かる。


これは、

“準備”の話じゃない。


始まりの呼び出しだ。

校長室へ向かう廊下。

少しだけ緊張した空気の中で、俺とリクは並んで歩いていた。


そのとき――


【ヴォイス】

「……ああ、なるほど」


頭の中に、低く澄んだ声が響く。


【ヴォイス】

「お前が、リクの悪魔か」


一瞬遅れて、別の気配が応じた。


【???】

「初めまして、音の悪魔。

私はクオン。彼の判断を補助する者だ」


静かで落ち着いた声。

ヴォイスとは正反対の温度を感じる。


【ヴォイス】

「ほう……随分と冷静だな。

主も似たタイプか?」


【クオン】

「似てはいない。

だからこそ、組む意味がある」


リクが小さく眉をひそめた。


「……なあ、今、何の話してる?」


「悪魔同士の自己紹介」


そう答えると、リクは少し驚いた顔をする。


「え、もうやってんのかよ」


【ヴォイス】

「遅いくらいだ。

これから同じ現場に立つなら、礼儀は必要だろ?」


【クオン】

「同意する。

我々が連携できなければ、主は無駄に傷つく」


その言葉に、リクが小さく笑った。


「……頼もしいな、お前」


【クオン】

「当然だ。

私は“ペア”の悪魔だからな」


ヴォイスが、少しだけ楽しそうに言った。


【ヴォイス】

「いいじゃないか。

音と理性――案外、悪くない組み合わせだ」


四人の気配が、同じ方向を向く。


校長室の扉は、もうすぐそこだった。

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