第16話 青く灯る背中
強能力者にとって、力とは一人で振るうものじゃない。
悪魔と、人と、そして“隣に立つ相手”と共有して初めて、
それは本当の意味を持つ。
訓練場には、低い機械音が響いていた。
金属の床、壁一面に並ぶモニター。
その中央で、俺とリクは背中合わせに立っている。
「……緊張してる?」
リクが、いつもより静かな声で聞いてきた。
「少しな」
俺は正直に答えた。
今日やるのは、戦闘服の最終改良。
そして――一年間ペアを組む、俺たち専用の“印”を刻む作業だ。
先生が腕を組んで言う。
「いいか。
この模様は飾りじゃない。
ペアの信頼、悪魔との同調、全部が反映される」
「ペア同士で、自由に決めろ。
ただし――中途半端は許さん」
教室がざわつく。
みんな、真剣な顔で話し合いを始めていた。
俺とリクは、しばらく無言だった。
「……木、どうだ?」
不意にリクが言った。
「木?」
「根っこがあってさ、
見えないところで水を吸い上げて、
ちゃんと立ってるやつ」
俺は少し考えて、頷いた。
「いいな。
俺たち、派手じゃないけど……折れない」
そう言うと、背中に装着されたスーツが微かに反応した。
模様は、普段は完全に透明。
何もないかのように、そこに“在る”。
だが――
「悪魔と同期、開始」
先生の声と同時に、
ヴォイスとリクの悪魔が、同時に気配を強めた。
【ヴォイス(テレパシー)】
「……来るぞ、響」
次の瞬間。
背中から、淡い青が走った。
木の幹のように、枝のように、
水を吸い上げるような流れで、模様が光りだす。
「……すげ」
誰かが、思わず声を漏らした。
俺は音を発生させる。
低く、安定した振動。
リクが前に出る。
無駄のない動きで、空間を制圧する。
二人の背中の模様が、同じリズムで青く脈打つ。
「同期率、異常なし……いや、むしろ高すぎるな」
先生が、珍しく目を細めた。
「一年ペア制にして正解だったかもしれん」
訓練が終わり、俺たちは息を整えていた。
「なあ、響」
リクが笑う。
「この模様さ。
ずっと青く光らせていこうぜ」
俺も、少しだけ笑った。
「ああ。
そのために、俺たち組んでるんだろ」
背中の模様は、ゆっくりと光を消し、
また透明に戻っていった。
でも――
確かにそこには、もう消えない“つながり”があった。




