第12話 帰還の温度
任務は終われば、それで終わりじゃない。
戦いのあとには、評価があり、視線があり、沈黙がある。
守ったはずの世界は、必ずしも拍手で迎えてくれるとは限らない。
これは――
初任務を終えた少年たちが、
「強さの重さ」を知る話だ。
第12話 帰還の温度
輸送車が訓練学校のゲートをくぐったとき、
車内には妙な静けさが残っていた。
誰も怪我はしていない。
任務は成功。
それでも、胸の奥に引っかかるものが消えない。
「……終わった、よな?」
リクが小さく言った。
「一応な」
そう答えたけど、声に自信はなかった。
バッグの中で、ヴォイスが小さく動く気配がする。
テレパシーが届いた。
【ヴォイス】
「“静かすぎる”な。帰還後ってのは、だいたいこうだ」
校内に入ると、視線が集まった。
ざわつき。
ヒソヒソ声。
でも、誰も近づいてこない。
「……なんか、空気変わってね?」
リクが眉をひそめる。
廊下の壁に映る俺たちは、
少しだけ“前”とは違って見えた。
英雄扱いでもない。
でも、ただの生徒でもない。
その中途半端な距離感が、やけにリアルだった。
校長室では、簡潔な報告だけが行われた。
「初任務としては十分だ」
校長はそう言って、俺とリクを見た。
「だが、忘れるな。
今回の敵は“例外”ではない。
これから先、もっと歪んだ契約者と向き合うことになる」
褒め言葉は、それだけだった。
寮に戻る途中、リクが急に立ち止まった。
「なあ、響」
「ん?」
「……俺さ、正直ちょっと怖かった」
意外だった。
あの戦闘中、一番前に出てたのはリクだったから。
「自分が、どこまで行くのか分かんなくてさ」
俺は少し考えてから言った。
「俺もだよ。
でも……一人じゃなかった」
リクが笑う。
「だな。悪魔も、先輩も、相棒もいる」
その言葉に、ヴォイスが小さく反応した。
【ヴォイス】
「ようやく自覚したか。お前はもう“一人分”じゃない」
その夜、ベッドに横になっても、すぐには眠れなかった。
任務の音。
敵の叫び。
封じたはずの静寂。
全部が、まだ耳に残っている。
(これが、帰還後か……)
守るってことは、
戦うことだけじゃ終わらない。
そう思いながら、俺は目を閉じた。
明日から、学校はまた日常に戻る。
でも――
俺たちは、もう同じ場所には立っていない。
初任務の“余韻”は、
確かに、俺たちを次の段階へ押し出していた。




