10話 初任務・戦闘開始 続
悪魔と契約することは、この世界では特別なことじゃない。
だが――その力を、誰のために使うかで意味は大きく変わる。
任務とは、正義を試される場だ。
敵の強さだけでなく、自分自身の覚悟も問われる。
これは、月城 響が
「訓練生」から「戦う者」へと踏み出す、最初の戦場。
音が、運命を揺らし始める――。
第10話(続き) 初任務・戦闘開始
林道の奥から、歪んだ気配があふれ出す。
木々の間に立っていたのは、三人の契約者――いや、悪魔を悪用している人間だった。
「来たな……」
先輩の一人が低くつぶやく。
その瞬間だった。
――ドンッ
俺の背後で、空気が震えた。
ヴォイスが完全に元の姿へと戻る。
黒を基調とした身体に、細く走る青いライン。
人間と同じ身長ほどに巨大化し、地面に静かに降り立つ。
【ヴォイス(テレパシー)】
「戦闘態勢。音域、解放」
同時に、リクの悪魔、先輩たちの悪魔も一斉に実体化する。
空気が変わった。
さっきまでの“移動”とは違う、本物の戦場の空気だ。
敵の一人が笑う。
「ガキまで連れてきたのかよ」
その瞬間――
――キィィン……!
俺の耳に、鋭い高音が走った。
ヴォイスが指を鳴らしただけだ。
だが、音は空気を切り裂き、敵の足元の地面を粉砕した。
「なっ……!?」
先輩の声が飛ぶ。
「今だ、動くぞ!」
リクが前に出る。
「響、合わせろ!」
【ヴォイス】
「低周波、拡散――」
俺は息を吸い、感覚を集中させる。
音が“見える”。
振動が、敵の身体の中まで伝わっていくのが分かる。
――ズンッ
低い音が地面を伝い、敵の体勢を崩す。
「くそっ、身体が……!」
先輩たちが一気に距離を詰める。
悪魔と人間が完璧に連携した動きだ。
俺は一歩遅れて気づく。
(……音は、攻撃だけじゃない)
【ヴォイス】
「響、音は“壊す”だけじゃない。“制御”できる」
俺は頷く。
次の瞬間、俺は音を“ずらした”。
敵の攻撃音――
足音、呼吸、悪魔の咆哮。
それらをわずかに狂わせる。
「なに……方向感覚が……!」
敵の一人が混乱する。
リクが叫ぶ。
「今だ!!」
――ドンッ!!
連携攻撃が決まり、敵の一人が地面に倒れ伏す。
先輩が短く言った。
「……一年で、この制御か」
その声には、驚きが混じっていた。
俺は息を整えながら、ヴォイスを見る。
【ヴォイス】
「これが、お前の力の一部だ。
まだ“序章”にすぎない」
敵は、まだ残っている。
だが、俺はもう怖くなかった。
(月城 響――
俺は、この力で守る)
初任務は、まだ終わらない。




