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NIGHTMARE RAVENS  作者: 96500C/mol
Chapter 6. 手繋 -Stile Concertato-
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#2 光刃

 水へと融け、床に散らばったつららを今度は草原へと作り替える瓜花。

 それを紅蓮の火の海へと作り替えるマハーレ。床から空中の瓜花めがけて噴き出した火柱は瓜花によって土塊に作り変えられ、崩れた土の柱は火を覆いつくして窒息消火する。

 瓜花とマハーレ、二人の魔奏が図書館内の物理法則を捻じ曲げ、自在に元素を作り変えて互いを攻撃している。左脛から血を流すクローディアは床に寝そべりながら、自分には手の届かない世界で戦う二人をただ見ているしかなかった。

 仲間を守る壁――――それが自分の、唯一の存在意義と信じていたクローディアであったのに。今のクローディアは、それすら全うできていない。


「先輩、大丈夫ですか」


 ぼろぼろのヴェルナがクローディアに駆け寄り、つららを引き抜いて足に手を当てて回復魔法をかける。血は直ぐに止まったが、凍傷を受けた組織や骨は直ぐには治らず、クローディアは相変わらず動けなかった。


「ヴェルナ、離れていなさい。ここは戦場よ、いつ流れ弾が飛んでくるか……」

「いやです!」ヴェルナはクローディアの言葉を遮り、強く否定した。「師匠が死んだとき、あたしはロアノールにいたんです。

 あたしも『NIGHT RAVEN』に入っていれば、師匠が死んだときも側にいられたらって、何度後悔したか分かりません」

「何を言っているの。あんな場所にいたら、あなたまできっと死んでたわ」

「それでも」


 ヴェルナは回復魔法をかける手でクローディアの足をぎゅっと握りしめた。

 痛みを感じてクローディアは声を上げかけたが、なんとか飲み込んだ。ヴェルナのこの力強さは、師匠であったユリーカを失った悲しみや苦しみ、後悔から来るものだ。絶対にこの手を離したくない――――その強い意志がそうさせているのだ。


「それでも、一緒にいたかったんです。目の前で死なれるくらいなら、いっそ一緒に……!」

「馬鹿な子」


 師匠であるユリーカを失った悲しみを思い出し、涙をぼろぼろと流し始めたヴェルナ。クローディアはヴェルナの頬に手を伸ばし、その頬を伝う涙を指で優しく拭き取った。


「どうせ私は死なないのに。こんなところにいたらあなただけ死んじゃうじゃない」


 そう語るクローディアの口調は優しい。

 今まで自分を「いくら死んでも生き返る使い捨ての壁」としてしか考えていなかったクローディアを、一人の人間として扱ってくれる人がいる。それだけで、クローディアにとってはとても嬉しいことだった。

 クローディアとヴェルナのやり取りを前に、瓜花の視線が逸れる。その一瞬を、マハーレは見逃さなかった。


「今だよ、ライラ!」

「……ありがと、みんなッ!」


 振り上げたライラの大剣が、天井まで突き抜ける巨大な光の柱を放った。

 噴き上がるエネルギーの奔流が、図書館ホールの天井に張られた結界を破らんと暴れている。ガタガタと震える刀身を、ライラは両手で柄をしっかりと握ったまま、頭上に掲げていた。

 これは光の柱ではない。ライラの練り上げた気を、ただざっくばらんに放出して形成した、超特大の光の刃だ。


「ウチを信じてくれて、ありがとう! 信頼には応える、それが竜剣士や!」

「おまえ、なんだその魔奏……いや、これはっ!」

「散々ウチの友だちを痛めつけてくれたね! 食らえっ! 驚天動地、『白夜彩極星』ィッ!!」


 ライラが光の刃を振り下ろす。ライラの『万物劈開』の動きに合わせて、光の刃は空間をゆっくりと切断していった。『万物劈開』から放たれる、すべてを分解する魔奏を纏わせたエネルギーの奔流は、瓜花の張った三重の防御魔法結界の2枚を容易く打ち破った。

 最後の1枚、瓜花を覆うように形成された正十二面体型の防御結界ごと、瓜花は光の刃に押されて地面にたたきつけられる。


「うおおおおッ! 往生せいやーッ!」


 ライラが握る『万物劈開』に力を込める。噴き出すエネルギーは瓜花の結界を飲み込んだ。

 激しい濁流に、川の石が飲まれるように。瓜花の姿を『万物劈開』の光が包んでいく。図書館のホールは弾けた光に満たされ、その場にいた全員が眩しさに目を覆い隠した。

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