怪異!? 消えた男とコタツ~
ここは、とあるマンションの一室。
秋の中頃、冷え込みが一段と厳しくなった夜の話。
そこの住人である男は居間の片隅で、コタツの準備をしていた。
コードを差し込み、ヒーターが赤く灯る。
低く唸るような音と共に、ほんのりと暖かい空気が布団の内に満ちていった。
男が試しに足を入れると、ふわりと熱が肌を包み込んだ。
その瞬間、全身の力が抜けていく。
「ああ……あったかい」
思わず声が漏れる。外は風が唸り、窓を叩く音がしているのに、コタツの中だけは別世界のようだった。
男はもう少しだけ、と思いながら体を沈めていく。
腰まで、その後胸まで、いつの間にか肩まで布団の中に潜り込んでいた。
コタツという狭い空間の息苦しさよりも、心地よさが勝っていた。
外の冷気はもう感じられない。ただ、熱だけがあった。
そして、その熱は次第に強くなっていく。
「……ちょっと暑いな」
そう思っても、体が動かない。 出るのが怖いのではない、ただ出たくなかった。
意識が沈んでいく⋯⋯このまま眠ってしまってもいいと思えた。
いつの間にか、コタツの横には服が乱雑に置かれていた。
ジーンズ、パーカー、シャツ。
どれも、男がさっきまで着ていたものだった。
直にコタツの熱を浴びて火傷しないか――しかし、そんなことは男にはもう、どうでもよかった。
意識が遠のく中で、男は小さく呟いた。
「ずっと……このまま、温まっていたい……」
夜が明けた。
朝、男に用事があり、部屋を訪れた友人は、鍵の掛かってない部屋で異様な光景を目にする。
置かれたままの靴、乱雑に置かれた服に、つけっぱなしのコタツ。
ーーまるで先程まで誰かがいた様な部屋の様子。
しかし誰もいない。 ただ、コタツの赤い光が、不気味に光っていた。
布団に触れると、人肌のようなぬくもりがあった。
まるで生きているように。
その夜、友人は夢を見た。
コタツの中から男が顔を出し、にっこりと笑って言う。
「なあ、お前もコタツに入ろぜ! あったかいぞ!」
夢から覚めると、部屋の隅に男の家にあった、古いコタツが置かれていた。
それに触れてみると、ほんのり温かかった。 友人は恐怖した。
――なぜなら友人は男の家からコタツを持ち帰った覚えはないからである。
その後、友人やそのコタツがどうなったかって?
それは、貴方の想像にお任せします。




