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オレたちゃガイコツ! 陽気なガイコツ!

作者: かぼす
掲載日:2025/11/02


 オレたちゃガイコツ! 陽気なガイコツ!


 沢山のマリーゴールドに包まれた墓地にて、骸骨たちが酒を片手に踊っていた。

 なんだこれ? ……なんだこれ?

 夢でも見ているんじゃないかと優介(ゆうすけ)は頭を抱えた。


 自分の知るこの墓地はいつも静かでお盆の時期にならない限りほとんど人がいない。花なんて、お供えのものぐらいしかないはずなのに、こんな一面あるなんておかしい。

 何より、骸骨が歌って踊ってるなんてありえない。

 ハロウィン会場である公園までの近道として、この墓地を通らなければ良かったと優介は後悔した。


Hola(オラ)! キミも旅行中かイ? オレらも彼に誘われてここを観光してるんダ」


 優介に気づいた骸骨が一人、話しかけてきた。

 黒いコートで身を包みペストマスクで顔を隠しているダークな装いの優介とは違い、話しかけにきた骸骨の衣装は華やかなものだった。


 色鮮やかな刺繍が施された白スーツ、スーツに合わせたツバの広いハット。そして、骸骨自身の顔もオレンジやピンクなど明るい色でペイントされている。色は違えど、派手な見た目の骸骨は他に二、三人ほどいた。


「え、えと……」


 本当の幽霊に遭遇した怖さというより、幽霊でも感じとってしまう陽キャのオーラとノリに優介は怖気付いてしまう。

 返答に困っていると助け舟が現れた。

 派手な見た目の骸骨集団の奥から一回り小さい骸骨が現れた。


「いやぁ、旅行中にこいつらと出会って、意気投合したから、俺のところにも来てもらったんだ」


 ペイントも何もしていない。紺の甚平を身に包んだ骸骨。他の骸骨とは違って優介はなぜかこの骸骨に親しみを感じた。


「ボウズ、せっかくだし、お前も飲むか?」

「いえ、未成年ですし、遠慮しておきます」

「まじめだなぁ。もう、死んでるんだし、気にしなくていいだろ?」

「いや、」


 自分、まだ生きてますが。

 どうにか優介は言葉を飲み込んだ。

 ハロウィンには悪霊たちが現れ、悪さをすると聞いたことがある。彼らが悪い霊か、良い霊かなんて分からない。幸い、優介は仮装のおかげで仲間だと勘違いされている。このまま勘違いされた方が身のためだ。


 ……もし、人間だとバレたらどうなるのだろうか?

 背筋がゾッとする。


「せっかくの日なんダ! うまいもん食っテ、楽しい話をして、歌っテ、踊ろうゼ!」


 そんな優介の心境とは裏腹に骸骨たちは墓地のど真ん中で宴を始める。

 一際派手な骸骨が一回転すると、彼の手にはいつの間にかギターが握られていた。

 彼が一音奏でると、マリーゴールドの花びらが踊るように舞い始めた。

 今度は知らない言語ではあるが、より一層の笑顔?で骸骨は歌う。


 楽しそう。不謹慎ながら優介はそう思ってしまった。

 墓地でこんな馬鹿騒ぎをしているなんて失礼極まりないのに、だ。

 今日は年に一度のハロウィン。人間だって、化け物になるのを許される日。明日からはまた良い子に戻るから、今日くらい悪さをしたってみんな目を瞑ってくれるだろう。

 優介の身体は勝手に動いていた。拙い足取りではあるが、骸骨たちのリズムに合わせて宴に飛び込んだ。


「楽しイ! 楽しイ! こんなに楽しイのは久しぶりダ!」

「オレたちの故郷はみんなイカれちまったから宴どころじゃなかったからナ!」

「粉でみんな頭も、骨もボロボロダ!」


 人見知りで控え目な優介ではあるが、気づけば彼らとのバカ騒ぎを悪くないと思っていた。いつも通りハロウィン会場に行っても、自治会の大人たちの手伝いをする羽目になっていただろうし、これで良かったのかもしれない。


「ボウズ、付き合ってくれてありがとうな。……ボウズはまだ帰りたい場所に帰ることができるんだろ……? なら、そろそろお別れだ」


 だというのに甚平を着た骸骨が優介にさよならを言う。


「もし、このバカ騒ぎが楽しかったんなら、また来年も俺たちのこと思い出して騒いでくれたら嬉しい」


 風が強く吹き始める。マリーゴールドの花びらの中に銀杏の葉が混ざり始める。


「盆みたいにしけた顔で歓迎されるより、今日みたいに墓場の前でもいいから楽しそうに騒いでくれてた方が性に合うんだ」


 さよならをまだ言いたくないのに、目を離してはいけないのに、風の強さに耐えきれず思わず優介は目を瞑ってしまう。


「じゃあな」


 そうして再び目を開けると、骸骨たちも、一面のマリーゴールドの花畑も幻のように消えていた。






 ピコン。

 静寂には似合わない機械的な音が優介のポケットから鳴り響いた。母からの連絡だ。



『優介、昨日ね、おじいちゃん、亡くなったらしいの』



 優介は、ふと甚平に身を包み、縁側でよく酒を飲んでいた祖父の姿を思い出した。


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