転生仏独
しちかいよう!の二次創作(?)作品です!
1945年、第三帝国、ベルリン。東西両国から攻められて、銃声や戦車の走行音、大砲の音が鳴りやまぬ中、一人の少女がブランデンブルク門の下を走っていた。彼女の名前はゲルマニア・アウグステ。キリスト教信者で、千年帝国を夢見る一人の少女だ。千年帝国とは、新約聖書の「ヨハネの黙示録」を典拠とした説であり、終末論の一つである。そして、彼女は知っていた。この国の目指すところが『そこ』であること。そして、その願いは叶うことがないということを。だが、彼女は喜んでいた。彼女の手には一つの果実があった。それは、少し前に天使から渡されたものだった。その天使はこういった。「その果実を一噛りすれば、どんな運命だろうと変えられる」と。その言葉を信じた幼い少女は、天使の言葉を信じた。門の内側に入ると、彼女は迷うことなく果実をかじった。破滅の運命を消し去り、永遠の繁栄を手にすべく。そして、彼女の意識は遠のいた。
彼女が目を覚ますと、そこには知らない町並みが広がっていた。ここは800年頃から1800年頃まで続いたとされる神聖ローマ帝国、その中で最初の首都となったアーヘンと言う名の都市である。彼女がいるのは1241年、モンゴル帝国の全盛期にして、同帝国によるポーランド王国侵攻の真っ只中であった。今まで歴史を学んでこなかった少女はそこで知った。神聖ローマ帝国の支援やドイツ騎士団の援軍があったにも関わらず、ポーランド王国は果実をかじる前では野蛮とされていたアジアの烏合の衆に敗北したことを。歴史を知らない少女はこの国に見切りをつけ、また果実をかじった。
再び少女が目を覚ますと、空には見知ったトリコロールの旗が揺れていた。ここは1795年のフランス革命期のフランク王国首都、パリである。まだ当時はエッフェル塔はなく、フランスの象徴とも言える鉄塔は立っていないものの、街並みは変わっていないように思えた。その点は、少女を安心させるのに十分な要素であった。彼女の目の前には処刑台が置かれており、これから誰かが処刑されることはわかっていた。その後、彼女は思い知った。いかに権力を持った者でもいつかは滅んでしまうということを。処刑されたのはルイ16世、フランス革命前最後の国王であった。彼は最後にこう言い残している。『私は無実のうちに死ぬ。私は私の死を作り出した者を許す。私の血が二度とフランスの地に落ちることのないように神に祈りたい。』と。彼女はその悲惨な光景から目をそらすようにして、またもう一度果実をかじった。
目を覚ますと、そこには変わり果てた故郷の姿があった。所々で煙が上がり、建物のいくつかは崩壊しかけていた。皮肉なことに、彼女が見たものが夢であったこと、そして、天使の言葉が嘘であったという証明でもあった。天使からもらった果実を投げ捨てた彼女の横を見たことのない戦車が通り過ぎていく。その戦車はT-34と呼ばれる戦車で、憎き野蛮な共産国家の主力戦車であった。そして、ブランデンブルク門に掲げられた旗は紅地に黄色の星、そして鎌と槌が描かれたUdSSRの国旗が掲げられていた。それにより、図らずとも祖国が戦争に敗北したことを悟った。その後、ベルリンはブランデンブルク門を境にして米ソで分割統治されることになった。そこにいたアメリカ軍兵士と仲良くなり、知ったことがあった。それは、『2000年以上続く皇室を持つ国家が極東にある』ということだ。彼女はその国に興味を持ち、調べた。そして彼女は知った。その国が『日本』と呼ばれる島国だということ。第三帝国が『名誉アーリア人』として我々の同胞と認めた人々が住む国だということ。そして、『天皇家』と呼ばれる皇室が振れ幅があるにしても1000年以上続いているということがわかった。そして、彼女は日本にわたり、彼の国で生涯を過ごした。この国が永遠に繁栄すると信じて。