落下
その日も寒い夜だった。
僕達が生まれたのは。
寒い。
寒い夜。
霧のかかった視界には兄弟たちいた。
生まれたばかりの兄弟たちが。
殆ど同時に生まれた兄弟たちが。
フワフワとした体の兄弟たちが。
「初めまして兄さん」
「初めまして姉さん」
「さようなら弟よ」
「さいなら妹」
「またいつかね~~」
「ばいばい」
初めて会う兄弟たちは一斉に地上に落ちた。
僕もだ。
怖い。
怖い。
生まれて初めての落下。
遥か下にある地上を目指し落下した僕ら。
寒い。
寒い。
冷たい風が僕らの体を冷やす。
だけど更に地上に近づくにつれ異変が起こる。
「いやあああああっ!」
「熱いっ!」
「いやだああああああっ!」
「死にたくないいいいいっ!」
悲鳴が上がる。
兄弟たちの。
「熱いいいいいいいいいっ!」
気が付くと僕の口からも悲鳴が出ていた。
兄弟たちの体が溶けていた。
ドロドロと。
僕の体も溶けていた。
ドロドロと。
熱い。
熱い。
熱い。
「死にたくないいいいいいっ!」
「いやだあああああああああああああああああっ!」
「助けてええええええええええっ!」
「誰かああああああああああっ!」
そうして僕ら兄弟は死んだ。
とある街。
「あ~~霙雪」
「寒いと思ったら雪が降り始めてるよ」
「お母さん~~夕飯なに?」
「すき焼きよ」
「わ~~い」
シンシンと雪が降っている。
シンシンと。
シンシンと。