97 地下に潜む危うさ
「確かにここで休むのは危険です。鉱山病の恐れがあります」
「鉱山病?」
ビアトロの指摘にアクレイが聞き返す。
「主に鉱山や洞窟の中に長くいるとかかる病です。
頭痛を引き起こし、最悪倒れてしまう。大地の妖精の悪戯とも言われています」
ビアトロの説明を聞いたアクレイやルアンスが渋い顔になる。
「むう、それなら入り口近くで見張りを立てながらのほうが良さそうだな」
「あたしはどっちも嫌よ。早く酒場への道を見つけましょうよ」
野宿前提の流れになり始めたのを察したリュレルが声を上げる。
「そうだな」
そう言いながら彼らは探索を再開する。
しばらくして、彼らは入り口から降りてきた斜面の真下、死角になっているところにある横穴に気づく。
「こんなところにも」
松明で横穴の奥を照らしてみるが、灯りは奥まで届かず、かなり深いのがわかる。
穴の幅、高さもお世辞にもあるとは言えず、大人の背丈で天井すれすれ、横幅もかろうじて交差の行き来ができる程度。
「行ってみましょう」
「皆でか?」
松明を手に奧を覗き込んだビアトロに尋ねるアクレイ。しかし、ビアトロは首を振る。
「いえ、アクレイとルアンスはここに残ってください」
「なぜだ?」
「ここまで狭いと何かあっても短剣くらいしか使えません。それに万一を考えて退路を確保しておく必要もあります」
「分かった。確かに私の得意とする場所ではなさそうだ」
ルアンスの言葉にうなずき、ビアトロとアルザー、そしてリュレルが松明を掲げて横穴に入る。
「本当に狭いわね」
「そろそろのはずだ」
一列になって横穴を進む三人。
あたりを見渡しながら最後尾を進むリュレルのつぶやきに松明を掲げて先頭を進むアルザーが答える。
「なにがよ」
「村の内外を隔てる境となっている柵が建てられている辺りだ」
突然の言葉にリュレルが眉を潜める。




