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89 ルアンスの初陣

「うむ。あれは仕えることになった騎士殿が治める領内にはびこるケルツの掃討だった。ちょうど昨日のような大規模な戦だ。私はまだ着慣れない鎧に身を包み、騎士殿が愛用する騎馬槍を預かっておった」


初めルアンスは淡々と語っていた。しかし、その語り口は徐々に熱を帯びてくる。


「数にまさるケルツに対し、こちらは粘り強く戦っていた、しかし、ついに騎士殿自ら動かれた!」


ついには吟遊詩人であるビアトロにも負けないくらい情熱的に語る、


「私が差し出した槍を手にした騎士殿は馬を駆ってケルツの群れに飛び込み、縦横無尽にケルツ共を蹴散らした!」


しかし、その情熱もそこまで語ると急速にすぼむ。


「……しかし、当のわたしは剣も槍も振るう機会などなく、眺めるだけでその戦は終わった。

まあ、従卒なのだから当然なのだが」


熱もなく、悔しさと諦めをにじませて語るルアンス。


「それからどうしたのです?」


「うむ、その仕えた騎士殿はその後病に倒れてな、わたしは騎士としての修行を終えることは叶わなかった」


先を促したビアトロに淡々とルアンスは答える。


「だが騎士殿の紹介でとある傭兵団に参加してな、そこで重戦士としての腕を磨いたのだ」


「なるほど」


「アクレイはどうだったのだ?」


相槌を打つビアトロにうなずき返したルアンスがアクレイに話を振ろうとすると、あたりを見回ってきたアルザーが戻ってくる。


「話はそこまでだ。いつまでも森の近くにいるのは面倒だからな」


「そうだな。では続きは昼にでも聞かせてもらおう」


ルアンスはそう言うと切り株におろしていた腰を上げる。


そうして一行は移動を再開し、しばらく進むと街道は森から離れ始め、再び小高い丘の合間を縫うように続いている。


森から離れれば見通しは良くなる。一行は交代で先んじて道の先にある丘の上に立ち、周囲を見張りながら進む。


やがて天上の太陽が頂点に達し、彼らは木陰で昼食を取る。


昨日とは違い、交代で見張りに立ちながらラトが用意してくれた保存食のポネを一同は食する。


果実汁の飲み物で喉を潤し、彼らは一時の休憩に入る。


そこで彼らは先程の話の続きを語り始める。


「俺の場合は村の近くに現れたケルツを幼なじみのルアンナと退治に行ったのが初めてだな」


ルアンスに先ほどの続きを促され、アクレイが語り始める。

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