7 掃討
森の奥で彼らが遭遇したのは悪戯子鬼と呼ばれる小型の怪物。
背丈は人間の子供くらい、顔は尖った耳と鼻が特徴、手には棍棒、防具は粗末な布を衣服として肩や胴を革製に見える鎧で覆う程度。
彼らは『歪み』と呼ばれる力によって下級の妖精が変貌した姿と言われており、歪みのあるところには必ずと行っていいほど現れる。
だが、それ故に彼らの特徴についての情報は広まっており、彼らは元となった妖精達の特徴に準じた個性、弱点を持っている。
例えばこうした平地や森に現れる悪戯子鬼は森の妖精族「深森痩精」の特徴が残っており、鉄に弱い。
そして悪戯子鬼達が身につけている棍棒や鎧もケルツたちとともに生まれた彼らの一部と言ってもよく、故に鉄の武器には全くの無力。
故に悪戯子鬼達が振り上げた棍棒はアクレイたちによっていともたやすく斬り飛ばされ、返す刃で鎧ごとケルツ自身も斬り伏せられる。
それを見た悪戯子鬼達は力の差を悟ったか、おののき我先に逃げ出し始める。
三方に散り、追うアクレイ達。
しかし、逃げ出した悪戯子鬼たちを阻むものがあった。
それは縄に繋がれたいくつもの蹄鉄。
蹄鉄は元々家畜を妖精から守るよけのお守りとしても使われていた。
それを繋いでぶら下げた縄で悪戯子鬼たちの退路を塞ぐ壁にしたのである。
悪戯子鬼達に迫るアクレイ。
振り返り、応戦しようとした悪戯子鬼達、だがアクレイの踏み込みのほうが早い!
吸い込まれるように振り下ろされる鉄の刃。
肩から脇腹にかけての一太刀。
血しぶきのように黒い霧をあげてのたうち回るケルツを一顧だにせず、アクレイは残ったケルツ達に斬りかかる
一撃、二撃、更に一撃。
一息の間に繰り出された軽やかな剣にケルツ達は為すすべもなく倒される。
アクレイは血糊を払うかのように剣を一振りしてから鞘に収める。
一方、アルザーやビアトロ達もまた、危なげなくケルツたちを仕留めていく。
「悪いな、『歪み』が消えたらまた戻ってきてくれ」
アルザーはそう言うと最後に残った悪戯子鬼に槍を突き立てる。