66 分断される悪戯小鬼(ケルツ)達
アルザーとアクレイを乗せた二頭の馬は緩やかな坂道をケルツの大群めがけて駆け上がる。
眼前に迫るケルツの大群。しかし、ケルツとケルツから逃げる男との差は縮まっている。
「追い付かれるぞ!」
「させるか!」
うめくアクレイにそう言うとアルザーは馬にまたがったまま身を起こすと、馬具で踏みしめながら上体をそらし、その態勢から反動の勢いをつけて手にした槍を投擲する。
西日に照らされた槍が宙を飛び、男の頭上を飛び越し、ケルツ達の先頭集団めがけて落下する。
気づいた最前列のケルツ達はあわてて四方に散ろうとするが、何匹かは槍に気がつかない他のケルツとぶつかり、あるいは足を止めたがゆえに後続のケルツに突き飛ばされて、それが理由で言い争いになり、先頭集団は大混乱になる。
そこに飛来した槍が地面に突きささる。
その槍と、何より足止めされたケルツ達自身によって草原を走るケルツの集団は左右二つの集団に分かれる。
ケルツ達が混乱し、足止めを食らうその間にアルザー達は商人との合流に成功する。
「た、助けてくれっ」
「乗れ!ここは俺たちが食い止める!向こうに本隊がいる!」
馬から下りたアルザーが簡潔に事態を伝え、商人に乗馬を促す。
「す、すまない、あんたたちに戦女神の……」
「いけっ!」
すがり付くように馬の背にまたがった商人は定型の挨拶をしようとするが、それをアルザーは遮って馬の尻をたたく。
馬はいななき走り出し、その後を追ってろばも走り出す。
一方、アクレイは馬上で剣を引き抜くと、切っ先を地面に向けたままケルツ達の集団に突っ込む。
馬の突進力にケルツが苦手とする鉄武器の威力が加わり、まるで布切れを引き裂くかのようにケルツの集団を引き裂く。
そこでアクレイは手綱を引き絞ると馬が前足を上げていななく。態勢を翻した馬が前足を地面を踏みしめると、今度は後ろ足で真後ろから襲おうとしたケルツを蹴り上げる!
「やるな、よく訓練されている」
その光景を見たアルザーがアクレイと彼が乗る馬を称賛する。
そのアクレイは先程アルザーが投げた槍めがけて馬を走らせるとその勢いのまま左手で槍を引き抜き、アルザーの方へと投げつける!
槍は風切り音を立ててアルザーの数歩先の地面に突き刺さる!と、彼は手にした剣を鞘に納めながら駆け寄り、槍を引き抜く!
とそのまま、間近のケルツに向かって槍を突き出す!




