61 対峙するかつてと今の復讐者
自分も彼女とともにまた、こうして稽古をつけてもらっていたことを。
世界を見てまわる自由な冒険の日々を夢見ながら…
だが、それは叶わなかった…はずだった。
しかし…
そうして、しばしの間エーブルの掛け声と剣の打ち合う音が響き合う。
と、そこに、
「アクレイ」
ルアンスが姿を現す。
「あんたか」
手を上げてエーブルを制したアクレイはルアンスへと目をやる。
「すこし、いいか」
「……ああ」
アクレイの返答は歯切れが悪い。彼を避けていたつもりはないが、こうして対面すると自分は彼を避けていたと感じる。
そう考えたアクレイは、エーブルに対し、
「少し休んだら素振りをしていてくれ」
「は、はい」
そう指示をするとルアンスに向き直る。
広場に一陣の乾いた風が吹き抜ける。日差しを避け、木陰に腰を下ろし二人は話す。
「……何が聞きたいんだ?」
「なぜ傭兵になった?」
「そのことか。別になりたかった訳じゃない」
そう言うとアクレイは身の上を話し始める。
育ったラウザ村でのこと、幼馴染のルアンナ、仮面の男ブル。生きる気力を失った自分に復讐という生きる目標を与え、剣を教えた師であるスクード。
数々の戦、そして仇であるブルとの出会いと復讐を遂げたこととその後に味わった空虚な日々。そしてそこから抜け出すきっかけを与えてくれた人々のこと。
「そうか、そんなことが」
身の上を聞いたルアンスはわずかに驚く。
「俺は奴を、村を焼いたあの男をこの手で仕留め、復讐を果たした。
でも、その後には何も残らない。かたきを討ったとしても何も戻らない。それどころか復讐だけを目指していたせいでこの先自分が何をしていけばいいのかも見失ってしまっていた。
俺を助けてくれた、剣の師でもあるスクードやガシオン公、ビアトロが俺に道を示してくれたから、俺は立ち直れた」
アクレイはふと、自身の右手を見つめ、手のひらを握ったり開いたりを繰り返す。
「復讐を遂げたときの昂りは今でも忘れてない。しかし、そのあとの虚しさも覚えている」
そういって拳を握りしめるアクレイ。
その話をルアンスは黙って聞いていたが、やおら、




