41 剣(イスパー)対戦斧槍(レフルトー)
全身に鎧をまとったルアンスに対して効果が薄い斬撃ではなく、隙間がある関節部めがけ、突きで攻めるアクレイ。
一方長大な槍を振り回すには懐に飛び込まれ過ぎたルアンスは、アクレイが連続で突き出す剣を戦斧槍の柄で受けるばかりで手をこまねいていた。
彼が反撃に転じるには間合いを取る必要がある。だが、退けばアクレイはそこに容赦なく踏み込んでくる。
「ほう、やるな。あれなら戦斧槍の強みは生かせない」
「しかし、危うい戦い方です」
傍らで見守っていたアルザーとビアトロは冷静に双方を分析していた。
「だが、間合いに差がある武器で相手を押さえるにはああするしかない」
そういうとアルザーはふと、辺りを見渡す。観戦している冒険者達の反応はまっぷたつに別れていた。
見たところビアトロ達らが知っている顔の冒険者達はアクレイに向かって声援を送っているが、あまり顔を見ない冒険者達は彼の戦いを見てあっけにとられている。
しばしの後、攻めきれなかったアクレイは後ろに飛び、再び二人は距離をとって対峙する。
だが、息を乱さぬまま呼吸を整え、再び構えを取るアクレイに対し、戦斧槍を支えに立つルアンスは肩で息をしており、心身の消耗は明らかだった。
再び踏み込むアクレイ。
すんでで体勢を戻したルアンスはそんなアクレイめがけて槍を繰り出す。
アクレイはその穂先を再び寸前でかわしながら手にした剣を合間に差し込むと左腕の鉄甲で剣ごと戦斧槍の穂先を叩き、弾く!
それによってわずかに崩れるルアンスの体勢。
そこにアクレイは踏み込んだ足を軸に身を翻し、ルアンスから見て左側から横薙ぎの斬撃を繰り出す!
響き渡る鈍い衝撃音。
アルンスはアクレイの剣をすんでで槍から離した左手の鉄甲で受け止めていた。が、
アクレイは左肩を突き出して地を蹴り、ルアンスに体当たりを食らわせる!
ルアンスは不安定な体勢のままそれを受け、たたらを踏んで態勢が崩れると、背中から倒れこむ。
「うっ、くっ」
倒れ込んだアルンスは身を起こそうとするが、それよりも早く、アクレイの剣がルアンスの眼前に突きつけられる。




