37 盗賊(ラバン)と鍵師(キャト・ルティジャ)
そう名乗った女性、リュレルの言い放った単語にアルザーが顔を上げる。
「ほう、鍵士とはな」
「キャト・ルティジャ?」
首を傾げるアクレイにアルザーが答える。
「鍵や罠の仕掛けを解除できる技能を持つ者達の事だ」
「要は盗賊か」
「盗賊ですって!」
アルザーの説明にうなずき、とっさに口にした単語にアクレイに突然リュレルが席をたっていきりたつ。
「うっ」
その剣幕にたじろぐアクレイにアルザーがいささか意地の悪い笑みを浮かべながら告げる。
「いい忘れていたが鍵士という名称は盗賊結社のやつらと区別するためのものでな、彼らを盗賊呼ばわりすると大抵こうなる」
「ふん」
「そ、そうか。それはすまない」
アルザーの説明に納得したか、アクレイはそっぽを向いたリュレルに対して頭を下げると、彼女は、
「わかればいいのよ」
少しだけ表情を和らげアクレイの方を見る。
どうやら彼女にとってはいつもの事のようである。
続いてビアトロたちも自己紹介をし、その後彼ら六人は卓を囲んで席につく。
周囲の喧騒にも脇目も振らず説明を受けるルアンス達。
「なるほど、事情は分かった」
「で、報酬はどうなの?」
ビアトロたちから説明を受けたルアンスはうなずくが、代わりにリュレルが口を挟んでくる。
「無事に助け出せれば払う」
簡潔なアルザーの言葉にリュレルは腕を組み、眼差しを鋭くして問いただす。
「払うってだれが?獣皮紙にはかなりの額が書かれていたけど、その子達に払える額なの?」
「それは我々が保証する」
近くの席でビアトロ達のやり取りを聞いていたクナンが口を挟むと、リュレルは一応は納得したのか、
「……分かったわ。話を続けて」
腕を組んだまま話の続きを促す。
「目的は竜に対する生贄にされた娘を助けることなのだな?」




