36 挑戦者
「来たな」
「お主らか、竜に挑むというのは」
ルーメ・ラースの地下酒場でクナンとともにビアトロ達を待っていたのは三人の冒険者だった。
一人は金属の鎧で全身を包み、近くの壁に長柄の戦斧槍を立てかけ、手には無骨な兜を持ついかつい顔の男性。
一人は腰に矢筒を下げ、左右非対称な革鎧をまとうという狩人か弓兵かという出で立ちの柔和な細面の男性。
三人目は肩と胴を覆う革鎧を纏い、腰にいくつもの袋を下げている鋭い眼差しの女性。
金属鎧に身を包んだ男のその問いかけにビアトロは首を振ると、近くの卓に一同を促す。
卓を囲み、席についた彼らは話を始める。
「間違いではありませんが誤解もあります、わたしたちは別に竜と戦うことや倒すことは目的ではありませんので」
ビアトロの言葉に兜を卓においた戦士が問いただす。
「それは承知している。だが戦うのかも知れないのだろう?」
「やけにこだわるな」
視線を厳しくしてアルザーが指摘すると、相手は口元に笑みを浮かべる。
「うむ。おっと、自己紹介がまだであったな」
そう言うと鎧の男は立ち上がり、甲冑をきしませながら名乗る。
「我が名はルアンス。ルアンス・ラシュナル。見ての通り戦士だ。この二人は私の連れだ」
そうルアンスが名乗ると残りの二人も自己紹介を始める。
「私はルコレ・ファチャといいます。普段は狩人をしています」
「獲物を仕留められない、ね」
ルコレの言葉に隣の女性が付け加えると、彼はやや沈んだ表情で答える。
「ええ、まあ」
「獲物を仕留められない?」
ビアトロの問いに女性は肩をすくめる。
「この人、そういうの駄目なのよ。自分の手で獲物の命を奪うことができないの」
「すみません」
「まあ、罠をしかけることや魔物は仕留めることはできるから、足手まといにはならないわ」
そう言って仲間、ルコレを一瞥すると女性はビアトロ達を見渡して注目を集めさせると、
「で、あたしはリュレル。鍵士をしているわ」




