22 困難な依頼
「その酒場の主はルーメ・ラースの支部員だろう。だからここの事も知っていた」
その言葉で理解したかアクレイがうなずくが、今度はエーブルが首を傾げる。
「ルーメ・ラース?の事はよく知りませんが、ここに来ればなんとかなるかも知れないって言われました」
「さっきの人たちは?」
「あの人たちとはその商人の人に引き合わされてこの町で出会いました」
「なるほど、彼らはただの行きずりか」
ビアトロの問いにエーブルが答えると、あさっての方向に視線をそらしアルザーがつぶやく。
「なんとかなるって何をですか?」
「……竜です」
ビアトロの問いに、エーブルはためらいながらも告げた言葉にアクレイとビアトロの表情が変わり、アルザーもあさっての方に向けていた視線をエーブルの方に向ける。
「お願いです!竜の生け贄にされた僕たちの姉を助けてください!」
その言葉は酒場全体の雰囲気を変え、ビアトロ達以上に聞き耳を立てていた周囲がざわつきだす。
「竜?」
「竜だって!?」
「そんなのがなんでこんなところに!?連中はルチェド・カスタニアの山奥に住んでいるんだろう!?」
「いや、待て、噂を聞いたことがある。最近この辺りの空を鳥とは違う何かが飛んでいるとか」
竜という単語に酒場にいた冒険者たちは色めき立ち、騒ぎ始める。
しかし、そんな撹拌された雰囲気の中でもビアトロとアルザーは淡々とエーブルたちから事情を聞き出していた。
「なるほど。村の近くの山に竜が住み着いた、そしてヌコリ村の住人はその竜に対して君たちのお姉さんを生け贄にしたと」
「はい」
ざわつく周囲をよそに、エーブルの話を聞いたビアトロが要約すると彼はうなずく。
「なぜ?」
「分かりません」
「ふむ」
「誰か教えてくれなかったのかい?」
「はい」
乏しい情報に思わず息を吐き、天井を見上げるビアトロ。しかし、
「お願いします」
真摯なエーブルの視線に彼は頭をかく。
突然投げつけられた課題に対して、与えられた情報はとぼしい。
どこから手を付けるべきか。
それに……




